【読書感想】孔丘
イエス・キリストを主人公にした映画はいくつもありますが、孔子を主人公にした映画や小説は、少ないと思います。そう考えると、孔子はイエス・キリスト以上に神格化された人物かも知れません。
この小説は孔子を、思うように出世できない悩みや嫉妬をかかえ、妻や息子との関係に苦しむ一人の人間として描いています。孔子をあえて孔丘と呼び、タイトルにもすえていることから著者の意図が伝わってきます。
あらためて思うのは中国の歴史の悠久さで、我々から見たら孔子は何千年も前の人ですが、その孔子から見ても、殷や周公旦の時代ははるか昔のことだというので、私の想像力ではついていけません。
長い年月の中で忘れられようとしている、周の政治の在り方を学ぼうと奮闘する様子や、混乱する魯の政治に翻弄され、国を離れて諸国を放浪する孔子の生涯が時系列的に把握できます。
ところどころに孔子の名言もちりばめれているところも楽しめるポイントです。