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1/16 ニュースなスペイン語 Ley Begoña:ベゴーニャ法

昨日の続き。

国民党(PP)党首アルベルト・ヌニェス・フェイホ(Alberto Núñez Feijóo)が、極右政党ボックス(Vox)からの支持(apoyo)を得て、ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)政権に対して、不信任決議(moción de censura)を提出するかもしれない――。

昨日はこんな政変の兆しを紹介したが、このフェイホの決断の裏には、タイトルにもあげた、通称「ベゴーニャ法」の成立を是が非でも止めたいという政治信念が見える。

今回参照した記事は、いつもの国営放送(RTVE)とは違って、やや過激な論調のメディアのものだが、これによると、ベゴーニャ法とは、裁判官と起訴を試みる国民を黙らせるため(para amordazar a los jueces y las acusaciones populares)の法案(proposición de ley)とある。

ちなみに「黙らせる」と訳した「amordazar」は「猿ぐつわ(mordaza)」から派生した動詞で、自由な発言を制限する際によく用いられる。

スペイン国民は国家組織などの不正を起訴する権利(acusació popular)を憲法などで保証されているが、政府が推し進めているのが、こうした国民の口を封じようとする法律のようだ。

そして、記事は、この法案の目的は明確(claro)で、サンチェスの妻ベゴーニャ・ゴメス(Begoña Gómez)と弟ダビ・サンチェス(David)を刑事告訴から(de sus imputaciones delictivas)救うため(salvar)と説明する。 

首相の妻ベゴーニャについては、2024年7月30日や31日の小欄でも取り上げたが、「コルド案件(el caso Koldo)」への関与が疑われている。

一方、弟ダビについては、まだ、小欄では取り上げたことはないが、「サンチェス、弟、不正な契約、バダホス(Sánchez, hermano, contratación irregular, Badajoz)」などと検索すると、いくつかの疑惑が出てくるので、機会を改めて、取り上げよう。

ベゴーニャ法が議論され始めたタイミングを見ると、本法が首相の身内をかばうために立案されたと邪推されたり、メディアなどがこの法案に首相の妻の名前を付けて皮肉るのも、まぁ、無理もない。

首相自身、野党やメディア、また、市民団体からのネガティブキャンペーンやガセネタなどに散々苦しめられてきた経験があり、しばらくメディアから姿を消し、引きこもった時期もあった(2024年4月25日の小欄)。

だから、サンチェスは、裁判ハラスメント(acoso judicial)などという表現までひねり出し、自らと大臣らの不正を見つけ出し、告訴を虎視眈々と狙う国民の口に合法的に猿ぐつわでもはめたやりたいと思っている(のではないか、多分)。

政治を裁判ハラスメントから守るという大義のもと、願わくば、妻と弟も救えないか――。

そんなサンチェスのヨコシマな意図が垣間見える。

果たして、ベゴーニャ法は成立するのか、そして、内閣不信任決議の行方は。

新年が始まって、まだ、2週間ほどしか経っていないが、早くも、政界には大きな山場が現れた。

写真はベゴーニャ・ゴメス(左)とその夫である首相ペドロ・サンチェス。

出典
https://okdiario.com/espana/psoe-quiere-que-mordaza-judicial-aplique-ya-casos-begona-gomez-hermano-sanchez-14096133