見出し画像

10/15 ニュースなスペイン語 Cristóbal Colón(2):クリストファー・コロンブス(2)

クリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)はユダヤ人である(Cristóbal Colón era judío)――。

スペイン国営放送(RTVE)がこの度、放送したドキュメンタリー「コロンブスのDNA、その真の起源に迫る(Colón ADN, su verdadero origen)」が科学的立証に成功したようだ。

記事では、これで歴史が書き換えられた(ha reescrito la historia)とも書いている。

昨日の小欄では、コロンブスの遺骨(restos)はどこにあるかを巡る論争について、セビージャ大聖堂に保管されてものは本物であることがこのドキュメンタリーで証明されたことを紹介した。

で、今回は、もうひとつの、そのタイトルにもなっているテーマについてのお話。

番組の監修を務めたグラナダ大学の法医学教授ホセ・アントニオ・ロレンテ(José Antonio Lorente)は、保存状態の良いコロンブスの次男エルナンド(Hernando)の遺骨のY染色体(cromisoma Y)とミトコンドリアDNA(mitocondrial)を分析した結果、ユダヤ人が持ち合わす特徴がある(hay rasgos compatibles con origen judío)ことを突き止めた。

素人の独り言的補足をしておくと、息子にユダヤの血が流れているなら、父親にも同じユダヤの血が流れていたと考えれば良いのかな。

ロレンテは自身のチームが行ったDNA鑑定の結果や様々な学説を検討し、「コロンブスの出身地はイベリア半島の地中海西部、このあたりの全体(Ubicación geográfica: Mediterráneo occidental. Toda esta parte)」とより具体的な地域まで特定する。

そして、ロレンテはコロンブスがセファルディム(sefardí)、つまり、スペインにかつて暮らしていた(が、後に、国外に追放されることになる)ユダヤ人の家庭に生まれたとする学説を支持する。

小生はコロンブスは、はるか昔の受験の影響で、ジェノバ出身だと信じて疑わなかったが、DNA鑑定の結果はこの説を完全に否定する(los resultados de ADN descartan ya por completo la historia de que Colón era italiano, de Génova)。

そもそも、コロンブスの時代、イベリア半島にはユダヤ人が当時20万人ほどいたと推計されるが、イタリア半島には多く見積もっても1万5000人くらいしかいなかったと見られているだけでなく、ロレンテの研究チームがイタリアで実施したDNA調査ではまったく予期せぬ結果が出たという(los resultados que obtuvieron fueron totalmente inesperados)。

研究チームは「コロンボ(Colombo;コロンブスのイタリア語読みの苗字)」姓をもつ人々のDNA鑑定を行い、Y染色体の間に何か共通項が見られないかと期待していた(esperando hallar coincidencias en el cromosoma 'Y')ようだが、実際はこの人たちのDNAは全く異なっていて、何一つ共通点がなかった(no tienen rasgos genéticos parecidos entre sí ni por asomo)という(日本でも、「田中」姓を持つ人同士で、遺伝的な共通項は、多分、無いような気がするんだけど・・・まぁ、それはおいておいて)。

どうして、このような事態になったかというと、コロンボ姓は、15世紀、教会や修道院に捨てられた子供たちに付けられた苗字だったから(el apellido Colombo se le otorgaba a los niños que eran abandonados en iglesias y conventos)とロレンテは主張する。

加えて、コロンブスが書いたとされている全書簡はいずれもスペイン語で書かれていて(todas las cartas que se conservan de Colón, y son muchas, están escritas en castellano)、イタリア語の影響や語彙は一切見られない(nunca se aprecia ni una sola influencia o palabra italiana)という。

コロンブスがユダヤ系であろうことはDNA鑑定から証明でき、イタリア語ネイティブでなかったであろうことはその書簡から推測できる、といったところか。

ただ、定説のジェノバ生まれという説は、当時のユダヤ人の人口から考えると無理があるんだろうけど、こちらはゼロではなさそう。

そうすると、ジェノバ生まれのユダヤ系という可能性もありそうだから、出生地には諸説ありとして、その出自についてはユダヤ系と参考書を書き換えても良いかも。

写真はクリストファー・コロンブス。

昨日の小欄のコロンブスの肖像画と並び、今日の肖像画もよく見るバージョン。

ちなみに、日本語版ウィキでは、小欄執筆時(10/15)で、コロンブスを「定説ではイタリアのジェノバ出身」と紹介し、ユダヤ人説を「奇説」としている。

で、スペイン版は、「出生地については諸説あるが、最も知れ渡っている仮説ではジェノバで生まれた(de orígenes discutidos, aunque la hipótesis más extendida apunta a que nació en Génova)」とされている。

ユダヤ人説については、「副次的な仮説(hipótesis secundarias)」として、その先頭で紹介されている。

まだ、ウィキの書き換えまでにはいたってない。

出典
https://www.rtve.es/television/20241010/horario-donde-ver-colon-adn-verdadero-origen/16280367.shtml