新しいリスクに対応する少額短期保険
近年では、感染症の蔓延やサイバー攻撃によるデータ漏洩、シェアリングエコノミーにおける事故、気候変動に伴う異常気象、生成AIの利用に伴うリスクなど、毎年のように新しいリスクが登場しています。少額短期保険には、通常の保険に比べて、より迅速に商品を市場に提供できるというメリットがあります。ここでは、新しいリスクに対応した少額短期保険の商品開発の流れをご紹介します。
◾️ 比較的素早く商品開発が可能な少額短期保険
保険は、個人や企業が直面する様々なリスクに対して、経済的な保障を提供し、社会の安定に寄与する重要な役割を担っています。感染症の蔓延やサイバー攻撃によるデータ漏洩といった新しいリスクに対応するために、保険業界では商品開発が進められています。
その際、少額短期保険業なら、少額で短期という制限はありますが、財務局への届出により比較的素早く新商品を販売開始することができます。新しいリスクへの迅速な対応に適した業態と言えるでしょう。
※少額短期保険業の商品審査については届出が正式に受理されてから60日で発効することが法律で決まっています。一方、損保会社の商品審査は当局の認可となっています。
◾️ 新しいリスクに対してどのように保険商品を設計・届出するのか?
しかし、新しいリスクに対してどのように保険商品を設計するのでしょうか?届出書類としては、最終的には、基礎書類と呼ばれる約款・事業方法書・算出方法書を提出するのですが、まずは企画書に当たる商品概要書・数理概要書を作成して、当局と対話を開始します。
こういった書類の書式も保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)(少額短期保険業者向けの監督指針)として、金融庁から公表されています。
商品概要書には商品開発の目的や、補償・保障の内容などを記載し、数理概要書には保険料と責任準備金の計算方法などを記載します。
◾️新しいリスクの保険料はどのように決める?
その際、新しいリスクの保険料はどのように決めるのでしょうか?
また責任準備金とは何でしょうか?
保険料の算出は、以下のようなプロセスを保険数理のスペシャリストである保険計理人と議論しながら進めます。
リスクの発生率、またはその被害額等を予測するデータを準備します。
補償の範囲と金額を決めます。
発生率と1事故の予想される支払保険金額により1契約あたりの保険金支払い原資(純保険料)が算出できます。
この原資に事業費等コストを乗せて保険料を設定します。
特に新しいリスクの場合、該当するデータが無く、類似ケースのデータ等から算出することとなります。保険計理人はそのデータの信憑性を反映しながら保険料を算出するロジックを作り上げます。
また、責任準備金とは、将来の保険金支払いに備えた積立金で、これは保険会社にとっては費用計上となります。この計算も保険計理人にて算出されます。申請に必要な収支計画にはこの責任準備金の見込みが必須となります。
◾️さいごに
新たなリスクをカバーする保険商品開発にチャレンジすることは少額短期保険業にとっての醍醐味と言えるでしょう。リスクを正確に測る、短期に商品開発を進める、また収支計画を作成するためには保険計理人との綿密な連携が不可欠です。
お知らせ
弊社は、グループ企業である株式会社justInCaseでの少額短期保険の運営実績や、保険業界における多数のシステム提供実績を活かし、企業の少額短期保険事業立ち上げをサポートする新事業「少短設立Navi」を開始いたしました。
上記でお話しした数理概要書、算出方法書の作成にあたっては専門の保険計理人が作成をサポートいたします。
少額短期保険設立に関するご相談・お問い合わせがありましたら、ぜひお気軽にお声掛けくださいませ。