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9/22 ニュースなスペイン語 Apellido paterno:父方の苗字
マリオ・フェルナンデス・ゴンサレス(Mario Ferández González)という男性がいると仮定すると、マリオが洗礼名、フェルナンデスが父方の苗字、ゴンサレスが母親の苗字、というのが、スペイン語圏の名前と苗字の伝統。
そして、このマリオが、イサベル・マルティネス・ロドリゲス(Isabel Martínez Rodríguez)という女性と結婚し、もしも、男の子が生まれ、その子に、フアンという名を付けたなら、その子は、フアン・フェルナンデス・マルティネスと、伝統的には、名乗ることになる。
つまり、スペイン語圏の伝統では、
① 父方の苗字が母方の苗字(apellido materno)より前に置かれる
② 父方の苗字が引き継がれる
という不文律がある。
しかし、①に関して、スペインでは、今から5年前に法改正され、夫婦は合意のもと、子の苗字の順番を選べる(pueden elegir)ことになった。
にもかかわらず、この5年間の間に産まれた新生児(recién nacidos)の中で、わずか0.5%しか母方の苗字が父方の苗字に先行していない――。こんな調査結果が明らかになった。
法が認めていても、伝統を壊すことは難しい(Cuesta romper la tradición aunque la ley lo facilite)――。スペイン国営放送(RTVE)の見解だ。
とは言え、①の伝統を変えようとする人たちの話は示唆に富む。
まず、母親である私が、娘が産まれる前に、苗字の順番を変えました(Yo misma me cambié el orden de los apellidos antes de que naciera mi hija)。
ある女性はこんな風に語る。そして、次のように続ける。
この子の父親の苗字が無いから、父親の存在が生涯なくなってしまうなんていう人がいますけど、全然、逆で、この子の父親は、この決定を幸せに思ってるんですよ。私がそうしたようにね(Hay gente que piensa que su padre no está en sus vidas a lo mejor porque no se apellida como ellas y no, no, su padre es feliz con esta decisión como lo soy yo)。
なぜ、①のような習慣が定着したのか。これは、②と共に、父権制の習慣(costumbre patriarcal)によるところが大きい。
父権制は主に、財産権に関するものなので、父親の苗字が引き継がれるのは、財産権に係る書類などで、父親とのつながりを証明する手立てになっていたからだろう。
ある夫婦は次のように話す。
結局、妊娠し、出産し、授乳することで負担を強いられるのは女性(Al final las mujeres son las que cargan con el embarazo, con el parto, con la lactancia en muchos casos)
だから、その苦労に報いるということなのだろうか、この夫婦の子供も母方の苗字を父方に先行させた。そして、次のように話す。
小さな動きかもしれませんが、私たちの子供たちが、(苗字の順番が)社会の慣習によって押し付けられたものでは無いことを知るのは大切なこと(Es un gesto pequeño, pero al final es importante que nuestros hijos, vean que no es una imposición social)
国が違えば苗字に対する想いは変わるし、同じ国内でもいろいろな考え方がある。各家庭、各夫婦で決めたことなら、他人がとやかく言うことではない。
写真は父方の苗字を必要としないシングルマザーとその子供のイメージ。
ちなみに冒頭のマリオとイサベルの苗字(フェルナンデス、ゴンサレス、マルティネス、ロドリゲス)は全て男子の名前(フェルナンド(Fernando)、ゴンサロ(Gonzalo)、マルティン(Martín)、ロドリゴ(Rodrigo))が元になったもの。全てに共通する「-ez」は「〜の息子」という意味。
英語圏のデビッドソン(Davidson)はデビッドの息子、マクドナルド(MacDonald)はドナルドの息子、という意味。表現は違うが発想は同じ。
これなんかは、もぅ、父権制の好例。しかし、この種の苗字は多いので、父権制の壁は厚く、深く根ざしてる。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20220921/solo-05-recien-nacidos-llevan-primero-apellido-madre/2403020.shtml