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ジョブグルメ誕生秘話~思いがけない経験から生まれた物々交換サービス~

1.はじめに

株式会社JICUは、2024年7月31日に、農家や飲食店等の食産業の担い手をフリーランスや副業人材等が支援した御礼を食品で提供するプラットフォーム、ジョブグルメのβ版を発表しました!

このサービス、僕が昨年、佐賀県のスタートアップ支援プログラムであるSaga startup Gatewayに採択され、当初は全く違う構想を持っていましたが、ピボットにピボットを繰り返しいるときに橋本さんをはじめ多くの方々の刺激を受けながら、このアイデアに辿りつきました。

Startup Gateway SAGA (sgsaga.jp)
※今年も受付始まったみたいですね!是非、起業や新規事業を考えている佐賀の方はご検討くださいませ!

今回は、このプログラム当時のことを振り返りながら、ジョブグルメに行き着いたきっかけについて記憶がまだあるうちに書き記したいと思います。


2.会社の創業当初に感じたモヤモヤ

2023年4月18日に佐賀県鳥栖市で(株)JICUを創業したものの、当時は完全な個人事業主の法人成りのような状況。

当時は、一緒に事業を進める従業員も外部パートナーもおらず、ただの一人法人でした。

そこから、夢を語れさんと鳥栖でコミュニティを立ち上げたり、ARスタートアップのpalan齋藤社長と意気投合して、東明館の協力を得て、生徒も巻き込んだ基山町で実証実験をしたり、所属は外部ながらも活動に賛同してくれる方も少しづつ増えていき、色々な活動が出来るようになりましたが、生活の主な収益源はフリーランスとしてのクライアントワークまたは士業としての活動。2023年に中小企業診断士登録をしたことをきっかけに、日々多くの中小企業と向き合う日々を過ごしていました。

中小企業診断士として跡継ぎやコロナ禍で変革をしようとしている経営者等、いわゆる中小企業と呼ばれる企業の皆様だけでなく、今年と昨年だけで100名近くの創業者にお会いし、創業相談対応等もさせていただく等、多くの創業や第二創業フェーズの方とお会いしてきました。

そんな私は、自分もまさに創業期であった訳ですが、当時、こんな疑問を思っていました。

「創業/変革フェーズのリソース不足ってやばすぎじゃね?」

こちらは上記プログラムの応募時の資料

お世話になってくれた皆様に本当に頭が上がらないんですが、このフェーズ本当にしんどいんですよね・・

ステークホルダーが1人で相対するには多すぎるんですよね、、
そして、この課題は企業規模に関わらず同様という点も創業後の営業活動時に知りました(僕もJICUの構想の時から背中を押してくれた生嶋さんいなかったら押しつぶされてたかも。。この場を借りて改めて御礼申し上げさせてください)。

大手企業もそうなんだ!というのはインタビューして見えた新鮮な気づきでした。

そんなこともあり、JICUは創業や中小企業の変革時のリソース不足という中小企業の最大の課題に向き合う企業にしたい、と思っていました。本業の企業との関わり方に関するこだわりはまた別の機会にご紹介させてください)。

3.中小企業に必要なものは外注力?

そんな僕はフリーランスや副業人材こそがこうした中小企業の救世主になるという確信がありました。

というのも、フリーランスや副業人材と沢山出会ってきたから(笑)。

・2期連続参加の新しい働き方LAB
新しい働き方LAB by ランサーズ (lancers.jp)
・フリーランス協会×NewsPicksが主催したOUTPUT CAMP For フリーランス
【募集終了】フリーランス仲間と発信力を鍛えるコミュニティ始動 (newspicks.com)
・中小企業政策研究会
デジタルマーケティングラボ – 中小企業政策研究会 (shindan.gr.jp)
・佐賀県のSAGA Smart Terakoya
SAGA Smart Terakoya〜シゴトに繋げる起業・複業支援塾〜 (saga-terakoya.com)

その他、フリーランススクールの営業/マーケティングの講師をしたりして多くのフリーランス/副業人材と交流してきました。

これだけ人手不足が叫ばれている中でフリーランス/副業人材は超買い手市場。特に実績を積み上げるまでの話を(僕も実績を積む途上だったこともあり)よくしていました。

新・フリーランス実態調査2021-2022版 ランサーズ株式会社

物凄い増え方ですよね、、
しかし、多くの方々が実績つめずに苦労している。。

あるアクセラで提出した資料

これって本当にモッタイナイ。人手不足がこれだけ叫ばれているのに、これだけ多くの方が職を求めている。

このような状況を鑑みた時に、フリーランスや副業人材を上手に活用しながら、リスクとリターンのチューニングを行う「外注力」こそが小規模事業者が中堅企業にステップアップする際にに最も求められる能力では?という仮説を持っています。

この記事は活用のメリットがわかりやすく整理されているなぁと思ってます。

4.二転三転四転。出口が見えない

2023年4月に創業して、そんな思いを深めつつ、この課題は既に多くの企業/団体が取り組んでいるフィールドでもあります。

まさにカオスなほど、サービスがあります。入れそうな隙間なんてあるようには思えませんでした。

本当にやりたいことは何?と問われ続ける中、

  • フリーコンサルのお試し回答サービス

  • 人材側/企業側が双方でリスクを負い合う「報酬をレベニューシェアとするプラットフォーム」

  • 創業フェーズの車輪の再発明を防ぐための新規事業の失敗談をシェアするサービス

などなど、仮説を持っては誰かに壁打ちしてもらったり、過去に似たような事業をやったことがある人を探して話を聞いたり、時には顧客候補にプレセールスしてみたりするも、しっくり来る出口が見えず、ひたすら焦る日々。

診断士としても顧客の声を聞くことが最も大事だと思ってるんですが、
この時は顧客イメージすら中々見えず苦しい時期でした。

5.地域暮らしで見えた本当に救いたい人々

農業との関りが急激に増える。

こんな日々を過ごしていた頃、プライベートは徐々に地域の食や農業に関する話題が侵食していました。

知人の四柱推命で「水田さんは土を触った方が運気が上がる」と言われたことをきっかけに週末は新規就農した中山家の農作業を手伝ったり、地元のフリーランス仲間とIPA研究会やスポーツバーをやったり。

本当にゼロから頑張っている姿にいつも胸を打たれていました。

そして、本業でもプライベートでも、地域の食を誰よりも愛する橋本さんと一緒にいる時間が増えたことが一番のターニングポイントでした。

この写真の通り、地域の食とデータを愛する男

彼がいつも横で面白い農家の話ばかりすることと、本業でもとある農家の経営再生案件というヘビーな業務が舞い込んだこともあり、頭の中は徐々に食べ物と農家の経営で埋まっていきました。

食の生産者こそ、一番のターゲット!?

こうして農業というものに興味を持つようになった中で、創業/変革フェーズのリソース不足という課題感が最も深刻なのは、食の生産者なのでは?と感じるようになりました。

  • 売上が増えたとしても、労働集約的にしか成長せず、業界の慣習や取引先からの圧力、時間的な制約など、外部の要因により、単価を簡単に上げることはできない。

  • 支出は原料や設備に毎年一定のコストがかかり、その価格は上昇することはあっても下がることはほとんどない。採用コストは年々増大している。

  • 初期投資が大きく、売上が上がるまでの債権回収期間が長い。

つまり、成長に必要なマーケティング等の投資原資を貯めることが本当に難しい。僕が会社を作った時に感じた「創業や変革フェーズの無理ゲー感」を一番感じている人たちでは?と思うようになりました。

6.食とスキルの物々交換プラットフォームの着想に至る。

ふとした会話がきっかけで誕生

こうした話を面白いと思いつつ、まだこの時はジョブグルメの着想には至っていない状態でした。

そんな中で悶々とした気持ちで歳を越してしまい、迎えた1月のアクセラの公開メンタリング。

レベニューシェアのプラットフォームは難しそうだ、という結論に至った旨を報告をし、うつむいた状態だった僕。

  • 「あたし、それ普通に使いたいんだけど!」

  • 「農家はマーケティングは専門家に任せて、いい作物を生産することに専念したいがみんな本音だと思うよ」

と、一緒にプログラムに参加していた方が声を上げてくれました。

ここで思い出したのが、橋本さんが時折言っていたあの言葉

  • 「将来は、支援している農家さんの作物だけで生活できるようになりたい」

当時は「変わったやつがいるもんだ」くらいでスルー。

橋本さんの顔が脳裏によぎりつつ、思いつきで、

  • 「じゃあ、食べ物をお礼にマーケティングを手伝ってくれる人を募集するとかどうですかね?」

と切り出すと、

「えっ、それめっちゃ面白いじゃん」と一緒にアクセラに参加していた他の方も背中を押してくれました。

お金ではなく食べ物で払うとかできるのか?と思いつつ、面白そう!と直感的に感じたこともあり、まずは、その方向性で探ってみることに。

まるで年貢!?令和に残る面白い慣習

とはいえ、まだ半信半疑だった状態。
そこで、本当に物々交換というやり方が成り立つのか、食の生産者の方に話を聞くと面白い話が沢山出てきました。

まずは、新規就農した友人から、

  • 農地の賃貸借契約書の支払い単位に「円」と「キロ」があった

つまり家賃の米払いOKという話だと思います。「年貢かよ!」ってツッコみたくなりますが、これ以外にも興味深い話があり、

  • 知り合いの漁師さんは居酒屋に魚払いで通っているらしい。

  • コロナ禍で生産者同士が食べ物を互いに送り合うことがTwitterで流行った(これは先日聞いた話)

  • 農家コンサルは支払いを米で貰っていた人がいるらしい(噂)

そう、意外と物々交換という習慣が今もあったことに驚くと共に、東京時代地域系のプロボノに参加していたこともあり、「人材も地域の食産業に携わるのは凄く遣り甲斐があるだろうな」と思うようになりました。

豊かさのモノサシを豊かにする挑戦

こうして少しづつ興味が深くなった中で、ジョブグルメをスタートアッププログラムの成果として発表するぞ!と覚悟を決めたのが2024年2月。

地域の精神的な豊かさの象徴と思っている食産業に携わる方を増やしたい、本当の豊かさは何なのか、お金の先にあるものは何なのか?を考えていただくきっかけを作りたい、というコンセプトを固めていくと共に、

投資家の方のメンタリング等を経て、「やり方によってはなんとかなるかも」と少し自信を得て、3月の成果発表会で構想をプレゼンしました。

ピッチ資料はこちら。

https://www.canva.com/design/DAGF6Yl5os0/RcMU5lrc-hD8N0H7poJnpA/edit?utm_content=DAGF6Yl5os0&utm_campaign=designshare&utm_medium=link2&utm_source=sharebutton

7.β版として実証実験をスタート

橋本さんとの共同創業

3月の成果発表を終え、まず、最初にやったのは、ジョブグルメの魂とも呼べる思想を持った橋本さんを本気で巻き込みにいくこと。

僕以上にジョブグルメの世界観を信じてくれる人材だと思ったので、僕の下ではなく、僕の横か上というポジションで共同創業という形でオファーしました。

当面はJICUの中で実証をしますが、別法人化を見据えて、リスクを承知で一緒に飛び込んでもらうことに。

ジョブグルメの代表メッセージの写真はほうれん草農家のとんぼ農園さんで奥様に撮影してもらいました。フィンガーライム農家の中山さんも一緒に。

ホームページ制作からまずはやってみる。

いきなりクライアント相手に実証実験をやるのは怖かったので、ジョブグルメβ版のサイト制作を食べ物で依頼するところから実験を始めてみました。

結果的にジョブグルメの世界観に共感した、4名の優秀な人材が集まり、素敵なサイトが完成!

業務が成り立つことに一安心すると共に、彼らには実績として使い倒してほしい&周知を依頼。

そして、返礼品の希望を聞く時にこんなことを言っていただきました。

  • 「せっかくなら生産者のサイトを作って、その作物を仕事を通して知った生産者の想いと共に味わいたかった」

この声を聞いた時に、生産者と人材を繋いで大丈夫だ!と確信。

β版として2024年8月から、実証実験にお付き合いいただける生産者と人材を募集することにしました。

8.今後について

ジョブグルメは有難いことに、私と橋本さんのFacebookやTwitterを経由で生産者を募集して幸先よく候補先も決まってきており、ヒアリングを通して課題の解像度も少しづつ高まっていきそうです。

今後は、人材側に配信をしながら、交換の実証を進めていく予定です。

マネタイズ等の大きな課題もありますが、真摯に生産者や人材の課題に向き合えばきっと打開策も見つかるはず!

新たな価値交換のあり方という大きなテーマで社会実験をやる楽しさを噛みしめながら、ジョブグルメを通して一生お付き合いしたくなるような生産者と支援者の繋がりを作りたいと思っています。

もしご興味を持っていただける方は、是非ご登録いただけますと幸いです。

登録はサイトから!
ジョブグルメ (jobgourmet.co.jp)




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