失ったもの、得たもの。

私達一家は10年前にこの土地に移住した。

私にとっては多少なりともゆかりのある、夫にとっては観光で数回訪れただけの土地に。

東京生まれ、東京育ちの私は、東京を離れるということがよくわからなかった。夫の強い希望で、それもありかな~とやってきた。

10年経った今、先週の上京で思ったこと。

私は東京を離れ、何を失って、何を得たのか。

失ったものは明らかだ。とにかくたくさんのお店を失った。東京では右も左もお店がある。先日泊まったホテルではドトールもカフェ・ド・クリエとファミマが連立していた。

とにかくたくさんのお店が立っている。そのうちの何割に足を踏み入れられるのかは、わからないけれど。

美味しいものも、事欠かない。お金を払えば、たいていのものは手に入る。

得たものは何か。

空間かもしれないなと思う。大して人が歩いていない道。人影はなく、少しの間なら犬がノーリードで走り回ることができる公園。満員電車は存在せず、あり得ない距離に他人が密着することもない。空は大きいし、日も長い。東京では到底買えなかった土地に、本棚が余るほどたくさん備え付けてある家を建てられた。

東京を離れるということは、私にとってはそういうことだ。

どちらが好きかは個人の好みだけれど。

東京には東京生まれの人はそんなにいない。東京に生まれたからって、ずっと東京に住まなきゃいけないわけじゃない。

人はどんな土地にでも住んで良い。住む土地は自分で決めて良い。

決めた土地だからこそ、責任を持ってしっかり向き合いたいと思う。良いところも悪いところも。

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