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【CASE STUDY BOOK4より 座談会企画02】「希少性を持つ非凡人公務員の座談会-CSB出版委員会」後半

NPO法人自治経営の“実践者による”公民連携事例紹介の書籍「CASE STUDY BOOK4」に掲載されている「希少性を持つ非凡人公務員の座談会-CSB出版委員会」を特別に公開いたします。
CASESTUDYBOOKの編集を行なっているメンバーに座談会の後半では、希少性をもつための武器の参考になるアイデアがたくさん詰まった座談会になっています。今年1年のチャレンジを決めるヒントになると思います。

(前半記事はこちら)https://note.com/jichi_keiei/n/nc4c1d1dbe978

公民連携事業ケーススタディブック 2022 Vol.4

【対談者】
洞口文人
株式会社L • P • D代表取締役
NPO法人自治経営副理事長 FMアライアンス

有馬毅
須賀川市市民福祉部長寿福祉課 主査
NPO法人自治経営南東北アライアンス
一般社団法人ロジカラ理事

新田裕磨
塩竈市建設部定住促進課
教育員会教育部教育総務課兼務 主査
NPO法人自治経営南東北アライアンス

榊田大輔
佐倉市資産部施設保全課 主任技師
一般社団法人佐倉家家守舎 理事
NPO法人自治経営関東甲信越アライアンス

聞き手
宮本恭嗣
株式会社ENdesign代表取締役社長
さいたま市PPPコーディネーター
(これらの肩書き取材当時のものです)

技術云々でなく、自分の戦える武器を持つ

–公務員の採用の問題もあるのかなと思います。採用は、事務職なのか、技術職なのかという大きな分け方しかしていないですよね。民間は細分化されていて、さまざまな職種を採用しようとしています

(洞口)人事自体も「この人にはこういう技術力を持っている」ということを把握していないんです。「建築」というかなリざっくりした採用枠で、自分の同期は10人いましたが、採用された人を見ると、画ー的な能力しかないように思えました。
デザインができる人が本当にいません。公務員でデザインができれば、もっと伝わるプレゼンができると思います。仙台市で最初に勤務した部署のパソコンには、イラレなど最新のソフトがきちんと入っていたので、当然業務で使っていたら、同僚に「使うな」と怒られました(笑)。ただ、自分がやってみたら、他にも使える人がいることが分かって、2~3人使い始めると、誰も文句を言わなくなりましたね。

(榊田) デザインは本当に大事ですよね。前職の上司に「資料が汚いと、デザインもできない」とよく言われてました。クライアントに渡す資料は、パッと見た瞬間の見栄えを良くすると、打ち合わせもスムーズにいき、信頼も得ていました。イラレで作る資料は 圧倒的にきれいに早くできるので、役所内での自分の資料は評判がいいですね。 

(洞ロ)デザインという希少性があるから、次の仕事や企画を通すことができたと思います。資料がカッコイイから、新しいことを始められたり、新しい出会いがあったリ。そう考えると、公務員の希少性と考えるときに、技術の云々ではなく、「自分の武器は何なのか?」ということを考えるといいと思います。僕はデザインカと都市を分析する力がありました。その武器を使って仕事をする中で、断熱や公民連携、リノベまちづくリなどを経験して、さらに希少性が高まってきたと感じてます。公務員は武器無しに入ってくることが危ういと思う。自分の希少性があることに自信をもって、新しい仕事を作っていくことが大事だと思います。

(新田)僕も、最初は「建築」ということだけしか武器がありませんでした。役所内で綺麗なマップを作ったリ、見やすい人口分布を作ったリすると、周りに喜ばれて、信頼されていきます。そうすると、自分のやっていることが希少性として認識してもらっているなと感じます。

(有馬)新田さんは、建築職だけど、建築以外の教育系やまちづくり系もわかる建築職となっているところも、希少性の高さだと感じます。
新田僕は教育委員会も兼務していて、施設の維持管理や営繕を自前でやっています。自分で大規模改修の設計監理をし、維持管理もやっている。営繕部署は、一般的には建物を引き渡したら終わりだけど、維持管理までやるから、手を抜いてできないです。 一度きちんとやると、他の学校や施設も担当してほしいという話が役所内に広がっていきました。

CASESTUDYBOOKの編集を行なっているメンバーによる取り組み1

希少性の高い人材の確保

–「建築がわかる」という切り口ではあるが、いかに、自分の持つ希少性をアウトプットして活かしていくか?それが次なる希少性の出会いや発掘につながっているのだな  と思いました。デザインができる、伝わるプレゼンができるという能力は、公務員に乏しいと思います。アウトブット自体が下手で、資料がものすごく分かりづらいですよね。文字量が多すぎたり、発表も資料を単に読むだけだったりすることが多い。公務員が自前で作るチラシも絶望的にかっこ悪い。残念ながら、そのことにすら自分たちでは気づいていない。市民が見ても、何も伝わらないチラシになってしまっていますね 。

(榊田)普段の業務を自前主義でやっていくと、様々なことを自前でやろうと考えますね。社会実験をやったときも、委託をせずにチラシ作成など全部自前でやりました。実際にチラシのデザインに引き寄せられて、来られた方も多くいました。

(洞口)榊田さんのような希少性の高い人を採用する方が、行政としても価値があるのに、希少性の高い人材が公務員になりにくいという職員募集のやリ方の問題もあると思います。行政の人事は、人を見る目もなく、変な人を採用してしまいがち。公務員は希少性が高い人ほど活躍できるのに、行政は自ら門を閉ざしていて、面白い希少性の高い人物がなろうと思わないんですよ。 

–たまに「能力の高い民間人材を登用します」という動きもありますが、自分自身も会計年度職員としてさいたま市に勤務しているのでよく分かりますが、業務の範囲が限定的になってしまいます。正職員と同じように働けるわけではないため、希少性を発揮しきれない。希少性の高い人材を正職員できちんと雇うことができれば、委託費を削減するだけでなく、希少性を掛け合わせて面白い取リ組みがどんどん生まれるんじゃないかと思いますね。

(洞口)希少性の高い人材は、次の新たな希少性を作る力があると僕は思います。榊田さんで言うと、直営化していくこと。その能力をどう発揮して、周囲にアピールして、能カのある人材が入りやすい、働きやすい環境を作ることにつながるのだと思います。

スキルを外でインプットし仕事でアウトプットする

(有馬)アウトプットの話で言うと、建築職は自分のスキルを使って、アウトプットする機会があると思いますが、事務職だとなかなかアウトプソトする場がないと感じます。そのため、公務員が副業とかできるようになれば、一般社団法人など非営利の団体に所属して、外でアウトプットの機会を得て、自分の力を磨き、公務員に戻って外で磨いた力を生かすことができるのではないかと思います。事務職だとアウトプットする機会が少ないということですね。有馬さんのように、外でアウトプットする機会を作っていくことが公務員の希少性を高める機会となる。自治経営もある意味では、アウトプットする機会の一つですよね。

(洞口)編集班に集まってもらっていますが、他に取材班もいて、カメラの使い方を教えています。カメラをしっかり使えるということも希少性の一つだと思うんです。自治経営で、取材をする、撮影する、まとめる、そして本を出版するということがスキルを磨く機会だと思います。希少性は、何もデザインだけではありません。カッコいい写真が撮れる、地域の人と話をする、取材して聞き取る、それができるだけでも、その辺の広報課よリも能力が高いと思いますね。デザインだけでなく、文章化する能力もそうですよね。

–デザインだけでなく、文章化する能力もそうですよね。

(洞口)市の広報を見ると、文章がかっこ悪いですよね。役所内での配信など一つとっても、読みたくなる文章ではなくて、9割9悲劇的(笑)カッコよく、ちゃんと良いものを作れるか?ということが大事。のほほんと生きて入れば身につかないと思います。外の活動でインプットしていき、中でアウトプットしていくことが大事だと思う。

(新田)去年、若手職員でプロジェクトをやったときに、動画作成を後輩に任せたんですが、意外とカッコよく作れたということがあリました。それがきっかけで「デザインを勉強しようかな。」とやる気になった後華がいました。きっかけを与えて、自分のカに気づいて、スキルをさらに伸ばそうと思ってもらうように後輩に接することが、人材育成で大事だなと感じました。 

小さく戦える武器を持つ

前半にもあったように、公務員は一つの歯車的存在で、一般的には、希少性を求められていない。建築の世界は、いかに希少性が高いか競っていて、公務員は真逆の世界です。そういう意味で言うと、公務員でちょっとデザインができるだけで、「なんかこいつすげー」となリますよね。

(洞口)まさにピンホールマーケティング(笑)。僕は、「せんだい洛中洛外図」という一枚絵を描いただけでかなり話題になりました。「公務員が描いた」というだけで騒ぎになりました。アウトプットしているとインプットの機会も桁違いに増えます。外部の人が持っている情報は圧倒的に違います。最新で正しい情報が自分に入ると、上司が言っていることに対しても、「全然違うな」と気づきます。そうすると、上司への説得の仕方も変わります。『君に友だちはいらない(瀧本哲史)』の本にもありましたが、一つでもいいから、戦える武器を持とうということと、今日の話が繋がると思いました。「コモディティ人材」ではなく、小さい武器で良いから「戦える人材」になろうということですね 。

–希少性を高めるとなると、大それた武器を持たないといけないと思うかもしれませんが、公務員はまず小さい武器でいいということですね。一眼レフカメラが扱えるとか、イラレが使えるとか、それくらいでいいんだと思います。民間だと大きい武器が必要だが、公務員は基本竹やリしか持っていないから、火縄銃でも勝てるくらいのカで良いということ。小さい武器でも大きい武器に見えるんですね。そうすると、民間からも評価されます。役所の中でも目立つし、外からも評価されるし、そういう意味では絶対オイシイなと。 

(洞口)内部では、逆にそういう人を埋没させようとする力も働くこともあります。竹やり以外を持とうとする職員に対してヤキモチを焼いてやいて、「みんな竹やりしか持てないのに、なんで火縄銃使ってるの?」と言われることがあると思います。そこは自分の心臓を強くして気にせずに、火縄銃を使っていくことが必要ですね 。

–役所の中でアウトプットすると、そういう目で見られることもあるとすれば、外でアウトプットの場を持っていることも大事になるかと思います。自治経営も、そういう場になっていけたらいいと思います。公務員向けのデザインカ養成講座など企画しても面白いかもしれませんね。今日は、編集班のデザイン能力、技術力の希少性から始まりましたが、アウトプットし続けることによって、希少性も高まるし、インプットの星も比例していく、そして自分のできることも広がるというお話を聞くことができました。自治経営の新たな取り組みにもつながる話にもなりました。今日は、ありがとうございました。

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