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社会派小説「バイデン大統領VS中核派」

米国のバイデン大統領は22日夕、大統領専用機「エアフォース・ワン」で米軍横田基地(東京都福生市など)に到着した。

革命的共産主義者同盟全国委員会、通称「中核派」ら過激派が日米首脳会談に対する抗議デモを開催した。

「フミオ、あのグループは何かね?」
「え? あれ。あれですか…ええっとですね」
首相の側近が耳打ちする。ごにょごにょ。
「あれはバイデン大統領の熱狂的ファンでして。歓迎のためのフェスティバルですな」

「ほう。WELCOMEというわけだね。しかしヘルメットをかぶるとは変わった趣向のフェスティバルじゃないか。日本の習慣は面白いな」
首相の側近が耳打ちする。ごにょごにょ。
「労働者のグループなんですよ」
「ほう! 労働者。日曜日なのに駆けつけてくれたのだね。ありがたいことだ」
「え、ええまあ。万国の労働者で非常にインターナショナルな連中でしてね」

「国際的なメンバーなのか。結構だ。ヘルメットに書いてある“ 中核派”とはどんな意味だね」
「え? あの、それは」
首相の側近が耳打ちする。ごにょごにょ。
「中国の核兵器を許さない、という意味でございます」

「素晴らしいじゃないか。フミオ、私は感激したよ。ぜひ彼らと交流したいものだが」
「ええええええ、それはなりません。危険ですから」
「危険? 私のファンだろう?」
首相の側近が耳打ちする。ごにょごにょ。

「彼らにも敵対団体がおりまして。巻き込まれることもございますので」
「なんてことだ。フミオ。彼らのような善良な市民に敵対団体があるのかい」
「え、ええ。おりまして。その」
「合衆国大統領としてもそれは捨ておけない。私は常に善良な市民に寄り添いたい」
「どうか大統領、お気になさらず。些細な話でございます」

「フミオ、遠慮しなくてもいい。おい、中核派というグループの敵対組織を直ちに調べてくれ」
バイデン大統領が秘書官に命じた。すると

「大統領、一大事です。彼らの“enemy ”が判明しましたが、これは…」
「どれ、見せたまえ、ん?」

「なんだこれは!」
秘書官が示した“enemy ”の関係資料にバイデン大統領が驚愕した。

「ロシア軍じゃないか。フミオ、日本にもロシア軍が侵攻していたのか?」
「いえいえいえいえいえいえ、違います。そのZとは全学連(ZENGAKUREN)の意味で、まあ学生の集まりなんです」

「学生? つまり学生に扮した工作員というわけだね」
「いえいえいえいえ。そうではありません」
「フミオ、正直に話してくれ。“ enemy ”の正体を」

首相の側近が耳打ちする。ごにょごにょ。
「大統領がおっしゃる“ enemy ”は日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派でございます」

「なんてことだ。共産主義者でマルクス主義の信奉者だと? つまり旧ソ連を復権しようというのか。これは放置できない。フミオ、申し訳ないがレセプションはキャンセルだ。ただちに帰国して安全保障会議を始めるとする」

「え、あの…」

日米首脳会談を打ち切って帰国したバイデン大統領。ある意味、「戦争会議粉砕デモ」は成功したのだった。


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