7/13 ニュースなスペイン語 Debate del estado de la nación:国会論戦
国民国家の議論――。直訳するとこうなるか。日本では、「国会論戦」とか、さらに言うと、「首相による施政方針演説とこれに対する各党代表からの質問」に近い。
スペインの国会論戦は、原則、年1回、下院(Congreso de los Diputados)で行われるのだが、何だかかんだあって、2015年以来、7年振りに開催された。
国会論戦が12日から始まった。
ペドロ・サンチェス首相(Pedro Sánchez)にとっては、従って、初の論戦デビュー戦となった。
施政方針に対する各党の反応もなかなか面白いのだが、今回はとりあえず、サンチェス首相が打ち出した、主な施策(medidas)を見ておこう。
①公共交通機関の無料回数券(Abonos de transportes bonificados al 100%)
これまでは半額だったスペイン国内鉄道(RENFE)が、9月1日〜12月31日までの間、無料(gratuito)となる。
◇忘れないうちにコメントもしておこう。ここで言う「交通機関」にはバス(autobús)などは入らないのか……。
②エネルギー部門に対する課税(impuesto sobre los grandes grupos energéticos)
電気、ガス、石油などの、莫大な利益(beneficio extraordinario)を挙げた企業に課税。2023年と24年の限定課税で約40億ユーロ(約5500億円)の税収(recaudar)を見込んでいる。
③金融部門に対する課税(grandes empresas financieras)
こちらの税収は約30億ユーロ(約4120億円)の見込み。
◇政府は①をはじめ、以下の④と⑤のように、これから出費がかさむ。だから、②と③のように、取れるところから、ぶん取る感じ。
④電力自給(independencia energética;autoconsumo〜)促進のための措置
2億ユーロ(約275億円)を計上し、教育機関から医療機関などの公的施設(edificio público)で電力を自給できるような設備を整備する。
⑤太陽パネル(placa solar)などに補助金
太陽パネルの他、ヒートポンプ(bomba de calor)や電気自動車(vehículo eléctrico) などの促進のために10億ユーロ(約1370億円)を計上する。
◇ ④と⑤は、今後、ますます、エネルギー危機が現実味を帯びてゆく中で、合理的な政策だろう。先行投資としては、莫大な額だが、長い目で見れば、回収できるかもしれない。また、例のSDGsにも沿う方針とも言える。
⑥奨学金上乗せ(becas más altas)
16歳以上で、現在、奨学金を受けている学生は、今年の9月から12月までの間、100ユーロ(約1万3700円)上乗せでもらうことができる。
⑦プログラミング(programación)とロボット工学(robótica)の早期導入
具体的な予算やスケジューリングは明言されなかったものの、政府は「スクール・コード・プログラミング計画 4.0(Programa Código Escuela 4.0)」なるカリキュラムの導入を考えているようだ。幼児教育(Educación Infantil)から中学までの義務教育(ESO)での、早期導入を目指す。
◇⑥と⑦については、教育関連。スペインの政府では、与党が変わると多くの場合、教育基本法も変わる。そのくらい、教育と政治は密接なものと考えているからだろう。
まだ、細々した対策があり、また、各党の反応もいろいろ見ておきたいこともあるが、日を改めてからにしよう。
写真は施政方針演説に臨むペドロ・サンチェス首相。日本の国会論戦と違い、周りに事務方官僚がいない中、自分の言葉に責任を持って戦う、孤高のサムライという感じだ。