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社会的養護施設のICT化:記録システム導入で実現する業務効率化と支援の質向上
社会的養護施設では、児童情報、個別記録、支援計画書、業務日誌など、日々膨大な記録作業が求められています。しかし、これらが紙やExcelなどで分散管理されている現場では、効率の低下や情報漏洩リスクが課題となっていました。また、管理者(リーダー)が情報を一手に把握している場合、急な不在時に業務が滞ることも少なくありません。
私はこれらの課題を解決するために、社会的養護施設で記録システムを導入した経験があります。この取り組みは、福祉現場のICT化を進める重要な一歩となりました。本記事では、当時私が導入した記録システムの特徴とその効果についてご紹介します。
記録システムの特徴とメリット
1.情報の一元化で効率アップ
記録システムでは、児童情報、個別記録、支援計画書、業務日誌などを一元的に管理できます。これにより、必要な情報を迅速に検索でき、記録作業にかかる時間を大幅に削減しました。複数のファイルや紙資料を探す手間が省けたことで、職員が本来の支援業務に集中できる環境を整えることができました。
2.印刷機能で行政検査や会議にも対応
行政の実地検査やカンファレンスの際には、システム内の記録を簡単に印刷できるため、資料準備がスムーズに行えました。この機能により、資料作成の負担が軽減され、対応スピードが向上しました。
3.緊急時の対応力向上
情報がシステム内で一元化されているため、施設長が感染症などで急遽勤務できなくなった場合でも、他の職員が情報をもとに業務を引き継ぐことが可能です。この仕組みにより、施設全体で柔軟な対応が可能となり、利用者への支援が途切れる心配がなくなりました。
4.スーパーバイズ機能の搭載
記録システムには、支援方法に関するスーパーバイズ機能も搭載しました。この機能は、主に管理職(リーダー)が活用し、現場で解決が難しい課題に対して的確なアドバイスを提供する仕組みです。また、スーパーバイズの内容がシステム上に蓄積され、職員全員が参照可能となることで、支援の質が向上するとともに、現場職員のスキルアップにもつながりました。
5.業務用スマートフォンでの操作が可能
記録システムは業務用スマートフォンからも操作可能で、現場での記録入力や情報確認がより簡単になりました。これにより、職員の負担軽減と時間の有効活用を実現しました。
導入後の効果
1.支援の質向上
記録の一元化により、過去の支援データやスーパーバイズの情報を活用できるようになり、利用者一人ひとりに合わせた個別性の高い支援が可能になりました。
2.チーム連携の強化
職員全員が最新の情報を共有できるため、支援方針を統一しやすくなり、現場の連携が強化されました。また、スーパーバイズ機能を活用することで、報告・連絡・相談(報連相)がさらに深まりました。
3.リスク管理の強化
情報漏洩リスクを最小限に抑えるとともに、緊急時の引き継ぎや意思決定が迅速に行える体制を整えました。
4.業務効率化
これまで分散していた記録が集約されたことで、時間のロスを大幅に削減。その結果、利用者への支援に割ける時間を増やすことが可能となりました。
社会的養護施設におけるICT化の重要性
記録システムの導入は、社会的養護施設における課題を解決するだけでなく、支援の質をより高めるための重要な基盤となりました。この経験を通じて、ICT化が現場にもたらす大きな可能性を実感しました。日々の業務が効率化されることで、職員がより利用者支援に専念できる環境が整うことを願っています。