4/26 ニュースなスペイン語 Exhumacióm:掘り起こし
本日のキーワード「exhumación」と、その関連語彙「exhumar(掘り起こす)」や「exhumado(掘り起こされた)」は、通常、「人の遺体(restos;cadáver)」に対して使う(ただ、ググってみると、「猫の遺体の掘り起こし(exhumación de un gato)」など、人以外の生物にも使う例もあるみたい(だけど、あまり一般的でなく、特殊な使い方かも))。
ある人物の遺体(遺骨)の掘り起こしが、物議を呼んでいる。
この人物はマドリード州の慰霊施設「クエルガムロスの谷(Valle de Cuelgamuros)」に60年あまり眠っていた。
クエルガムロス(地名)の谷は、かつて、「戦没者の谷(Valle de los Caídos)」と呼ばれていた施設で、スペイン内戦(Guerra Civil)で戦死した約3万人を超える人たちが祀られている。
ここは、スペインで独裁政治(dictadura)を敷いていたフランシスコ・フランコ(Francisco Franco)が、建設を命じた慰霊施設。
フランコ自身も同施設に納められていたのだが、2019年10月に、マドリード州のミンゴルビオ霊園(Cementerio de Mingorrubio)に分祀された。
そして、今回、分祀のために、新たに掘り起こされたのが、ホセ・アントニオ・プリモ・デ・リベラ(José Antonio Primo de Rivera)。
プリモ・デ・リベラと言えば、スペインのファランへ党(Falange Española)の創設者。
プリモ・デ・リベラは、スペイン内戦時に反乱軍に手を貸したなどの罪で、1936年に十分な裁判を受けないまま銃殺された。その後、フランコと共にクエルガムロスに納められていた。
今回は、民主主義の記憶法(Ley de Memoria Demicrática)による分祀を、プリモ・デ・リベラの遺族が受け入れた格好で、24日、その亡骸が掘り起こされた。
そして、プリモ・デ・リベラの新たな安住の地となったのが、マドリード州のサン・イシドロ霊園(Cementerio de San Isidro)。
同墓地には、プリモ・デ・リベラの他の親族らが眠る。
そんな、ふつうの霊園で待ち構えていたのが、ファランへ党のシンパ(simpatizante)の集団だった(写真)。
まぁ、写真を見ると分かるが、ファランへ党の支持者たち(falangistas)は、とてもイカツイ。
ナチス式の敬礼をしたり、リベラの顔(と、「ここに参上(Presente)」というでっかい文字)の書いてある横断幕を手にしたり。
ファランへ党の党歌(himno)「Cara al sol(陽を見よ)」を声高らかに歌い、同党の旗(bandera)を掲げていたという。
そして、口々に、「政府は犯罪者だ(Gobierno criminal)」、「お前たちはプリモ・デ・リベラを殺しておきながら、今度は御霊を冒涜している(Primero asesináis y luego profanáis)」といった言葉を発していたらしい。
今回の集会を呼びかけた人物は次のように語る。
ホセ・アントニオ(プリモ・デ・リベラ)の甥や姪の孫たちは、彼には会ってなんかいないし、彼の教義に与していないと感じているのだろう。だから、彼がクエルガムロスで安らかに眠るための権利を守るために、戦わなかった(Sus familiares, sobrinos-nietos, no conocieron a José Antonio, no se sienten relacionados con su doctrina y no han luchado por mantener su derecho a reposar ahí)。
そして、そんな遺族らを「弱腰で、政府の下僕(cobarde y servil)」と評す。
一方の遺族は、リベラ本人が、かつて、何かの講演で
私は自分が信奉するローマ・カトリック教義の元で埋葬されたい。聖なる十字架の加護の元、神の祝福を受けた地で眠りたい(Deseo ser enterrado conforme al rito de la religión Católica, Apostólica, Romana, que profeso, en tierra bendita y bajo el amparo de la Santa Cruz)
と言っていたと主張しており、今回の分祀はリベラの意向に沿っていると考えている。
写真はクエルガムロスの谷にそびえ立つ十字架。世界最大として、昨年3月ギネスの認定も受けている。
リベラが眠りたかったのはギネス級の十字架の元か、それとも、他の親族が眠る傍らか。
読者の川上さんのご指摘から一部を修正しました。毎度、ありがとうございます(4/27)。