#18 公共施設としての文化財という存在(の処方箋編)
みなさんこんにちは、NPO自治経営で活動している津山市の川口です。
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さて、今回は公共施設マネジメント×文化財の話。
個人用のアカウントで、「導入編」を書いたが、ここではそこからさらに深掘りして、文化財建築に立ちはだかるハードルのことや、そこをどう解決していくかという「処方箋」について書いていきたい。
「導入編」がまだの方は、ぜひそちらから読んでみていただきたい。
また、三宅さんと菊川さんが書いてる下記の記事も一緒にどうぞ。
文化財にまつわる法的規制
文化財には当然のことながら「文化財保護法」という法的規制がかけられる。
昭和25年に制定された法律であるが、第一条の目的には、「この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」と書かれている。
法の目的に、保存と活用が並列的に書かれているが、調べてみると条文中に「保存」という単語は484回、「活用」という単語は297回登場し、その回数からして「保存」にウェイトが置かれているように感じる。
文化財の本丸である文化庁の中でも、保存派と活用派に分かれていると聞く(真相は不明w)が、大切なものを後世に引き継ぐというミッションは同じであり、みだりに価値を損ねるような行為は、法律によっても大きな制限を受けることとなる。
法律のことはともかく、実際に文化財を(工事などで)触ろうとすると、現状変更の手続きが必要で、さまざまな規制に遭遇することとなる。
文化財を改修する時の原理原則
例えば、重要文化財においては基本的に保存が優先されるため、内装などを改変することは原則NG行為である。
元にあった状態に戻すことはできても、現代的なものに置き換えるような工事は相当な制限を受ける。
いずれにしても現状変更しようとすれば、全て文化庁の許可を要するため、所有者(自治体であっても同様)の判断で勝手に改修することはできない。
また、重要文化財の所有者に対して「可能な限り、公開するよう努めなければならない。」という義務も課される。
ちなみに津山市では旧苅田家住宅が国の重要文化財に指定されているが、これから予定されている保存改修事業には10年以上の期間を要するらしい(驚)
また、重要文化財の保存・修理で国庫補助を受けようとすると、文化庁の承認を受けた「主任技術者」が設計・監理を行わなければならない。
この主任技術者は全国で130人ほどしかいないそうで、順番待ちのようなこともあるそうだ。
保存・修理にあたっては、当然ながら伝統工法が採用されるため、時間と手間とコストがかかり、事業費は一般的な建築と比較するとべらぼうに高くつく。
登録有形文化財になると、もうすこし緩やかになって、外観が大きく変わることに制限は受けるが、内装に対する大きな規制はなく、自由に改変することも可能である。
また現状変更の手続きについても、文化庁の許可ではなく届出となっているので所有者の裁量は増す。
記念物のカテゴリーとなる、史跡や名勝については、登録ではなく指定なので保存すべきものとして捉えられるが、指定の範囲によって制限がかけられる内容も変わってくるというのが筆者の認識。
例えば、庭園が名勝に指定されていたとして、指定の範囲がその景観にあるのなら、その一部となっている建物の外観は保存対象であり、その内観は対象から外れるといったところだろうか。
いずれにしても、保存に対する細かいニュアンスは、おそらく文化財担当者によって解釈は分かれるのだろうし、それぞれの捉え方によって少し差があるようにも感じるところである。
建築基準法というもう一つの壁
文化財保護の観点をくぐり抜けても、文化財建造物を改修したり、中身にコンテンツを入れようとする時に立ちはだかるのが建築基準法という壁である。
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