オンラインインタビュー_モデレーターとしての見え方・見せ方
フリーランスのマーケティングリサーチャーをやってます。
一応会社(法人格)にはしていますが、動いているのは完全に一人。プロジェクトベースで様々な企業様のチームメンバーとなって、主に定性調査領域を担当させて頂いております。
その中で、モデレーターとして動くことが多いです。
モデレーターとは、インタビューや座談会の進行役をする人のこと。
対象となるプロダクトやサービスに関連する方を呼んで(業界用語としては「リクルート」と言います)、デプスインタビュー(1対1で行うインタビュー)やグループインタビュー(4〜6名の方で実施する座談会形式のインタビュー、通称グルイン)をさまざまなテーマで実施しています。
モデレーター歴は、軽く四半世紀を超えます。
たぶん、ありとあらゆるパターンのインタビューをやってきているのではないでしょうか。
コロナ禍でオンラインインタビューがぐっと増えました。
この1、2年はリアルインタビューもそこそこ実施されるようになってはきましたが、オンラインでの実施だと、遠隔地の方にもお話が聞けるので、リクルートのハードルがグッと下がったこともあり、今後も一定数開催されていくと思われます。
オンライン/オフライン、モデレーターをする時に心がけるべきことは大筋では変わらないのですが、「オンラインだからこそ」という要素がいくつかあります。
その中の一つの「画面上での(モデレーターとしての)自分の見え方・見せ方」について、普段留意しているポイントを書いてみようと思います。
(この話にどれだけ需要があるか、全くわかっていません…)
(一般的にオンラインで「誰かと話す」とか「セミナーを受ける」みたいなシチュエーションでは全く役に立たないTIPSであると思われます…)
なぜ書いてみようと思ったのかというと…。
オンラインインタビューを実施する際、リアル実施と同様に「受付係」というスタッフが配置されます。
たいていはリサーチ会社の担当者または受付業務をメインに行うスタッフが担当します。
音声・音量・映像の映り方(画角とか光量とか)に問題がないか、録音に関する承諾の確認、どのデバイスで入っているか(スマホかタブレットかPCか。画面共有したいものがあった時に、スマホで参加されていると小さい表示になってしまうため、拡大などのお願いを事前にする)、手元に飲み物を持ってきて頂くお願い、などなど、それなりに事前に確認&お伝えすべき注意(留意)事項があるわけなのです。
つい最近のプロジェクトは、「受付業務スタッフ」の方がご案内するバージョンでした。
その方とは今回初めて画面越しにお会いしたのですが、初見の際、ちょっとびっくりしたんです。
なぜかというと、なかなかにギラついていたから(笑)。
ロングヘアでバッチリメイク、秘書っぽい風情を醸し出しつつ、人気の女子アナっぽい’モテ’オーラというか、武装感が漂っていたんです。
イメージ画像になりますが、こんな感じ↓
伝わってます??
こんな感じともいう↓
要は「きちんと感」を超えて、「主役感」とでもいうか。
こういった見え方で、マニュアル通りに(あるいはマニュアルを読みながら)、ハキハキと早口で指示を出していました。
相手がついてきているかはお構いなしな感じ。
表情もどちらかというと無表情なクールな感じ。
私がインタビューを受ける立場だったらかなりビビるなと思ったんです。
インタビューは基本的に土日、受けてくださる方のお仕事がお休みのタイミングで行います。自宅から参加ということもあり、たいていは普段着で、女性の場合はノーメイクの方(さっき起きたばっかりの方)もいるくらい、カジュアル度が高いです。
イメージ画像でお伝えすると、こんな感じだったり↓
こんな感じだったり↓
こんな感じでベビーと一緒の参加だったり↓
こんな感じだったり↓
服装も姿勢もラフ度が高め。
それはそうですよね。休日の自宅からなのですから。
武装スタッフとなかなかのギャップではないですか??
その完全武装の受付スタッフによって対応されたインタビュイー(対象者ともいいます)のAさんの様子を、私はスタンバイしながらカメラoffの状態で拝見していたのですが、スタッフの口調と同様に早口ではきはきと答えてらっしゃいました。
ほぼノーメイクで、カジュアルな服装のAさん。
「あれ? 確か小さいお子さんのいる専業主婦の方だったはずだけど…?」と、ライフスタイルと相関がかなり低く違和感を覚えたのです。
ですが、その後私とお話をしてくださっていた時のAさんはゆったりとした口調で優しいママそのもの。
受付時の話し方・表情とはまるで別人。
そういえば、こういうこと、過去にもあったな、と。
そして、これまでオンラインインタビュー時に感じていたことが間違いではなかったと確信しました。
それは、
「こちら(運営)側の見え方・見せ方が、対象者の’ありのまま’の状態を維持できるかどうかに大きく関わっている」
ということ。
もちろん、「誰に」「いつ・どういうシチュエーションで」「どんなテーマで」によっても最適解は変わってくると思うのですが、今回お伝えしたいのは、「一般の方へのオンラインインタビュー」における「モデレーターとしての見え方・見せ方」になります。
「見え方・見せ方」において、大事にすべきこととしては以下の4つ:
1. 相手への感謝・おもてなしの気持ちが伝わること
2. リラックスした雰囲気づくりを意識する
3. 「全力で聞いている」が伝わること
4. ただの聞き手ではなく、専門性があることが伝わること
以下、一つずつ取り上げていきます。
1. 相手への感謝・おもてなしの気持ちが伝わること
休日の貴重な時間を使ってインタビューに参加してくださっているわけなので、協力してくださったことに感謝しつつ「あなたはこの場に歓迎されています」の気持ちを伝える必要があります。
ビジネスの場であれば、服装でいうとフォーマルなスーツになるかもしれませんが、休日の自宅から画面越しに参加する方に対応するわけですから、だいぶシチュエーションが違います。
たとえばこういう見え方の人が画面に出てきたらどうでしょう?↓
またはこんな人とか↓
こんな気合いが入った人を相手にしていると、肩がこりそう(笑)
かといって「先方がリラックスウェアなら、こちらもそれなりで」と、カジュアル度を高めてしまっては、おもてなしの気持ちから程遠くなってしまいます。
たとえば、こんなスタイルはどうでしょうか?
リラックスしすぎて、緊張感がなさすぎて、特に対象者が大人世代だとかなりマイナスイメージになるのでは、と思います。
(言葉にならないほどのうっすらとしたマイナスな印象だとしても、それがインタビュー中に蓄積していって、総じてやりとりに影響しかねないというイメージです)
’ドレスコード’という範疇に入るのかどうかわからないですが、’ちょうどいい’敬意の表し方をカジュアルベースでありつつ目指す必要があると考えています。
あと、服装とは違うのですが、「気合いの入った」感が出るヘッドセット(ヘッドホンとマイクがセットになったもの)は使わないようにしています。ヘッドセットを装着すると、「お仕事感」が過剰に演出されすぎてしまい、「気軽に参加していただきたい」という言葉と裏腹な印象が出てしまう気がするのです。
なので、私が使っているのはこんな感じのもの↓
イヤホンはカナル式の耳掛けタイプ。耳掛けタイプはコードを後ろに回せるのであまり見えない状態。
(bluetoothタイプは充電切れなどのリスクがあるので使わなくなりました)
マイクはワイヤーで自在に形を変えられるタイプ。カメラに入り込まない位置にセッティングしています。
いずれも「ガッツリ装備してます!」感をなるべく見せないことを重視。
(対象者の方はイヤホン・マイクともに使用せず参加する方がほとんどなので、そちらに揃えているふうにしています)
2. リラックスした雰囲気づくりを意識する
せっかく自宅から参加して頂くのだから、その延長上であるかのようなリラックスした雰囲気を意識したいもの。
見え方・見せ方でそれを演出するためには、モデレーター自体がリラックス感を漂わせる必要があります。
これはファッションというよりは、話し方や身振り・手振りでということになってきます。
・ファッションがカジュアルなのだから、話し方もカジュアル寄りにする
・「画面に向かって真っ直ぐに姿勢を崩さず」ではなく、時折背もたれに寄りかかってみたり、モデレーター自身が水を飲んでみたり、相手がラクな姿勢をとれるように率先して見せる
・通信の時差によって話すタイミングが重なってしまった時は、多少オーバー目に謝り、「お先にどうぞ」と譲るジェスチャーを都度加えていく。
などなどを大事にしています。
(これらはいずれも内容に関する話ではなく、もっと手前の話。トーン&マナーのとも言えるかもしれないです)
3. 「全力で聞いている」が伝わること
まず、「相槌(うなずき)や驚く・笑うなどを、表情やアクションを普段よりオーバーめにする」が重要です。
オンライン、特にzoomではどちらか一方の音しか乗らないため、対象者が話している時に、「なるほどなるほど」「そうなんですね」など言葉を挟んでしまうと、先方の声が途切れてしまいます。
また、時差もあるため「あ、モデレーターが何か言おうとしている」と感じて話をやめてしまい、話したい熱量が削がれてしまう恐れがあります。
なので、ひととおり話し終えるまでモデレーターは音を発するのを意識的に中止する必要があるのですが、その間にも「あなたの話を全力で聞いています」を伝えるために、ジェスチャーを多用するわけです。
しかも、画面の中の自分は小さな面積でしか映っていないことも考えられるため、普段より盛って動く必要があります。
2時間の座談会終了後、うなづきすぎて首が痛いことも時々あったりします(笑)。
そして、「メモを取っているよと伝わるようにする」を心がけています。
リアルでも常にメモをとりながら進める派ではありますが、「書いてますよ」と最初に見せることで、「画面から目線を逸らしている(注意が違うほうへ向いている)」と勘違いされることもないですし、「自分の話をメモをとるほど大事にしてくれている」が伝わると思っています。
これはリアルのインタビューの時も同じですが、視線を気にせず話すこともできてプラスの効果になっていると思われます。
オンラインの時のイメージはこんな感じ↓
そして服装もこんな感じは理想だなと思います。
清潔感・シンプル・リラックス感はマスト要素。
あと、「ジェンダーをことさら意識させない」みたいなことも私の中では重視していて、この画像の人物のファッションはそれらが満たされていると感じます。
4. ただの聞き手ではなく、専門性があることが伝わること
これ、説明しづらいのですが、「ただ単に雑談をしているわけではなく、自分の話を専門性と共に受容してくれる人に話をしている」と感じてもらう必要があると思っています。
そう思ってもらうことで、普段とは違うスイッチが入り、いつもは考えずにやっていることや言っていることも、「なぜそんなふうに思うのか/やっているのか」と、改めて深いところへ降りていくことができるのだと思っています。
そのためには、もちろん「深いところへ降りていくための問い」を立てたり「スイッチの存在を探す」をやっていく必要があるのですが、その手前でやはり見え方・見せ方で演出をしていく必要があると考えています。
例えばこんな見え方だったり↓
こんな見え方だったり↓
あと、こんな見え方も↓
この3人の人物(含ファッション)に共通しているのは、
「それなりのキャリア(実績)が感じられ、信頼・安心できそう」
が表れていることかなと思います。
華美な装いとかではなく、アクセサリーなどの装飾もほとんどないけど、
「自分に似合うものを知っている」
「自分が主役になろうとか不健全な承認欲求が微塵も感じられない」
「見つめるべきものをわかっている」
が滲み出てませんか?
それらがないまぜになって、印象としては
「この人は、(職業として)人の話をきちんと聞きそう」
「完全に開かれた」
が感じられる気がします。
(センスが良いにこしたことはないけど、小手先のテクニックではない’何か’がそこはかとなく表れる、が理想ですよね)
この眼差しでとらえられつつ(見守られつつ)、「(心理的安全性が担保された状態で)いつもよりもっと自分を見つめていこう・話してみよう」という気持ちを発動してもらうことが重要だと思います。
共通する重要なポイント(テクニック)としては、ダーク系カラーを着ていないことでしょうか。
顔に近いところにはホワイトを持ってくると、ひとまずのところの清潔感ベースの信頼・安心感を構築しやすいと思われます(もちろん例外はあります)。
画面では「デコルテから上」が勝負どころ。
ここの見え方いかんで印象が大きく変わります。
あと、ジェスチャーを多用するので手先も重要です。
比較的シンプルな装いで仕上げていたとしても、もしバランスを崩した印象(長い爪、キラキラ、ダーク系カラーとか)があったら、かなり命取りになるかも(笑)。
たかが見た目。されど見た目。
印象は一瞬で決まるものです。
上記で挙げた気持ち含めて見え方・見せ方のセットアップを万端にして、気持ちよく話して頂く環境を整えていきたいと思っています。