10/18 ニュースなスペイン語 En patera:小型船にて
「Patera」は「cayuco」と並んで、ある特定の文脈で使われる、「小型の船」を表す語である。「船」と言っても、粗末なエンジンが付いているだけで、雨風がしのげる屋根が付いているわけではない。
ここ数日、「○○名の移民が小型船で××の港に到着(……migrantes llega en patera a……)」という見出しが増えてきた。スペインでは、定期的に移民の波が押し寄せる。
スペインのバレアレス諸島州、カナリアス諸島州、バレンシア州、アンダルシア州、ムルシア州などの、イベリア半島の南の、しかも海に面している自治州に、この週末だけで、少なくとも30数隻の小型船で、500名を超える移民が到着した。
単純計算で、1隻あたり10〜16人くらいが乗っていた計算だ。大海の荒波をかいくぐって、命からがらたどり着いた。
イベリア半島に運良くたどり着いた人たちの多くは成人男性だが、何人かの未成年(menores de edad)、3名の妊娠中の女性(mujeres embarazadas)もいたという。そして、小型船内には1体の遺体(un cuerpo)もあったらしい。
「運良く」と書いたのも、先週の木曜日に、トラファルガー湾(Trafalgar)沖で、28名が乗った小型船が遭難(naufragio)し、全員が行方不明となっているためだ。昨日の日曜日の捜索(búsqueda)では、10体の遺体が回収されたという。
移民の多くはアルジェリア(argelinos)やモロッコ(marroquíes)といったアフリカ大陸から来た人々だ。
妊婦らは病院に搬送されたらしいが、その後の彼ら移民の処遇はまだ、明らかになっていない。
これまでの流れから察するに、移民として受け入れられたとしても、イベリア半島の地を踏めるのはごく少数(例えば、親戚・知人がいるようなケース)で、多くは、カナリアス諸島のどこかの島の施設に収容されるのだろう。雨風がしのげて、「食」にもあずかれるが、移民の多くが望む「ショク」は「職」だ。
スペイン人たちの間には、ーもちろん全国民にではないだろうがー、移民に対して、いろいろな思いがある。
移民たちが、真っ当な仕事に就くのは困難だ。だから、真っ当でないことに手を染める。だから、スペイン人たちの間には移民=危険という偏見か根付き、それが移民たちの就職を妨げる。あとは、負のスパイラルだ。
今はスペインを夢見ながら大海に散っていった人たちの冥福を祈るしかない。アーメン。
写真は移民たちの「小型船」。2017年くらいに撮影されたもの。目視できるだけでも30〜40人ちかい人が乗っている。