見出し画像

被措置児童等虐待防止・再発対策を徹底的に深掘り

前回の記事「被措置児童等に対する虐待防止とその重要性」では、児童虐待防止の基礎について解説しました。

今回は、私(小林努)が全国28の自立援助ホームをマネジメントしてきた経験を基に、具体的な対策について深掘りし、解説いたします。

1.職員教育・研修の充実と交換派遣研修の導入

実践的な研修プログラム: 虐待防止のためには、理論的な研修だけでなく、具体的なケーススタディを用いた実践的な研修が不可欠です。
過去の虐待事例を元にシミュレーションを行い、対応策をグループスーパービジョン(GSV)形式で学ぶことで、職員の即応力を高め、虐待の兆候を早期に察知する力を養います。

他施設への交換派遣研修: 自施設だけでなく、他の施設での研修も重要です。交換派遣研修制度を導入することで、職員は他施設の運営方法や支援の多様な視点を学び、柔軟な支援体制を築くことができます。
また、職員の成長と施設間のネットワーク強化にもつながります。

メンター制度: 経験豊富な職員が新人をサポートするメンター制度の導入も効果的です。
日々のコミュニケーションを通じて、新人職員の成長を促し、支援の質を向上させることができます。

2.内部通報制度の強化と信頼性の向上

匿名通報制度: 虐待や問題行動を安全に報告できる匿名通報制度は、現場での不正やトラブルを未然に防ぐために重要です。通報者が不利益を被らないよう、信頼できる仕組みを整備し、問題の早期発見と迅速な対応を図ります。

外部監査機関との連携: 外部の第三者機関と定期的に連携し、監査やヒアリングを行うことで、内部監査では見えにくい問題点を洗い出し、透明性の高い対応を行います。

3.見守りと安心感の提供

見守り体制の充実: 虐待防止には、監視システムを使わずに職員が「見守り」を通じて子どもたちと日常的に接し、信頼関係を築くことが重要です。常にそばにいて、子どもたちに安心感を提供する姿勢が、健全な支援の基盤となります。

職員への見守り: 職員もまた、管理職からの見守りを通じて安心感を得ることができます。管理職が職員のサポート役として機能することで、職員が心理的に安心でき、働きやすい環境が整います。

職員間の連携強化: 見守り体制を支えるには、職員同士の連携も欠かせません。チーム全体で子どもたちの状況や業務を共有し、引き継ぎがスムーズに行えるようにすることで、支援の質を維持します。

4.アドボカシーの導入

アドボカシーは、子どもたちが自分の権利や意思を守り、主張できる環境を整えるための取り組みです。施設内では、職員が子どもたちの声を聞き、その意見を支援計画や日常生活に反映させることで、子どもたちの権利を尊重するアドボカシーの精神を推進します。

5.心理的ケアとサポート体制の強化

トラウマインフォームドケアの導入: 虐待を経験した子どもたちへの支援には、トラウマインフォームドケア(TIC)が有効です。これは、トラウマが子どもたちの行動や感情に与える影響を理解した上で支援を行う方法です。職員がこの手法を学び、子どもたちの日常的なサポートに取り入れることが重要です。

職員のメンタルヘルスケア: 職員自身のメンタルヘルスも非常に重要です。職員が虐待対応によるストレスを軽減できるよう、外部のカウンセリングや職員同士で支え合えるリフレクションの場を設けます。

6.組織全体での再発防止の文化づくり

再発防止チームの設立: 組織内に再発防止チームを設け、職員一人ひとりが主体的に問題提起や改善策を提案できる環境を整えます。小さな問題や兆候を迅速にキャッチし、日々の支援改善に役立てるチームが、虐待防止に大きく貢献します。

評価システムの導入: 職員の支援活動や貢献度を適切に評価するシステムを導入し、現場の声を反映させた柔軟な改善策を講じます。これにより、職員のモチベーションを向上させると同時に、透明性のある組織運営を実現します。

まとめ

虐待防止と再発防止のためには、組織全体で包括的な取り組みを行うことが重要です。私の経験を基にした対策を導入することで、子どもたちの安全と成長を最優先に考えた環境を提供できます。職員、子どもたち双方が安心して過ごせる現場づくりを目指し、継続的に改善に努めてまいります。



参考リンク

前々回の被措置児童虐待の投稿です。

私の経歴紹介です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?