8/19 ニュースなスペイン語 Golpe de Estado híbrido:ハイブリッド・クーデタ
先ごろ、世間を騒がせたカルラス・プッチダモン(Carles Puigdemont)は、カタルーニャ州独立派のジュンツ党(Junts)に寄稿した手記(artículo)の中で、自らを取り巻く状況をこんな風に表現した。
プッチダモンは、カタルーニャ州警察(Mossos d'Esquadra)に逮捕される危険をおかして、約7年間の海外逃亡生活にピリオドを打ち、7日にスペインに一時帰国した。
しかし、プッチダモンは民衆の前で短い演説をした後、結局、逮捕に躍起になっている州警察の検問を安々とかいくぐり、まんまと、ベルギーのワーテルローに出国してしまった。
スペインでの滞在日数、わずか、4日。
州警察の中にプッチダモンの逃走を援助した者がいたなど、組織の問題点が明るみになったが、このあたりの諸事情は9日〜12日の小欄に書いたので、詳細はそちらに譲ろう。
さて、「ハイブリッド」の語源は、諸説あるようだが、ラテン語で、家畜の雌ブタと野生の雄イノシシ(una cerda domesticada y un jabalí salvaje)の混血(mestizo)を意味していたようだ(つまり、「イノブタ」のこと)。
しかし、今ではそんな語源はどこへやら、「複数の方式を組み合わせた」製品やシステムを指す。
さて、プッチダモンの感じる「複数の方式」によるクーデタとは何か。
ひとつは、5月11日に施行された恩赦法をプッチダモンに適用することを最高裁が拒否したこと(no aplicarle la ley de amnistía)。
もし、同法が何ごともなく、プッチダモンに適用されていれば、7年前の違法な住民投票(referéndum ilegal)が無実放免になる道が開けていたはず(ちなみに「適用=無罪」という訳ではなく、ちゃんと審議がある)。
もうひとつの抑圧は、上記の当然の状況の帰結として、プッチダモンに対する逮捕状が有効になったままになっていること(mantener vigente su orden de detención)。
私は逮捕されるためにカタルーニャに戻ってきた訳ではない。私が戻ってきたのは、抑圧に立ち向かうための権威を行使するためだ。かくも民主的な法律の適用を裁判官が拒否しているが、これは、いかなる民主主義も黙っていてはならない抑圧だ(No volví a Cataluña para ser arrestado. Volví para ejercer el derecho a resistir la opresión. Cuando un juez se niega a aplicar la ley democrática, es una forma de opresión que ningún demócrata debería tolerar)
プッチダモンは手記の中でこのように述べた。
また、
私は車のトランクに隠れなければならなかったと報じられているが、そんなことはなかった。私は後部座席にちゃんとすわって、カタルーニャ州の南部から北部にかけて縦断し、フランスとの国境まで運んでもらった(No tuve que esconderme en el maletero de un coche, como afirman que hice. Me senté en la parte trasera de un vehículo privado y me llevaron a través de la frontera entre el sur de Cataluña y el norte de Cataluña, que administrativamente es territorio francés)。
と逃走の詳細と経路を明かした上で、次のように記した。
今、私が望むのは、いつ日か正義がスペインの裁判所に戻ってきて、裁判官たちが国会で承認された法を順守することだ。そして、カタルーニャの家にずっととどまりたい(Ahora espero que algún día vuelva la justicia a los tribunales españoles, y los jueces respeten una ley aprobada por el Parlamento, para poder volver a casa definitivamente)。
危険をおかしつつカタルーニャの独立を問うた正義とそれを許さじとする正義ーー。
さて、どちらの正義に女神は微笑むか・・・。
写真はバルセロナで演説を行っている最中のプッチダモン。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20240816/puigdemont-justicia-golpe-estado-hibrido-amnistia/16219695.shtml