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#3 その長寿命化、大丈夫ですか?

NPO法人自治経営FMアライアンスの菊川です。
静岡県焼津市の職員で、建築技師をしています。
僕からは公共施設の保全や、市役所以外での活動なんかについて発信していきますので、どうぞよろしくお願いします。

僕たちの活動については#1で三宅さんが紹介してくれていますが、FM(ファシリティマネジメント)って何なのか、ちょっと技師的な目線から話してみたいと思います。
ザ・公共施設マネジメントみたいな感じになるかもしれませんが(笑)

総務省が全国の自治体に公共施設等総合管理計画を作らせてから、よく目にするようになった公共施設の更新問題。
これって古くなった公共施設の建て替えをやりたいんだけど、今お金が足りなくてできませんって単純な話じゃないんですよね。


1 この施設って何年使えるの?

これまで主に営繕(公共施設の新築や改修をする仕事)の業務に携わってきましたが、F M関連の業務をやるようになってよく聞かれるのが「この建物の耐用年数は何年なの?」という質問。
実は、これを聞かれると困るんですよね。
なぜかと言えば、決まりがないんです。

税法上では構造や用途に応じて法定耐用年数が決められていますが(例えば木造の住宅なら22年とか)、これってあくまで減価償却を計算するためのものであって、実際に使える耐用年数を示したものじゃないんですね。
それに、同じ仕様の建物が複数あったとしても、メンテナンスの有無、建てられている場所の自然環境や使われ方でも、建物の寿命は変わってきます。

じゃあ全く目安がないのかと言えばそうでもなく、これまで様々な調査や研究がされていて、R C造(鉄筋コンクリート造)では60年とか、しっかり手入れをすれば100年保つとか、様々な説があります。
これは僕の考えですが、R C造に限って言えば、ある程度しっかりした保全をしていれば良くって80年くらいだとと思ってます。

2 小中学校で考えてみよう


では、ここからはどの自治体にもある小中学校を例に、更新問題を考えてみます。

・とある自治体、A市に20の小中学校があったとします。
・このうち、15校が築40年程度、残り5校が築20年程度とします。

築40年の学校って考えると、耐震性さえ担保されていれば、まだまだ使えるって思いますよね。
だから「今は更新のことなんて気にしなくて大丈夫」って気になってしまいますが、それじゃあダメなんです。

小中学校の校舎は全国的に鉄筋コンクリート造の校舎が多いと思いますが、きっちり建てられて、しっかり保全がされた校舎でも、前述したように長くても80年が構造的な限界だと思います。
長寿命化工事や耐震補強をしていたとしても、です。

ということは、約40年後に20校のうち約15校が一斉に使えなくなるんです。
では、その時に一斉に建て替えができるかと言えば、絶対にできません。
何故かというと、40年後に15校も一気に更新できるお金を用意できるはずがないからです。

学校の規模にもよりますが、1校をまるっと更新するのに、少なめに見積もっても20億円程度は必要になります。
それを15校も一斉に更新するとなれば、300億円が必要になります。
交付金や起債に頼るとしても、20校程度の自治体規模では無茶な話です。
それに、今でも多くの業界で人手不足が深刻になっていますが、建設業も例外ではなく、仮にお金があってもこれだけ多くの工事を短期間にしようとしたら、受注者がなかなか決まらないでしょう。

3 スケジュールと費用の話

お金や人手を一気に確保できないなら、それを長期間に分散させるしかありません。
では、どの程度分散すればよいのか。
分散の方法を考えるのに、スケジュールと費用が大きく影響します。
1つの学校を改築する場合、設計から始めて工事が完了するまで、4年かかると仮定します。
この4年スパンで1校ずつ更新していく計画(4年間で20億円が必要)とした場合、15校×4年になるので、更新が完了するのが60年後ってことになります。
これだと、いくつかの学校は築80年を超えてしまい、途中で学校が使えなくなってしまいます。

これを4年スパンで2校ずつ更新していく計画にすると、今度は更新を完了するのは30年後ってことになります。
これなら築80年を迎える前に、更新を完了することができそうです。
でも30年必要ってなれば、建替えを始めるのは遅くても10年後からってことになりますよね。
だから、もう更新のことを急いで考え始めなくちゃならないんです。

でも、このA市では4年毎に必要になる40億円を本当に用意できるのでしょうか?
多くの自治体では社会保障に充てられる扶助費が毎年増加している一方、公共施設やインフラ施設を整備更新する投資的経費は毎年減少しています。
30年間も学校施設の更新のためだけに毎年10億円を捻出し続けるのは、本当に難しいはずです。

こんな状況の自治体、実はかなり多いのではないでしょうか?

4 単なる問題の先送り?

このように、長期的に考えた時に今ある施設を本当に更新していけるのか、というのが公共施設の更新問題だと僕は捉えています。

そんな更新問題に多くの自治体が頭を悩ませる一方で、最近は「公共施設の長寿命化」なんて言葉をよく耳にしますが、正直、そんなこと言ってる場合じゃねえだろっ!て思っちゃうんですよね。
今あるものを長く使おうって考え方は何も悪いことではありませんが、単なる問題の先送りに見えてしまうんです。

長寿命化と言っても、寿命が倍になる訳じゃあないんです。
いいとこ+15〜20年ってとこでしょうか。
それに、同じような時期に集中して建てられた施設群を長寿命化しても、15〜20年後には今と全く同じ問題に直面することになります。
そんな長寿命化にかける金があるなら、もっと本質的なことに使えばいいのにって思ってしまうのです。(ちなみに、うちの自治体のことじゃないですからね!)

■ 第3日曜日の夜9時に会いましょう

ということで、ちょっと技師的目線?な例え話でしたが、公共施設の更新って、本当は考えなきゃならないことって他にもっとあるんですよね。
単なるハコモノの話じゃなくって、学校なら教育そのものの話だったり、庁舎だと働き方の話だったり。
それにコストの話や運営の話だったりと、本当に話題が尽きません。
このnoteでは、そんな公共施設にまつわる色々な情報を発信していきたいと思っています。

それと、毎月第3日曜日の夜9時からは、みんなでお酒を飲みながら公共施設の闇(笑)について語り合う、会員制のオンラインサロンが始まります。
この4月は初回ということで、なんと無料で参加可能です。
全国各地で公共施設と格闘しているメンバーが集まりますので、ゆるく、ディープに語り合えればと思ってます。
興味がある方は、ぜひ遊びに来てくださいね!

■ 公共施設の脱炭素化・オンラインセミナー


最後にセミナーのお知らせです。
#2でも梅木さんが告知していますが、5月15日に公共施設の脱炭素化・オンラインセミナーを開催します。
講師には、長野県庁舎ZEB化にアドバイザーとして関わり、ドイツや日本で最先端の省エネ建築に取り組まれている金田真聡さんをお迎えします。
ぜひご参加ください!

イベントの詳細・お申込みはこちら。
https://x.gd/lI9wJ

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#菊川岳浩

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