5/24 ニュースなスペイン語 Reencuentro:再会
日本時間の23日午前10時、一時帰国中のフアン・カルロス1世(Juan Carlos I)を乗せた車両がマドリードの宮殿(Palacio de Zarzuela)に到着した。
「国王万歳!(Viva el Rey)」と歓声をあげながら、国旗を振って元国王を迎える数百人の観衆に、フアン・カルロスは手をあげて応じた。
フアン・カルロスは、自身の息子であり、現国王でもあるフェリペ6世(Felipe VI)と約2年ぶりの再会を果たすため、王宮に参上したのである。
しかし、今回の父子だけの再会は、プライベートな場(ámbito privado)における家族間によるもの(familiar)と位置づけられており、そのため、フェリペ6世の公務の予定(agenda de actividades oficiales)にも入っていない(ことになっている)。だから、メディアも一切シャットアウトされた。
現在のところ、王室はこの再会の模様について、写真を公表するとは言っていないので、誰もがこの会談の事実は知るけれど、公的な記録のない密談ということになる。何とも奇妙な話。
その後、フアン・カルロスは、妹であるマルガリータ王女(Infanta Marigarita)や、現国王の長女ソフィア王女(Doña Sofía)らとも会った。なお、ウェルズ(Gales)に留学中の次女レオノール王女(Infanta Leonor)との再会はかなわなかった。
そして、結婚60周年を共に過ごせなかったフアン・カルロスの妻ソフィア上皇后(Doña Sofía)は、公務でマイアミ(Miami)に出張していて、再会に合わせスペインの帰国の途についていたのだが、なんと!コロナ検査で陽性(positivo)となってしまい、2年ぶりの再会を果たすことはできなかった。
さて、帰国の話が持ち上がった時分から、スペイン滞在中、フアン・カルロスがどこに宿泊するかの議論があった。ガリシア州サンシェンショ市に滞在中は、幸い、フアン・カルロスの朋友であるペドロ・カンポス(Pedro Campos)なる人物が自宅に滞在させていたため、問題は無かった。
そして、フアン・カルロスは家族・親族との再会を果した後、早々にプライベートジェットでアブダビに帰ったため、マドリードでの宿泊先の問題も、特に、無かった。
こんな具合にスペインでの宿泊先は特に大きな問題にはならなかった。
しかし、一件落着とならなかったのが、昨日の記事でも触れた「説明?何の?(Explicaciones de qué)」だ。
これは、サンシェンショ市で、ある記者が「何らかの説明のご予定は(¿Y va a dar algún tipo de explicaciones?)」とフアン・カルロスに尋ねた時に、元国王の口から飛び出した仰天発言だ。もちろん、在位中の数々のスキャンダルについての釈明のことである。
この発言を受け、中央政府は失望をかくしきれず、フアン・カルロス1世は「説明と謝罪の機会を逸した(perdido la oportunidad de dar explicaciones y pedir perdón)」との声明を出した。
王室にもともと手厳しいポデモス党(Podemos)は今回の帰国劇を「我々の民主主義に対する辱め(es una humillación a nuestra democracia)」とも表現した。
来月10日にも、元国王は帰国する意向を朋友カンポスに伝えている。サンシェンショ市で行われるヨットレース観戦が主な目的か。
スペイン政府と、そして、スペイン国民に、大きな禍根と反感を残してアブダビに旅立ったフアン・カルロス1世だが、次の帰国は今回のようにスムーズに行くかどうか。
写真はいつのものかは不明。小生が好きなフアン・カルロス-フェリペ親子の写真。笑顔が良い。それに父の手を握る子の姿にグッとくる。誰にも気兼ねなく、時間の制約もなしに、笑い合えるのはいつのことか……。
ちなみに「Explicaciones de qué(説明?何の?)」はたった3語のスペイン語。これが、もし、同じく、たった3語のスペイン語「Lo siento mucho(大変申し訳なかった)」だったら、元国王の余生は大きく変わっていただろう。
なお、Lo siento mucho.は、今から約10年前、ボツワナでお忍びの象狩りをしていた際、誤ってジープから落ち、腰を骨折し、手術を終えた後、病室から出てきた時に、記者団に向けて発したことばだ。これに「Me he equivocado. No volverá a ocurrir(私が間違っていた。もう二度とこんなことは起こらないようにする)」が続く)。
口は災いの元でもあり、幸福の元でもある。