心臓移植を待つ少年への寄付
昨年11月に 息子は外斜視の手術を受けるために こども病院へ入院しました。
手術前日に入院した息子は 病院のベッドで寝転びながら 普段通り
テレビを付けました。
夕方のニュースの時間で そこに映し出された男の子が 50万人に一人という
心臓の難病(拘束型心筋症)で もう治療としては打つ手が無くて
海外での心臓移植しか方法がない という状態で、同じ病院に入院している事を
知りました。
そして 心臓移植には 物凄く沢山の お金が掛かることも知りました。
いつもなら ケロロ軍曹のDVDを見て 笑い転げているであろう息子が
しばらく黙って そのニュースを見ていました。
涙を流しながら
「自分勝手なお願いとは分かっているのですが、どうか助けてください」と
言っている 彼のお父さんとお母さんの様子に ただならぬ感情をもった
のでしょう。
「お母さん、移植って なに?」と 聞かれました。
「移植、というのは、そうだなぁ。難しいなぁ。
例えば、交通事故に遭ってしまって もう自分の力では 息も出来ないし、
心臓も動かすことも出来ない人がいるとして。
その人がまだ元気な時に 家族に話してある場合があってね。
もし僕が そういう状態になったら 心臓を誰かに譲ってあげてね、って
そう聞いている人の場合、今 心臓が止まってしまいそうで苦しんでいる人に
心臓を譲ってあげるってこと、かな。」
そう言うと また黙って考え込んで。
「それって でも すごく悲しいことじゃん。すごく泣いちゃうよねぇ。」と
言ってきました。
「そうだね、泣いちゃうね。いっぱいいっぱい 泣いちゃうね。だから簡単には
決められない事だよ。多分、すごくいっぱい泣いたり考えたりするよ。」
と言うと、
「それでも 助けたいもんね。きっと助けたいよねぇ」とも聞いてきました。
「そうだね、きっと助けたい。あの子のお父さんとお母さんは 助けたい。
だから 助けて下さいってお願いしてるんだよ。」と答えると また黙って
しまいました。
手術前日だったので そのテレビの話はそれだけで 終わってしまいました。
翌日、手術が終わり 全身麻酔から覚める時にパニックになったり
その後の めまいや吐き気に苦しんでいましたが 予定通り3日後の退院と
なり 病棟を出ました。
その時 ふと 思い出したように「あの、男の子は 大丈夫かな?」と
聞いてきました。
「まだ 入院中だよ。外国で手術を受けるには お金が足りなくて 頑張って
ここで入院しながら待ってるんだよ。」と伝えました。すると
「お母さん、僕さ、おじいちゃんとおばあちゃんから お見舞いって貰った
よね。それ、募金しても良いのかなって思うんだけど、どうかな?
僕はさ、手術が出来て 退院できるけどさ、その子はまだ 入院してるん
でしょ?
僕と同い年で ずっと痛い手術も痛い点滴もやって 我慢してるんでしょ?
お家に帰れないって 辛いよね。
僕は もう退院できるからさ、お見舞いはもう要らないじゃん。
だから 貰ったお見舞いのお金を 募金して欲しいんだよ。」
思いがけない申し出でした。
言われなくても寄付しようと 別に用意してある お金がありました。
まだ小学生なので、募金と寄付の違いは 分かっていないと思います。
けれども 息子は自分の意志で寄付したい、と言いました。
10歳の男の子が 自分と照らし合わせて 他人を思いやれるまで成長した、
そのことにも嬉しい気持ちがありましたが、それだけではなく 自己満足かも
しれませんが 自分の貰ったお金の使い方を 考えようとしていることに
気持ちが動きました。
早速、息子の口座から 窓口になっている口座へ送金しました。
わずかですが、寄付させて頂きました。まだ吐いてばかりいた息子でしたが
とても嬉しそうに「良くなると良いよね。」と言っていました。
寄付や募金は 思いがけず大きなお金になる場合もあります。夫は
「その気持ちは理解出来るけれども その子の背負うものも大きくなるんだよ、
10歳の子に背負わせてしまって 良いのかな?」とも 言いました。
確かに それは一理あります。お金が集まって 手術が出来て 彼の人生が
新しく始まる時に 沢山の人に支えられて助けられた命なんだから、と
大人たちに言われてしまうと その子の その後の人生が どこか
窮屈になってしまうのではないか、夫の一言は 重く響きました。
命に対するお金の使い方には 賛否はあると思います。特に移植には莫大な
お金が掛かる現実を見ていると 全ての人を助けられない現実に
心が握り潰されそうになることも多いです。
でも これは ご縁なのかな、と思いました。
たまたま付けたテレビに映っていた 同い年の男の子が 同じ病院にいる。
僕は退院できたけど、その子は手術を待っているから 病室で頑張っている。
頑張っている人を応援したい。だから 募金したい。
心臓移植を待っている男の子の名前は ゆうちゃんと言います。
長野県佐久市の男の子です。
ゆうちゃんを救う会 というNPOが立ち上がっています。
まだ目標額に届いていません。
この記事を見て下さった方の ご厚意に甘えることは出来ませんが
少しでも関心を持って頂けたら 幸いです。
長文 読んで下さって ありがとうございました。