ナイアガラの滝
人生で初めてナイアガラの滝を見たとき、実は、正直なところ、
(しまった)
と思った。
(グランドキャニオンの前に、見ておくべきだった)
こんなに大きいのに、大きいと感じられない。
こんなに大きいのに。
複雑な思いで、滝の周辺を歩いた。
黄色いカッパを着て、様々な角度から見た。
石が敷き詰められた道、
あちらからこちらをつなぐ橋、
落ちていく大量の水、落ちてくる大量の水。
水しぶきと、轟音。
船にも乗った。
大きくて、音も大きくて、すごい滝なのに、想いは複雑だった。
そして、
そんな風に感じた日の数日後。
わたしは、テレビの画面で、衝撃のニュースを見ることになる。
そのニュースとは、日本人が、滝に落ちたというもの。
当時は、なぜかその実際の映像すら広まって、大変な騒ぎになっていた。
目にしたその場所には、見覚えがあった。
(あの場所で。あそこでか!!)
他人ごとに感じられない気持ちと、後味の悪い思いで、わたしは、あの時歩いた道と、あの時抱いた複雑な想いを思い出していた。