見出し画像

9/19 ニュースなスペイン語 Testigo de Jehová(1):エホバの証人(1)

エホバの証人の女性信者(una testigo de Jehová)が、自身の意志に反して(contra su voluntad)、緊急手術(operación de urgencia)の際、数回にわたって輸血(varias transfusiones de sangre)され、精神的苦痛(daño moral)を受けたとして、スペインの関係機関(Administración española)に対して、4万5000ユーロ(約709万円)の損害賠償を求めていた裁判で、欧州人権裁判所(Tribunal Europeo de Derechos Humanos)は国に対して2万6000ユーロ(約410万円)を女性に支払うよう命じた。

女性は輸血を受けることを拒否する意思を書面で残していたにもかかわらず、無視された(fue ignorada por las autoridades españolas pese a dejar por escrito su negativa a recibir transfusiones de sangre)と主張していた。

信仰の自由(derecho a la libertad religiosa)を訴える女性の信念と患者の生命を救う(salvar la vida de la paciente)医師の使命が争い、後者が負けた格好なんだけど・・・

記事を見る限り、このケースでは、医師らの方に過失がありそう。

今回はざっと、経緯を振り返っておこう。

カスティージャ・イ・レオン州のソリア県在住の女性は2017年7月、医療検査(una serie de pruebas médicas)を受け、手術を受ける必要がある(debía someterse a una intervención quirúrgica)と診断された。

その際、生命の危機がある場合でも(incluso si su vida estaba en peligro)、輸血を受けたくない旨を2通の書面で明らかにしていた。

2018年6月に女性は過剰内出血(una hemorragia interna)を起こし、重篤な貧血状態(anemia grave)に陥ったため、地元の病院に入院した。

その際にも、担当医から輸血を薦められたが、再度、輸血を拒否する書面を残していた(se negó y lo dejó nuevamente por escrito en un documento)。

入院の翌日、女性の容体が悪化したため、輸出以外の措置を施すことで知られている(conocido por prestar tratamientos alternativos a las transfusiones de sangre)マドリード市内の病院に搬送された。

ソリアからマドリード市内の病院に搬送する救急車の中(en ambulancia)で、女性に同伴した地元の担当医とマドリードの医師団は、当直の裁判官(jueza de guardia)に指示を受けるべく、連絡をとり、

①女性がエホバの証人の信者であること(la paciente era testigo de Jehová)
②重篤な状態に陥っても、いかなる治療も受けない旨を口頭のみで表明していること(había manifestado solo oralmente su negativa a recibir todo tipo de tratamientos a pesar de su gravedad)

を伝えた。

むむむ、②がまずかった・・・[過失1]。

現時点での報道を見る限り、女性はソリアの病院で計3回、輸血拒否の意思を書面で示しているが、なぜか、断片的で、かつ、間違った、不完全な情報(informaciones muy limitadas, erróneas e incompletas)が当直の裁判官に伝えられてしまった。

この情報を元に、裁判官は女性の生命を救うのに必要な措置であれば、全て、これを認める許可を出した(la jueza autorizó que se le practicaran todos los procedimientos médicos que fueran necesarios para salvar su vida)という。

搬送された翌日、手術が行われ、女性は麻酔から覚めた際に、赤血球の輸出が3回行われたことを知ることになる(La cirugía se llevó a cabo ese día y se le realizaron tres transfusiones de células rojas, algo de lo que la paciente se enteró al despertar)。

裁判官のあらゆる救命措置を施す許可が出た時、女性は救急車にいて、意識ははっきりしており、手術方針の説明を受けていて、治療には協力的だった(se encontraba consciente, orientada y colaboradora)にもかかわらず、裁判官からの許可は女性本人に伝えられていなかった。

これもまずい・・・[過失2]。

女性は輸出に拠らない施術が受けられると思っていたのに(había creído que sería operada sin recibir una transfusión de sangre)、これが叶わず、精神的なダメージを受けたとして、スペインで数回にわたり裁判を起こしたが、いずれも、女性の訴えは退けられた(la Justicia no la respaldó)。

そのため、憲法裁判所(Constitucional)にも提訴したが、ここでも、女性の訴えは認められなかった。

スペインでは万策尽きた(Una vez agotado el recorrido judicial en España)ため、ついに、女性は欧州人権裁判所に訴えを起こし、冒頭で紹介したような判決を勝ち取った。

欧州人権裁判所や女性の弁護人の見解も記事には出ているので、稿を改めて紹介することにしよう。

写真はエホバの証人たち。

彼ら・彼女らの布教スタイルは洋の東西を問わず一貫している。

それにしても、緊急の現場とは言え、正確な「報告・連絡・相談」の、いわゆる、「ホウレンソウ」がなされていれば、いろいろな結果が異なっていたかもしれない(女性信者はもしかしたら、輸血を受けずに、亡くなっていたかもしれないし、そのことで、今度は医師たちは殺人罪か何かで訴えられていたかもしれないし、逆に遺族からは感謝されていたかもしれない)。

ちなみに、「ホウレンソウ」を受けた側は、「怒らない、否定しない、助ける、指示する」という、いわゆる、「オヒタシ」で対応するのが、昨今、望ましいとされているみたいですぞ。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20240917/tedh-condena-espana-transfusion-testigo-jehova-contra-voluntad/16251311.shtml