
5/18 ニュースなスペイン語 Dudas razonables:合理的な疑い
小欄では取り上げなかったが、実は、少し前から、ドイツ船籍の「ボルクム」というコンテナ運搬船(carguero)が積んでいる兵器(armamento)の最終目的地(destino final)について、一部の政党から「合理的な疑い」が向けられていた。
このボルクム号は当初、ムルシア州のカルタヘナ港(Cartagena)に入港する予定だったが、結局、これを取りやめ、スロベニア(Eslovenia)に直接向かうことになった。
そして、積み荷はスロベニアで別のコンテナ船に移され、チェコ共和国(República Checa)の首都プラハ(Praga)に向けて、再び出港することになったという。
実は、ボルクム号は兵器を運搬するための必要書類を全て搭載(tener toda la documentación en regla)していたが、その武器の最終目的地がイスラエル(Israel)なのではないかとの邪推が、かの急進派政党ポデモス(Podemos)から噴出していた。
党首のイレネ・モンテロ(Irene Montero)はテレビの取材に対して、「合理的な疑いがある(hay dudas razonables)」と再三繰り返していた。
モンテロによれば、ボルクムが持っていた書類の第二項には、チェコ共和国が許可すれば、第三国に武器の輸出が可能であると記載されているとのこと(dice en el segundo punto que esas armas pueden volver a ser exportadas si da autorización el país)。
当然、ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)政権も、防衛大臣(ministra de Defenza)マルガリタ・ロブレス(Margarita Robles)も、イスラエルへの武器供与の可能性を否定しているが、ポデモスは、とにもかくにも、サンチェス政権には不信感マックスなので、何を言っても聞く耳を持たない。
サンチェス政権にとって、かつての連立パートナーのポデモスに騒ぎ立てられても、まぁ、痛くもかゆくもないだろう。
しかし、現在の連立パートナーであるスマール連合(Sumar)からも、ボルクム号のカルタヘナ入港を阻止するよう検察(Fiscalía General)に要請があったというから、政府としても、何か策を取らざるを得ない。
しかも、スマール連合の国会担当であるイニゴ・エレホン( Íñigo Errejón)から、現政府は「イスラエルによるガザにおける大量殺人の共犯者になってはいけない(no ser cómplices de un genocidio)」などと、人聞きの悪い投稿があったとなれば、やはり、手をこまねいている訳にはいかなかったのだろう。
結局、ボルクム号からカルタヘナ入港を断念する旨、連絡があったという。
また、ロブレスは「スペイン政府の立場は火を見るよりも明らか。我々が即時停戦を求めているのは、ガザで起きていることを絶対に容認できないからだ(la posición de España es una posición clarísima, estamos pidiendo el alto al fuego ya porque lo que está pasando en Gaza es absolutamente inaceptable)」との声明を出し、火消しに躍起の様子。
パレスチナを「国家として認める予定(va a reconocer Estado Palestina)」の立場を取るスペインなので、ロブレスの発言は、まぁ、一貫している。
また、「チェコ共和国が許可すれば、第三国に武器の輸出が可能である」と書いてあるからといって、その第三国をイスラエルと決めつけ、現政権にけんか腰になるのもどうかと思うが、サンチェスを全く信じていないポデモスだから、こうした疑心暗鬼も、まぁ、ある意味、うなづける。
写真はカルタヘナ港の沖合で停泊(fondeado)しているボルクム号。