あなたは何を大切に生きていく?〜フランクリンに学ぶ徳目の活用法〜
「あなたの座右の銘は何ですか?」
こう聞かれたら、
あなたはすぐ答えられますか?
座右の銘とは、
「いつも自分の身近に書き記して、
自分の戒めとする言葉」
そして、どの言葉を選ぶかが、
「人生で何を大切にして生きたいか」
という、最も重要なことを
示してくれます。
もし、今思いつかなくても大丈夫です。
この記事を読んだ後には、
「人生で何を大切にして生きたいか」の
手がかりが見つかっているはずですから。
なぜ座右の銘を持つの?
座右の銘を
すぐ答えられる人もいれば、
パッと思いつかない人もいます。
また、聞かれるたびに
違う言葉になる人もいるでしょう。
「就活の時に一応考えたけど、
『これ』というのがないな」
なんて人もいるかもしれません。
そもそもなぜ
「座右の銘」という文化があるのでしょうか。
その答えは
「人生に正解がないから」です。
1+1=2となるような
単純な「正解」は人生になかなかありません。
むしろ、導き出すよりも
「選択する」場面の方が多いのです。
そんな場面にあって
何を基準に選べばいいのかわからないとき
私たちは、「座右の銘」のような言葉を
心の拠り所にしておくのです。
人生の指針となる「徳」
こうした知恵は
「座右の銘」だけではありません。
古来より、「徳」という言葉で示されてきた
人間的によいとされるあり方、
それも座右の銘のように
人生を導く指針になります。
ちなみに、「徳」というと
学校の「道徳」を思い出すかもしれません。
この記事は
「これが正しいですよ」という
上から押しつけるような内容では
ございませんので、ご安心ください。
むしろ
「これがいいって言う意見があるけど、
あなたはどう思います?」
という問いをしたいのです。
徳・徳目とは
「徳」という言葉を使いました。
この言葉はなかなか日常では
使わない言葉ですね。
たまに、すごく人格者な人を見て
「あの人は徳が高いね」
なんて言うことがあるくらい。
辞書的には、徳とは
「精神の修養によってその身に得たすぐれた品性。人徳。」
の意味です。
こう書くと、
とても高貴で選ばれた人にのみ
与えられるもののようにも見えます。
しかし、「修養によって」とあるように
これは努力によって身に付くもの。
また「精神の」と書かれている点が
「能力」とは少し違うところです。
このあたりは、具体例を見た方が良いでしょう。
ベンジャミン・フランクリンの徳目
徳を、端的な言葉で箇条書きのようにしたものを
「徳目」と呼びます。
有名なものは、ベンジャミン・フランクリンのもの
「すべてのヤンキー(アメリカ人)の父」とも
呼ばれる彼は、まさに
「成功」を具現化したような人物です。
そんな彼は、次の徳目を大切に生きていました。
節制、沈黙、規律、決断、節約
勤勉、誠実、正義、中庸、清潔
平静、純潔、謙譲
全部で13個あります。
(なぜ13かは、後ほど)
「どれも言われたら大事そう」
そのように思いますよね。
しかし、この徳目は
「自分で選択すること」が重要だと
私は考えています。
次に伝統的な徳目を
紹介していきますが、
「自分の人生にとってどれが大切か」
を視点として持って読んでみてください。
古代ギリシャの四元徳
古代ギリシャでは哲学者のプラトンの
四元徳(しげんとく)が有名です。
その4つとは
知恵、勇気、節制、正義
の4つです。
プラトンによれば
人の魂は3つの部分に分けられます。
それは
理性、気概、欲望
の3つです。
理性とは論理的な部分であり、
この理性にとっての徳が知恵になります。
気概とは意志の部分であり、
この気概にとっての徳が勇気になります。
欲望とは欲求にあたる部分であり、
この欲望にとっての徳が節制になります。
魂の3つの部分がそれぞれ徳を発揮する
つまり、
知恵を働かせ、勇気があり、節制できる
そんな状態の人が正義という
魂全体の徳を発揮できる。
そのようにプラトンは考えました。
少し長くなりましたが、
「知恵を働かせる」
「勇気を持つ」「節制する」
どれも現代に通じて
大切なことですよね。
キリスト教の三元徳
西洋でギリシャ的な考えの後に
栄えたのがキリスト教。
キリスト教においても
重要とされる3つの徳があります。
それが、
信仰、希望、愛
とはいえ、古代ギリシャの四元徳を
否定したわけではなく、
四元徳の上に信仰・希望・愛をおいたのです。
(七元徳と呼ばれることもあります。)
儒教の五徳
西洋の話をしましたが、
当然東洋にも徳目は存在します。
有名なのが儒教の五徳
仁、義、礼、智、信
という5つの徳目です。
儒教は実践的な思想ですから、
上下関係など人間関係についての
示唆に富んでいます。
さて、ここまで見てきましたが、
徳、という言葉は
なかなか掴みづらいものがあります。
「精神的な能力」「道徳的価値」ともいえますが、
私の感覚としては
「人間として大切にしたいこと」くらいに捉えるのが
よいのではないかと思います。
「能力」よりも
もう少し価値観が入った言葉なんです。
徳は堅苦しい?不自由?
ここまでのお話で、なんだか
道徳の授業を思い出された方もいるのでは。
「嘘をついてはいけません」
「友達には優しくしましょう」
そうした道徳的な「お題目」の
匂いを感じる方もいるでしょう。
そして、そうした
「お決まりの正しさ」が
苦手だった方もいるでしょう。
私自身もその1人です。
「嘘をついてはいけません」
と言われれば
「嘘も方便というじゃないか」
なんて思う。
嘘をつくことがいいとは
思っていなくても、
それが、上から押し付けられると
苦しいのです。
しかし、どうでしょう。
あなたがこれまで人生で生きてきて
「やっぱり誠実に生きることって大事なんだ」
「信じることってとても素敵なことだ」
そんなことを感じたことはありませんか。
そんな人が、
自分の生きる指針として
「誠実」という言葉を選んだり、
「信頼」という言葉を大切にしたりする。
それは、とても自然なことに思えます。
逆に、
「あなたが大切にしていることは何ですか?」
と聞かれて
「特にないです」
と答える人は、なんだか
「浅い人間」に思えませんか?
「徳」という言葉を使わなくても
「座右の銘」とか
「大切にしていること」が明確な人は
なんだかブレのない、充実した自分の人生を
歩んでいるように見えませんか?
「徳」についても
お堅い、古臭いものと思わずに、
自分の人生をより豊かにするためのヒント
だと思うと、とても役立つでしょう。
フランクリンの徳目活用法
さて、冒頭にお話した
フランクリンの徳目です。
13個の徳目を詳しく書くと
以下の通り。
節制 頭や体が鈍るほど食べないこと。酔って浮かれだすほど飲まないこと。
沈黙 他人または自分自身の利益にならないことはしゃべらないこと。つまらぬ話は避けること。
規律 自分の持ちものはすべて置くべき場所をきめておくこと。自分の仕事はそれぞれ時間をきめてやること。
決断 やるべきことを実行する決心をすること。決心したことは必ず実行すること。
節約 他人または自分のためにならないことに金を使わないこと。すなわち、むだな金は使わないこと。
勤勉 時間をむだにしないこと。有益な仕事につねに従事すること。必要のない行為はすべて切りすてること。
誠実 策略をもちいて人を傷つけないこと。悪意をもたず、公正な判断を下すこと。発言するさいも同様。
正義 他人の利益をそこなったり、あたえるべきものをあたえないで、他人に尊大をおよぼさないこと。
中庸 両極端を避けること。激怒するに値する侮辱をたとえ受けたにせよ、一歩その手前でこらえて激怒は抑えること。
清潔 身体、衣服、住居の不潔を黙認しないこと。
平静 小さなこと、つまり、日常茶飯事や、避けがたい出来事で心を乱さないこと。
純潔 性の営みは健康、子孫のためにのみにこれを行って、決してそれにふけって頭の働きを鈍らせたり、身体を衰弱させたり、自分自身、または他人の平和な生活や信用をそこなわないこと。
謙譲 キリストとソクラテスをみならうこと。
(『フランクリン自伝』中公クラシックス)
どうでしょうか。
この13個が身についていたら、
相当な人物であると思いませんか?
さて、
この徳目がなぜ13かと言うと、
1週間に1つの徳目を決めて
それに集中して過ごすためです。
1週間に1つの徳目だと合計13週。
それが4巡するとちょうど52週=1年。
フランクリンは、手帳に表をつくり
その徳目に反したことがあればチェックする
という減点方式で自分を律しました。(下図)
「これができたら、そりゃあ
素晴らしい人物になれそうだ」
とも思いますが、
「この13の徳目を『このままやれ』と言われたら
正直やりたくはないな」
と思う方の方が多いのでは。
それはなぜか。
「大変そう」もそうなのですが、
「自分で選んでいないから」
だと私が思います。
もしこの徳目を
「あなたが自分で選んだもので」やる
としたらどうでしょうか。
あなたが選んだ、あなただけの
「人生で大切にしたいこと」のセット。
そんなものがあれば、
毎朝見て一日の方向づけにしたり
毎晩見て一日の振り返りの視点にしたり
そうして過ごす一日は、
とても充実したものになるような
気はしませんか?
現代では、ACTという認知行動療法の先生方が
「価値のリスト」というものを作ってくださっています。
「価値のリスト」などで検索すると出てきます。
ぜひ一度、その中から自分だけの「徳目」
「人生で大切にしたいこと」のセットを
作ってみてください。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございます!
ちなみに、
私が実践しているテツガク明確化は、
そのような視点から作りあげたものです。
「13は多くて、咄嗟の時に思い出せない」
数を絞って基本の価値観としましょう。
「具体的な活かし方がわからない」
目標や行動に移しやすい形にしてみましょう。
そんな私自身の悩みを解決するために
工夫を重ねてノウハウにしたものとなっています。
ご興味ある方は、
プログラムの記事をご覧ください。
私は、「人生迷子を1人でも減らす」ために
日々活動をしております。
「人生迷子」を減らすために
運営している具体的なプログラムが
こちらとなります!
よろしければ、
自己紹介も兼ねたこちらの記事も
ご覧ください。
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