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においが記憶を蘇らせる


 私達は毎日、少しも休むことなく呼吸をしている。酸素を取り入れては二酸化炭素を排出する。その酸素を取り入れる過程でさまざまなにおいを感じると思う。
 例えば、みなさん一度は友人や知り合いの家を訪れたことがあるでしょう。その際に、その人の使っている柔軟剤の香りが家中に広まり、玄関の扉を開けた瞬間に前方から風が吹くようにその香りが押し寄せる。その香りは家でなくてもその人のそばにいたり、すれ違うだけでも香ってくる。何度も同じ香りを感じることで、同じ香りを嗅いだ瞬間にその人を思い出すようになる。
 私の場合、幼稚園で嗅いだにおいがいまだにずっと残っている。でもそれが何のにおいであったかは定かではない。しかし、日常でその時と同じにおいを感じた瞬間に、幼稚園での思い出が蘇る。幼稚園だけではなく、給食のにおい、部活の剣道場のにおい…。そのにおいの数ははかり知れない。それらのにおいは良くも悪くも記憶を蘇らせる。あの時は楽しかったな、あの時は苦しかったな、あの友達は元気かな、と。季節に関しても同じことが言える。様々なお花のにおいを感じたり雨のにおいを感じたりすることで、季節の訪れを感じる。目に見えないものも嗅覚は感じることが出来るのだ。
 ただ、一度しか嗅いでいないにおいでは、なかなか記憶は蘇らない。繰り返し感じているからこそ、強い記憶が蘇るのだ。においは記憶ではない。嗅覚だ。その嗅覚が記憶を蘇らせる。
 私は嗅覚は思い出にも繋がっていると考える。普段意識しない嗅覚だが、その時その時のにおいを大切にしていきたい。


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