2/13 ニュースなスペイン語 Indulto:恩赦
ややこしいことになってきた。
一応、小欄の構成上、「indulto」にも「恩赦」という訳を付けておくが……。
2017年10月1日にカタルーニャ州で実施された「違法な住民投票(referéndum ilegal)」に関与した人物らを無罪放免にする「恩赦法(ley de amnistía)」に対して、国民党(PP)は断固反対という立場を貫いてきた。
そして、ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)現首相が、自らの就任(investidura)に必要な票を取り付けるために、カタルーニャ独立派に対して、リーダーらの恩赦をちらつかせたことを、国民党は猛烈に批判してきた。
恩赦に対してかくも頑なに潔癖だった国民党がどうしたのか……。
同党党首のアルベルト・ヌニェス・フェイホ(Alberto Núñez Feijóo)が、来週に控えたガリシア州総選挙のキャンペーンで、カルラス・プッチダモン(Carles Puigdemont)をはじめとする、違法な住民投票に関与した人物らに対して、「条件付きの恩赦(indulto condicionado)」を検討する用意がある(estaría dispuesto)と表明したのである。
Indultoにも、amnistíaと同様、辞書的な意味として、「恩赦」がある。
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サンチェスが主張する恩赦(amnistía)は許さないけど、どういう風の吹き回しで、国民党は、恩赦(indulto)の検討し始めるのか。
実は、専門的には、amnistíaとindultoは大きく違う「恩赦」らしい。
フェイホの表明に面食らった人らがいたのだろう、いろんなサイトで、amnistíaとindultoの違いが説明されている。
中でも、法律ド素人の小生の腑に落ちたのが、Cadena SERの説明だ。
ある人を「Indulto」するというのは、あなたは悪いことをして、罪を犯しましたが、政府が許しましょう、と言うのに等しい。つまり、裁判官が下した判決に目をつぶることを意味する(Indultar a alguien es como decirle: 'lo hiciste mal, cometiste un delito pero yo -Gobierno- te perdono la pena que el juez te haya impuesto)
これが国民党の主張する恩赦(indulto)だ。
日本語ではこの種の恩赦を「個別恩赦」と言うらしい。
その名が示す通り、indultoは個人・個別(individual)に行われる。
indultoは判決の効力を無効化することだから、犯罪を冒したこと自体が無くなるわけではない。
このindultoに似た恩赦を日本では「特赦」と呼ぶらしい(よく分からないが、多分、まったく同じではないみたい)。
一方、サンチェスや社会労働党(PSOE)がカタルーニャ独立派に対してちらつかせている恩赦(amnistía)は、
あなたの前科から特定の犯罪そのものを消し去ること(La amnistía, en cambio, borra todo rastro de los delitos amnistiados de tus antecedentes)
を意味する。言い換えれば、犯罪事実について、あたかも何も起こっていなかったかのような(es como si no hubieran sucedido)扱いをするのが、サンチェスらが主張する恩赦だ。
だから、amnistíaが適用されれば、法律上は、不法な住民投票って何?そんなことありましたっけ?となる。
こちらは、日本で「政令恩赦」と呼ばれていて、先の個別恩赦と違い、政府が恩赦とする罪を決め、その罪を冒した者たちに対して、集団的(colectivo)に行われるのが特徴。
Amnistíaとほぼ同じ恩赦を日本では「大赦」とも呼ばれている。
国民党と歩調を合わせてきたボックス(Vox)の党首サンティアゴ・アバスカル(Santiago Abascal)は、フェイホが条件付き恩赦の可能性をチラつかせたことを「とんでもない政治詐欺(gigantesca estafa política)」と批判している。
フェイホのindulto発言の波紋は、当分、広がりそう。
写真はフェイホ。