【疑問】増額する防衛費は、結局誰が負担するんだろう?
防衛費の対GDP比2%への増額決定
緊迫の度合いを強める東アジアの安全保障環境に対応するため、岸田総理は防衛費のGDP比2%への増額を決めました。現在5兆4000億円の防衛費を約11兆円まで増額する予定です。
そして、今後5年間の防衛費は40兆円で調整されているようです。
防衛費は一度増やすと継続的な支出を必要とする項目のため、安定的な財源が求められます。政府与党も増税で対応する方針で、規模がある程度確保できる財源である基幹三税(所得税、法人税、消費税)のうち、法人税の増税が検討されています。
防衛費のための増税に対し反対意見相次ぐ
そんな中、自民党の萩生田光一政務調査会長は11月30日の都内の公演で、増税の必要性は指摘しつつも、「1、2年は国債でやむを得ない」と発言したようです。
その他にも、自民党からは防衛費の増額分を増税で賄うことに反対の意見が相次いでいるようです。
いつか来た道を繰り返さないために
みなさん、どこかで見たことがある光景だと思いませんか?
①2012年、当時野党だった自民党は、公明党と当時の民主党と消費税率引き上げの三党合意をし、総選挙で勝利しました。しかしその後、消費税10%への引き上げを当初の2015年10月予定から、2017年4月、2019年10月と2度に渡り延期しました。
②円安や資源価格上昇に伴うインフレ対策として、今年1月から始められたガソリン補助金も、本来今年9月末までの予定でした。しかしインフレの改善が見られないために延期されることとなり、現在審議されている補正予算では、ガソリンのみならず電気、ガスにまで補助金の対象が拡大される予定です。
もちろん、強権的で専制的、拡張主義的な中国に対応するため、防衛力の強化は必要不可欠です。
しかし、防衛力を強化したところで、さらなる国債増発で今後財政が揺らいでしまっては、将来に渡って継続的に防衛力を維持することができなくなってしまう可能性があります。お金がなければ、新たに武器を買ったり、一度買った武器のメンテナンスや弾薬の補充などができなくなってしまうからです。こんなことになってしまっては本末転倒ではないでしょうか?
そして、今挙げた2つの例をみても分かる通り、政治家は誰しも増税議論を好みません。有権者からの評判が極めて悪いからです。そのため、当初1年、2年のつもりだったとしてもそのままズルズルと延長を重ねてしまう可能性があります。
先日辞任したイギリスのトラス前政権を見て分かる通り、財政の信認はいつまで保たれるかは分かりません。
防衛費負担の議論は、先延ばしにせず財源とセットで議論する必要があります。軍事費を戦時国債で賄い、戦後破滅的なインフレを招いた第二次世界大戦の歴史を繰り返してはいけません。
そしてもし法人税の増税をするのだとしたら、景気拡大局面にあたる今しかないのではないかと私たちは考えています。
岸田政権の支持率は低下傾向で、たしかに増税する体力は残っていないのかもしれません。しかし、それ以上に、将来への見通しを冷静に分析し、必要なことは必要なこととしてしっかりと説明をする。そして、場合によっては行動に移すことのほうが、支持率よりはるかに重要なのではないでしょうか。