想像よりはるかに深刻な、中国共産党のジレンマ
新疆ウイグル自治区のウルムチで発生したビル火災により10人が亡くなって以降、中国各地でゼロコロナ政策に対する抗議活動が活発化しています。一部では公然と、習近平総書記や中国共産党に対する非難の声もあがっているようです。公の場で政府や党の批判をすることができない中国では異例の展開となっています。
みなさんは、世界的にウィズコロナの流れとなる中で、どうして中国だけが厳格なゼロコロナ政策を続けているか疑問に思ったことはありませんか?「共産党がコロナ感染の初期に成功例としたゼロコロナ政策を止めるのは、メンツ的にできないのだろう」。「共産党では、政策を覆すことは指導者が失敗したことを表すのでできないのだ」。など、どれも一理ある意見だとは思います。
しかし、ヤフーニュースのコラムで遠藤誉先生の以下の記事を読んで少し見方が変わりました。
要は中国の医療体制が脆弱なため、ゼロコロナ政策をやめるにやめられないということなのです。
たしかに、世界2位の経済大国になったとはいえ、中国の一人あたりのGDPは12561ドルと世界の中では62番目です。(日本は39301ドルで27位)。
医療体制を整えるには時間がかかります。医師も1人前になるのに卒後最低10年は必要と言われています。急速な国の発展に伴い、医療体制の整備が追いついていないのは想像に難くないことです。
ただ、脆弱な医療体制という事情があるにせよ、あまりにも厳格で長期間に渡る終わりのないロックダウン生活は、中国国民の不満を極限まで高めているのでしょう。
このまま国民の命を優先しゼロコロナ政策を続けても、国民の不満がさらに蓄積するリスクがある。かと言って、ゼロコロナ政策を止めると今度はコロナによる死者が増え、それによって国民の不満が高まるリスクもある。
民主主義国家とは違い、人民の手によって交代させることのできない中国の指導者は、その分人民の命を守り、不満が溜まらないような生活を送らせる責務があります。民主主義国家では、政策への不満は選挙で意思表示ができますが、中国では人民は選挙でなく、実力行使によってしか意思を表明できません。そしてそれは共産党が最も恐れる社会の騒乱であり、共産党専制体制の揺らぎに繋がりますーー。
今のところ共産党指導部は、ゼロコロナ政策を継続し死者数を抑制するほうが、国民の不満の高まりよりも共産党に与えるダメージは少ないと判断しているのでしょう。
つまりことは、共産党や習近平総書記のメンツだけの話ではありません。中国共産党は、それよりはるかに難しい選択を迫られています。共産党内部の葛藤は、新型コロナの流行後最も高まっているのではないかと推測します。