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9/21 ニュースなスペイン語 Pinganillos:イヤホン

Pinganilloは1983年にスペイン人によって作られた造語だという。「ぶら下がる」を意味するpingarに縮小辞-lloが付いた単語で、日常的に使われる(de uso cotidiano)単語らしい。

いやはや、恥ずかしなから、小生は聞いたことも、見たこともない単語。

同じ意味の「auriculares(イヤホン)」しか知らなかった。こんな風に基本単語が時にスッポリ抜けることがある。

閑話休題。

スペインの下院(Congreso de los Doputados;Cámara Baja)は火曜日、自治州の公用語(lenguas cooficiales)の使用のための一歩を踏み出した。

自治州の諸公用語の使用は、8月19日の小欄でも紹介したが、同院議長のフランシナ・アルメンゴル(Francina Armengol)が提言した議会革新のひとつ。

下院での使用言語に関する規程改正案(reforma)が反対(en contra)171票、賛成(a fovor)179票で可決された。

賛成票を投じたのは、スペイン社会労働党(PSOE)やスマール(Sumar)などの革新派(progresista)の他、カタルーニャ州、ガリシア州、それにバスク州といった独自の公用語を持つ州の地方政党だ。

一方、国民党(PP)やボックス(Vox)などの右寄りの政党は、改正案に反対票を投じた。

そして、今後、議会(pleno)や選挙(comiciones)では、地方の公用語をスペイン語に同時通訳する必要になり、その際に、議員たちはイヤホンが着けることになる、というお話(ふぅ、やっと、本日のキーワードとつながった)。

さて、栄えある演説一人目となったホセ・ラモン・ボステイロ(José Ramón Bosteiro)というガリシア州出身の社会労働党議員は早速自らの母国語(lengua materna)、ガリシア語(gallego)でこう切り出した。

私の言語、それは我が国の文化的な豊かさの象徴だが、それが、本国会で最初に翻訳されることになり、とても光栄である(Es una honra que me permite estrenar la traducción de mi lengua, que es símbolo de la riqueza cultural del país)。

なかなか印象的だが、こういう時に水を差す輩がいる。

ボックスの報道官ペパ・ミジャン(Pepa Millán)は、ボステイロの演説の最中、ガリシア語を使うことに抗議したものの(protestar)ーよく聞こえないのだがー、議長のアルメンゴルに発言をやめるよう注意を受ける。

すると、党首のサンティアゴ・アバスカル(Santiago Abascal)を先頭に、同党の議員たちが席を立ち、議場(hemiciclo)を後にし始めたのだ。

議場は拍手の嵐。アルメンゴルの議長としての毅然とした態度に溜飲をさげたのか、退場する議員らへの皮肉のプレゼントか・・・。

そして、皆、欠席していたペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)の席(escaño)に、自分たちのイヤホンを置いてゆくというパフォーマンスをやってのけた(中には、ポイッとイヤホンセットを投げてゆく者もいた)。

以下にその一部始終があるので、よろしかったらどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=N_uhbiE9Wbg

一方、国民党の議員らは、ここまで過激でないにせよ、ボステイロの演説中、イヤホンを着けない(han decidido no usar pinganillos)ことで抗議の意を示した。これは、ボックスと連帯したアクション(acción coordinada)だという。

国民党の立場は、スペイン語を「共通言語(lengua común)」とし、それを尊重しないのは馬鹿げでいる(Es absurdo despreciar una lengua común)というもの。

だから、自治州の公用語を守り、促進してゆく(defiende e impulsa)が、これをこねくり回すことなく(no las manosea)、あくまでも、正しく使用する(las usa)ことを主張する。

こねくりまわす、というのは、国民党に言わせれば、言語遺産を首相就任のためのつり銭(moneda de cambio)として使うこと、のようだ。

言語を政争の具に利用するな、と言うことか(まぁ、これはこれで正論!)。

それにしても、今回の投票結果(賛成179票vs反対171票)は何となく、来る首相選挙の票の流れのシミュレーションを見ているような気がする。

こんな具合に票が割れ、あちらが勝つんじゃないかなぁと予感させる。

写真はアバスカルを先頭に退場を始めたボックス党員たち。

ちなみに、議場を後にした議員らが置いていったアイテムはイヤホンと「la petaca」だったとある。

小生の知るpetacaは以下のようなウィスキーなどを入れるスキットル。

もしや、ボックスの議員らは議会中に飲酒か…と思ったが、実際は…

「送信装置(transmisor)」だった。まぁ、確かに、形はスキットルに似てるけどね・・・。

「transmisor digital de petaca」というのが一般的な名称みたいだ。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230919/congreso-estrena-uso-lenguas-cooficiales-plenos/2456286.shtml