9/23 ニュースなスペイン語 Vientre de alquiler:借り腹
日本語では「カリバラ」と発音するが、あまり、字面も発音もあまり小生好みではない(が、かなり、日本の公の文書にも出てくる)。
まったく個人的な嗜好だが、代理母出産(gestación subrogada)の方がしっくりくるので、小欄はこちらを使うことにする。
スペインでは代理出産は違法(ilegal)だが、これが認められている他の国では行うことができるというのが、まず、大前提。
さてさて、子どもに恵まれないスペイン在住のカップルが、ふたりとは全く関係のない第三国(un país remoto con el que los padres carecen de relación)であるウクライナで授かった男児の出生地(lugar de nacimiento)はどこになるのか――。
何かトンチのような命題だが、最高裁(Tribunal Supremo)が、この度、このケースでは、両親と男児の居住地(lugar de vivienda)であるスペインを、出生地とすることを認める判決を出したというニュース。
こうした判決はこれまでに出されたことはなかった(sentencia pionera)。
細かい法律的なことは、全くの素人なので、取りあえず脇に置いておいて、今回の事案をざっくり見ておこう。
最高裁が判決の根拠としたのが、代理出産と、スペインでは合法の国際養子縁組(adopción internacional)の類似性(por analogía)だ。
ちなみに、男児は父親とは生物学的な親子関係(una filiación paterna biológica)、その父親の配偶者である母親とは養子縁組関係(una filiación materna adoptiva del cónyuge del padre biológico)を持つ。
国際養子縁組とは、スペインとは異なる国籍を持つ養子と養親との合意の元に行われる縁組のこと。
出生地の変更は、これまで、国籍養子縁組にか認められてこなかった(hasta ahora la modificación del lugar de nacimiento solo estaba prevista para los casos de adopciones internacionales)が、今回の判決では代理出産でもこの変更を認めるべきとするもの。
ふむふむ、素人にも、何となく分かる理屈(唯一の違いは、子に養子になる意思確認が取れるか否かかしらん…)
そして、もう一つ重要なのが、最高裁が、代理出産と国際養子縁組との間には類似性があるため、前者だけに差別的な状況が生じることを回避する(evitar que se produzca una situación de discriminación)という判断を示した点。
子の出生の経緯を家族の信頼関係(intimidad familiar)に関わることとし、出生地は国内の身分証明書(documento nacional de identidad)やパスポート(pasaporte)に明記されることになるので、このことで家族との信頼関係を保つ子の権利(derecho a la intimidad)を侵害し、代理出産による縁組があることを不必要に暴く(revelador de la existencia de la adopción)ことになるとした。
両親の訴えがことごとく退けられ、最高裁にまでもつれ込んだ点、そして、代理出産を決めたふたりの苦労が垣間見れる点(例えば、判決には、出生地の公表を「煩わしい混乱を生じさせる(dar origen a molestas confusiones)」とか「不規則的(irregularmente)」などのことばが並ぶ)に、何か代理出産がはらむ闇を感じる。
が、今回の判決でこうした闇に明るい兆しが見えてきた。
写真は「私たちは親になりたい。代理出産の合法化を!」としたスペイン政府に向けた嘆願書。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20240919/supremo-aprueba-nacidos-por-gestacion-subrogada-espana-como-lugar-nacimiento/16254908.shtml