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【洋楽雑考# 20】〜 Fuzzを踏んだら不良になった〜The Rolling Stones

皆元気? 洋楽聴いてる? 

さて、6月初旬まで開催されている「Exhibitionisim - The Rolling Stones展」に足を運ばれた方はいるだろうか?

衣装、楽器、アートワークから3Dライヴ体験までできるという非常に大掛かりなもの。

彼らのような非常に長い歴史を持つバンドだからこそ、

こうしたイヴェントが実現したのだが、これらの膨大なアイテムを保存していた関係者もスゴい。

で、今回のお題は「R&Rと書いてStonesと読む」のThe Rolling Stones !!


「The Rolling Stones」アルバムでデビューしたのが1964年...今年で55周年。

今回はキース・リチャーズのクレジットがRichards (本名)に変わった1978年の「Some Girls」以降の彼らにスポットを当ててみたい。

本作から元Facesのロン・ウッドがフルにレコーディングに参加。

前作の「Black and Blue」(1976年)からバンドに加入こそしていたが、同作では8曲中5曲という変則的な参加(しかもギターは2曲しか弾いていない)だった。

1978年というと、世はパンク/ディスコ・ムーヴメント真っ盛り。

特にSex Pistolsら血気盛んなパンクスは、恐れ多くもStonesを「時代遅れ」と徹底的に批判した。

しかし、Stonesが存在しなければ、その後のロックは確実にその姿を変えていた、言い換えれば直接的ではないにせよ、

彼らからの影響はパンク・ロックといえど確実にあったはずなのにねぇ。"受けて立とうじゃないか"という思いが特に強かったのがミック・ジャガーであり、バンドはモロにディスコ路線の楽曲「Miss You」を発表する。

あっという間にBillboardシングル・チャートのトップに。

それを受けてアルバムも1位を獲得、結果的にバンドの歴史上最大のヒット・アルバム(600万枚)となった。

1980年代を迎え、バンドは「Emotional Rescue」を発表。

Billboardアルバム・チャートでは7週連続1位を記録、批判的な声は、あのロゴ・マークの底無しの口の中へと吸い込まれることに。

「Miss You」から「Emotional Rescue」辺りがオレ個人のStones原体験なのだが、"R&Rバンドの親玉"という評価と、

当時のバンドが積極的に取り入れていた新しい音楽要素のギャップに少々戸惑った記憶が..."Aerosmithとぜんぜん違う..."みたいな。

その長い活動期間でチャート、セールス的にいわゆる低迷期を経験したことがないバンドだけに、その存在を脅かすのは、やはり人間関係。

この頃からジャガー、リチャーズの仲は加速度的に悪化する。

実際、1981年リリースの「Tattoo You」は2人のせいでレコーディングが全然軌道に乗らず、

過去の音源にオーヴァー・ダビングを施して制作するという変則的なアルバムだ。

現在でもライヴの定番であり、ギターのイントロだけでオーディエンスが狂喜する「Start Me Up」でさえ、

「Black & Blue」のボツ曲だったとは驚き。

80年代を代表する楽曲がアーカイヴから掘り起こされたことはある意味、

幸運だったとも言えるのだが。

その後の2作品「Undercover」(1983年)、「Dirty Works」(1986年)の時期が泥沼だったようで、

1985年に開催された「Live Aid」では、ジャガー、リチャーズが別々に出演するという暴挙に出ている。

また、長年バンドのロード・マネージャーを務めていたイアン・スチュワートが急死。

「この時期はつらかった」とウッドが語るように、正にバンドにとっての暗黒時代に。

その後の「Steel Wheels」でジャガー/リチャーズの関係に改善の兆しが見えてきたようだが、

このアルバムを最後にドラムのチャーリー・ワッツとともに黙々とビートを刻んできたベースのビル・ワイマンが脱退することになる。

ここでチャーリーまで一緒に脱退していたらとか考えるとゾッとするわな。その後バンドは1994年に「Voodoo Lounge」、

97年に「Bridges to Babylon」を発表。

メンバーの年齢を考えれば1990年代、10年で2作のリリースは誇るべきものだろう。

後者に伴うワールド・ツアーでは、バンド初となった東欧でのスケジュールが組まれている。

1970年代だったら、絶対に実現しないはず。

しかし、ここに来てまだ"初体験"が残ってたのね。

2005年にリリースされた「A Bigger Bang」は、いく度目かの上昇気流に乗ったバンドの底力を存分に示す力作となった。

事実、"70年代の作品に並ぶ傑作"と褒めちぎるメディアもいたほど。

とはいえ、基本作業はリチャーズ/ジャガーの2人の手によるものであり(ジャガー邸に合宿!)、そこにワッツがドラムスで参加。

ウッドに関しては、収録曲16曲のうち10曲参加に過ぎない。

ジャガーがベースを録音した初めての作品ともなった。

リチャーズ/ジャガーの産み出す強烈なケミストリーこそがこのバンドの機動力、Stonesという巨石を動かす力であることを実証した。

そして、その後11年の歳月を経て発表された、

現在までの最新スタジオ作にあたる「Blue & Lonesome」(2016年)で彼らが提示したものに再び世界は驚嘆する。

制作期間わずか3日。

しかも、キャリア初のカヴァー・アルバム。

まさかのルーツ・ミュージック、ブルースへの先祖返り。

もしかして、若返り始めたか?

こうなると、次作アルバムへの期待も嫌が応にも高まろうと言うもの。

突然のニュースでファンを心配させたジャガーの心臓手術の経過も良好のようだし、まだまだガンバれるよね?
というワケで、主にロン・ウッド加入以降のStonesの歴史を簡単に振り返ってみたのだが、

ウッド以前の2人のギター・プレイヤー、R&Rの負の側面を体現するかのように若くして亡くなったブライアン・ジョーンズ、

テクニカルなプレイで70年代のバンド黄金期を支えたミック・テイラー、2人に対するリスペクトの念をいまだにバンドが感じているというのは素晴らしい。

脱退時には相当揉めていたジョーンズでさえ、「Steel Wheels」ツアーは、イアン・スチュワートと並んで彼に捧げられたものだったようだし、

テイラーに至っては1989年のR&R Hall of Fame、殿堂入りの際にメンバーの1人としてステージに上がっている。

「Satisfaction」でぐにゃっと歪んだギターのトーンを得た瞬間、これぞ彼らの"R&R不良道"への入り口だったと思うんだけど、

同時にThe Beatlesにも作り出せないオリジナリティの誕生だったとも言える。

バンド名の由来とも言われる"A Rolling Stone Gathers No Moss"(転石苔むさず)、

このことわざが英米で真逆の解釈をされていることをご存知だろうか?

アメリカ風の意味に置き換えると、"時流に合わせた柔軟さこそ成功の元"。

そして、彼らの出身地、 英国文化圏での意味はというと..."トレンドを意識して、軽々しく行動するものは成功しない"。

バンド名こそ、バンドへの最大の教訓でしたか。

では、また次回に!

▼最新ベスト・アルバム『HONK』

2019.04.19 発売

※本コラムは、2019年5月17日の記事を転載しております。

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▼フジパシフィックミュージックでも連載中▼

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