9/24 ニュースなスペイン語 Impuesto de patrimonio:富裕税
富裕税とは「個人の純資産に係る国税(un tributo estatal que grava el patrimonio neto de las personas física)」のこと。
乱暴な言い方をすれば、金持ちから税金を巻き上げるシステム、丁寧な言い方をすれば、富の再分配の枠組みのこと。
2008年の経済危機(crisis económica)を機に廃止されたが(fue suprimido)、去年、不定期(indefinido)税、つまり、いつかまた、廃止されるかもしれないという含みを持たせた税として復活した。
この富裕税は「国税」なので、最終的には国の懐に収まる訳だが、その扱いについては、全面的に(en su totalidad)、各自治州(comunidad autónoma)に任せられている。
だから、各自治州によって、税率(tipo de gravamen)や優遇措置(bonificación)などが異なる。
この富裕税を巡って、国内が二分し始めた。
元々、富裕税に対して100%の優遇措置を導入している(つまり、事実上、同税を廃止している)マドリード州に、先日、アンダルシア州が加わった。そして、続いて、昨日、ガリシア州も50%の優遇措置を導入すると発表した。さらに、ムルシア州も同税の廃止ないし部分的廃止を検討中(está estudiando)。
これらの、いわば国の税収を脅かす4つの州の知事は、いずれも、最大野党(oposición)たる国民党(PP)所属。党としての戦略の匂いがプンプンする。
話を元に戻すと、富裕税は、国が定めるところによれば、70万ユーロ(約9700万円)を超える資産を有する個人にかかる。しかし、この上限を50万ユーロ(約6900万円)にしているカタルーニャ州のような州もあれば、アラゴン州のように、さらに引き下げて、40万ユーロ(約5500万円)にして州もある。
資産にはどのようなものが含まれるかというと、不動産(bienes inmuebles)、預貯金(depósitos)、証券(acciones)、生命保険(seguros de vida)、宝石類(joyas)、125cc以上の乗物(vehículos de más de 125 cc)、船舶(embarcaciones)、プライベートジェット(aeronaves)、美術品(objetos de arte)、それに骨董品(antigüedades)など。ムムム、後半に行くに従って、金持ち感満載の資産…。
ダンピング(dumping)――。先ごろ、政府与党(Gobierno)内から上がったマドリード州とアンダルシア州への非難だ。
ダンピングとは不当廉売、つまり、利益度外視の叩き売りのこと。政府には、税金を不当に撤廃して金持ちを呼び込んでいる、と見えるのだろう。
富裕層にしてみれば、しかしながら、自分たちを搾取するような税金がない州に、当然、移住したくなるわけで、だけど、出ていかれた州としては、納税者(contribuyente)がいなくなるので、痛手(perjudica)ということになる。
つまり、富裕税を(事実上)廃止することは、貧富の差の解消にはつながらず、特権階級たち(privilegiados)がのさばるだけ、というのが、与党であるポデモス党(Podemos)などの主張。
ポデモスの言わんとするところは、まぁ、感情論としては理解できるが、マドリードもアンダルシアも法を侵しているわけではない。金持ちとしても、国や自治州が守ってくれなければ、自分の身は自分で守るしかないのだから、そんな彼らには罪はない。
しかも、そもそも、富裕税の税率自体がそんなに高くない。税率は州によって様々だが、例えば、80万ユーロ(約1億1000万円)の資産(fortuna)の場合、マドリード州はゼロだが、アラゴン州では1164ユーロ(約16万円)、カタルーニャ州(約10万6000円)では770ユーロの富裕税を収めれば良い。
だから、富裕税を撤廃したくらいで、金持ちがホイホイ寄ってくるのか、とも思う。
まぁ、しかし、1ユーロだって多く払いたくないのが金持ちの心理だろうから、移住のためのインセンティブ(incentivo) になるのかな。
それにしても、少ないね、富裕税の額。桁が二桁くらい違うんじゃないかしらん。
富裕税を推進させたい首相ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)と、これに対抗する野党第一党である国民党党首アルベルト・ヌニェス・フェイホ(Alberto Núñez Feijóo)は今、税制を巡って論戦を繰り広げている。こちらも、稿を改めて紹介しよう。
写真はイメージ。ちなみに、資産を意味するpatrimonioのpatri-は「父」を意味する。Padreは言わずもがな、22日の記事でも紹介したpaterno「父親の」とかpatriarcal「父権制」も皆、「pat(r)-」が付くことから「父」に関わることかな、と想像が付く。
ちなみに、男子名のパトリシオ(Patricio)は「国(街)」を作った者(たちと、その子孫たち)という意味。パトリシア(Particia)はその女性版。
日本語の感覚だと、自分が生まれた国は「母の国」だが、スペイン語では「patria」、つまり、「父の国」ということになる。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20220923/claves-impuesto-patrimonio/2402988.shtml