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小高きシルシ




窓から二人で並んで 

見上げた小高きシルシ 


いつかいっしょに登ろうね 

うん 

気のない返事 

僕の頬をいたずらにつねる 





普遍的な彼女との日々を失った 





突然ピクニックと言って

早朝から

彼女の自慢のハムサンドと 

ロイヤルミルクティーを

バスケットにつめて 

僕をはやしたてる 



自転車に彼女を乗せて 

坂道をあくせくと 

額に汗して上った 



お疲れ様 

彼女が

ペットボトルを差し出した 


そよ風が心地よかった 


じゃあ 

ご褒美といって 

僕に膝枕 

ちょっと照れくさかったけど 

僕は素直に受け入れた 

彼女の香りが 僕をいざなう 



僕はしばらく眠っていたようだ 

目を覚ますと

変わらぬ彼女の笑顔があった 



ねぇ 

ここの鉄塔登ったことある 


首を横にふった 


コツンと額にゲンコツ 


ちゃんとこたえて 


ありませんって露骨に言った 


コツン さすがに僕は謝った ごめん ふたりで笑った 



風が一瞬強くなびいた時

彼女が言った 


あなたに連れてきてもらった

この丘を 

私は忘れない 忘れない 



あなたと永遠を誓う日 

今度はふたりで 

この鉄塔を登るの ねぇ 約束 

彼女が小指を差し出した 

僕は愛おしさで

彼女を抱きしめて 

彼女の唇に重ねた 






夏の終わり

日差しがやわらいでゆく 


いつものように

自転車で迎えにゆく 


彼女が大きく手をふるのをみて 


周りの目が僕は恥ずかしかった 


信号は赤 もう少し 


僕の前を大きくどんよりとした 


かたまりがさえぎった 


人々の声が僕を容赦なく

幾千もの針でつきさした 


僕の声よ 届いてくれ 

僕の手よ 届いてくれ 



僕は一切の感情を恨んだ 

空が落ちるまで

僕は泣き叫んだ 

残酷な轍を毟り取るように

何度も拳をたたきつけた 



彼女を

誰にも触れられたくなかった 

彼女を抱えた

行こうよ 僕たちの丘へ 


僕は 今誓うよ 

君といつまでも

いっしょだよ 









窓から二人で並んで 

見上げた小高きシルシ 




いつかいっしょに登ろうね 




白く 白い冬空 

まだ一度も登ったことがない 

小高きシルシを僕は見上げて 




彼女に聞こえるように


返事をした 









#君に還るまで
#恋愛詩

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