8/15 ニュースなスペイン語 Utopía:ユートピア
ユートピアはトマス・モア(Thomas More)の著作『ユートピア(Utopia(1516年初版))』の中に出てきた、架空の島(isla imaginaria)にある国家の名称。
日本語では「ユートピア」というカタカナ語の他、「理想郷」という訳がある。
Utopíaは、ギリシア語の「無・否定」を表す「u-」と「場所」を表す「topo」、そして、ラテン語の「性質」を表す「-ía」が合わさった造語。
そんな語源に忠実な「無何有郷(ムカウキョウ)」という訳語もひねりだされた(が、小生の知る限り、そんなに、定着はしてない)。
こうしたいきさつから、スペイン語では「utopía」は「実現が極めて難しい、理想上の予定、計画、教義、システム(Plan, proyecto, doctrina o sistema ideales que parecen de muy difícil realización)」を表すようになる。
さて、今回の記事にはこんなタイトルが踊る。
旅行すること、それは3割のスペイン人にとってはユートピア(Viajar, una utopía para un tercio de la población española)
国家統計局(Instituto Nacional de Estadística)がこの度まとめた「生活状況調査(Encuesta de Condiciones de Vida)」によると、2022年度はスペイン国民の約33.5%にあたる人々が、1年の間、7日の外出すらもできない(al menos siete días al año)という。
2021年度と比べて、0.8%高くなった(un porcentaje 0,8 puntos superior al registrado en 2021)。
外出できないのは「経済的理由(por razones económicas)」による。
記事には15年間、旅行をしたことがない(sin irse de viaje)という夫婦の話も載っていた。
その他にも、月給1200ユーロ(約16万8000円)の男性の話も載っている。
この男性には4歳と5歳の子供がいるが、妻が働くと、子供の「学校へのお向かいや面倒を見てもらうための支出をしなければならなくなるため(tendríamos que pagarle a alguien para que nos lo recogieran del colegio o para que los cuidara)」、妻は働けない状況。
私には全く貯金がありません。その日暮らしですよ(Yo no tengo ahorro ninguno, yo vivo al día)
この男性はこんな風に話す。
ちょっとした単発の避暑がてら(alguna escapada aislada)山に行くことはあるが、大半は「日が暮れるのを待って、ちょっと外に出かけるくらいですかね(se ponga el sol para ir a la calle un rato)」と語る。
また、6月、7月、8月のハイシーズン(temporada alta)の3ヶ月間、休む暇もなく(sin descanso)、1日最低12時間、小さな村のレストランで働いていた女性の話も載っている。
夏に稼いだ資金は、家賃(alquiler)、公共料金(factura)や学費、その他、服を買ったり、週末出かけたりのちょっした贅沢(pequeño capricho)のために使われる。
とても旅行する余裕などない。
今月の始めあたりの記事に、先月の失業者が1万968人にとどまり(se redujo)、国内全体では267万7874人となり、2008年の夏以来、最も少ない数字になったとあった。
数字だけを見ていると、まぁ、喜ばしい傾向なのだが……。
実際は働けてはいるが、旅行もできない人が少なからずいるというのが、現実だ。
写真はモアの考えるユートピア(一部)。全体像は次のとおり。
ちなみに、著者のトマス・モアはスペイン語では「Tomás Moro(トマス・モロ)」になる。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20230812/viajar-utopia-para-tercio-poblacion/2453266.shtml