『原神』はオタク文化の王道進化? オタク的な想像力に満ちたオープンワールドゲームの魅力
『原神』おもしろいですね。
特に、去年秋ごろに実装されたスメール編がとにかくよくて、「何がこんなにおもしろいんだろうか?」と色々と考えたのでつらつらと書きます。
まず結論ですが、
「原神」は、アニメやゲームが積み重ねてきたオタク的な物語・世界を、更新性のあるシームレスな3D空間(オープンワールド)に出現させて、かつ、それをしっかりとオタクにブッ刺さるクオリティで仕上げている”オタク的な何か”で、だからこそ、オタク文化において、この新しい”オタク的な何か”がどこにたどり着くのか?というのがおもしろいです。
そして、オタクカルチャーがアニメからソシャゲを経て、その物語構造が、主人公を中心とした物語(アニメ)から主人公の周辺のキャラクターにスポットをあてる物語(ソシャゲ)に変化する中で、"世界(主人公の周辺)をシームレスな3D空間に描こうと志向するオープンワールド"というスタイルがオタク的な物語の発展系としてむちゃくちゃ噛み合ってる。
っていう話をこれからします。
①:オタクカルチャー × オープンワールドゲーム
『原神』は、オープンワールドゲームです。
(オープンワールドの定義は色々ありますが)
広大でシームレスな3D空間に『原神』の世界が広がっています。
以下、ゲーム内で私が撮影した『原神』の景色たち。
そして、“ガチャ”やスタミナ的な要素があり、いわゆるソシャゲでもあります。
オープンワールドゲーム × ソシャゲ です。
また、『原神』のストーリーは、「それオタクが好きなやつだあああああ!!!!うおおおお!!!!!!!」ってなる展開や設定が多く、これまでのアニメや漫画などのオタクカルチャーが積み重ねてきた物語のコードを受け継いでいる印象です。
ほぼ全編3D映像で展開され、アニメルックな3Dモデルなこともあり、アニメを観ているような感覚もあります。
オープンワールドゲーム × ソシャゲ × アニメ
= オープンワールドゲーム × オタクカルチャー
ってことです。
※ミホヨさん、エヴァとか日本のアニメが好きみたいなので、そういった前提も含めて
オタクカルチャーは、"アニメ"によってオタク的なキャラクターデザインや設定、テンションが広く親しまれるようになり、"ソシャゲ"の登場によってさらにそのオタク的なモノが広まったという認識です。
そういった変遷がある中で、『原神』は、壮大で王道なオタク的冒険ファンタジーを、何かの擬人化とかでもなく、オリジナルな物語・世界観によって描くことに挑戦しています。
もう少し細かい話をすると、
『原神』は、テイワット大陸を舞台として、プレイヤーが“旅人”という肩書きで、7つの国を巡る物語です。
7つの国それぞれにコンセプトがあり、風土があり、文化があり、神がいて、異なる事情や状況があって、国ごとにアニメワンシーズンぐらいのボリューム感で物語が展開されます。
もっというと、七国を巡る物語とは別軸の「天理」や「カーンルイア」など、テイワット大陸の成り立ちや主人公の存在に大きく関わり、おそらく物語の最終盤で謎が解き明かされるであろう物語も少しずつ進行しています(別軸というか、七国で起こる様々な事件は「天理」や「カーンルイア」を起因として起こっているけど)。
②アップデートで世界が広がる
そして、新マップがアップデートによって追加されるのも魅力のひとつです。
オープンワールドゲームの金字塔『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の魅力、あるいは、ブレワイを遊んで個人的に「オープンワールドよいな」と思った点として、まだ見ぬ未踏のマップを開放し、探索する楽しさでした。
「このマップ・エリアには何があるんだろう?」というワクワク感。この国では、どんなキャラクターがいて、どんな文化で、どんな困難があって、どんな神獣がいるんだろう?という期待感。そして、そのマップを隅々まで自由気ままに探索できるおもしろさ。
その点において、『原神』も、ゲーム内に巨大な3D空間があって、さらに地続きにマップ(国)が追加されるというシステムで、それがむちゃくちゃいいんですよ。
※ブレワイをひとしきりプレイしてマップの端っこに辿り着いて「(ゲームの実装上難しいけど)この先にさらに世界が広がったりしないかな…」と思ったりした
マップの隅々まで探索できるオープンワールドだからこそ、シームレスだからこそ、地続きにまだ見ぬ世界が広がっているという実感がある。
これがむちゃくちゃワクワクするんですよ。
③『原神』はキャラゲーとしての到達点
そして、マップを開放し、フィールドを探索し、物語を進めれば進めるほど、だんだんと「いまテイワット大陸でなにが起こっているのか?」「テイワット大陸がこれまでどんな歴史を歩んできたのか?」という“テイワット大陸の全貌”がわかるようになっていきます。
そしてそして、先ほどもちらっと話したように、主人公キャラは“旅人”という肩書きで、テイワット大陸を旅するという設定なので、「未知なる大陸を知っていく」という感覚・視点が主人公キャラクターとプレイヤーとでリンクします。
この感覚が、更新性のある“オープンワールド”というシステムとも合致してて、物語体験・ゲーム体験としてもむちゃくちゃ噛み合ってて素晴らしいんです。
それは、まだ実装されていない国々という未知への期待感。ゲーム内でちょこちょこ小出しに情報解禁されてたりもするので、より想像が膨らむ。
もっというと、その大陸の歴史は、「天理」や「カーンルイア」といった謎のキーワード、七国の神たちとも大きく関わっています。メインストリートを通じて知ることもあれば、サブストーリーやマップ内の遺跡とかにもその数千年の歴史の残滓が残っています。
そして、『原神』のキャラクターには、数千年生きているキャラクターもいるので、テイワットの歴史がそのままキャラの物語・魅力にもつながります。
これがめちゃくちゃ素晴らしくてなあ…
オープンワールドだからこそフィールドをのんびりと探索することが楽しいのだけど、それがそのまま「テイワット大陸という世界を知る」ことに繋がり、そしてキャラクターの魅力に触れることにつながる。
そして、ここからが本題ですが、ソシャゲという媒体の性質がその体験をより強固なものにします。
ソシャゲというシステムは、その性質上、"世界を描写すること"に適していると考えています。
例えば、アニメは主人公を中心として物語が展開し、主人公たちを魅力的に描くことが大事ですが、ソシャゲはたくさんのキャラクターを登場させる必要があるため(ガチャでキャラクターを継続的に追加したいので)、主人公とその仲間たち以外も魅力的に描くことが大事になってくる。
ソシャゲは主人公以外の"周辺"を描写する必要性がある。つまり、主人公以外のキャラクターたちが生活する"世界"(設定・物語)を魅力的に描写するということ。ソシャゲにおいて、主人公(プレイヤー)は、あくまでも外側、観測者的な立ち位置です。
例えば、アニメ『無職転生』では、明らかにその世界観にこだわってそうな街や国を旅しますが、あくまでも物語の"背景"として描かれます。
それは良し悪しではなく、アニメという媒体の性質です。(『無職転生』は、異世界で出会う家族的な存在との交流によって、主人公がトラウマの克服、成長する物語です=主人公たちを中心にした物語)
あるいは、ソシャゲの『ブルーアーカイブ』は、キヴォトスという巨大な学園都市(世界)に、いくつかの学園(地域)があって、そこにいろんなキャラクターたちが存在しているという、まさに"世界"を描写する構造です。
(最終編の「あまねく奇跡の始発点」は、各学園のキャラクターたちが登場し、まさに世界を巻き込んだスケールの大きいストーリーでむちゃくちゃよかったです)
ただ、今までのソシャゲは、キャラクター立ち絵や背景イラスト、テキストをメインとして、その世界観を表現していました。
そういったソシャゲの流れがあった中で、『原神』はオープンワールドな3D空間の中にテイワット大陸という"世界"を描写しようとしています。
世界を描くことにシステム上適しているソシャゲと、世界を描写することが大切なオープンワールドゲームを掛け合わせたゲーム『原神』。
オープンワールドゲームはまさにその世界そのものを巨大な3D空間に作り上げています。
例えば、知恵の国・スメールは、雨林と砂漠をモチーフとして、オリジナルでフィクショナルな木々や草花、建築物、地形をデザインしている。それは各国とも同様でそれぞれで異なるモチーフを採用しながら、シームレスに繋がり合う国々を3D空間に生み出しています。
“設定厨”というオタク用語がありますが、『原神』はオタク的な想像力によって生み出されたそれらの設定が3D空間に描写され、その積み重ねが“世界”を構築し、あまつさえ隅々まで冒険することができる。
ともすればアニメや漫画、小説においてはあくまでも“設定”であり、“背景”として描かれていた想像力の中に入って冒険できるという体験。
『原神』は、多種多様で魅力的なキャラクターが登場しますが、根本的にはテイワット大陸そのものが主人公なんだろうと思えるほどに、テイワットという"世界"に魅力が溢れています(そして、その世界を知れば知るほどキャラクターたちも好きになって、ガチャ回したくなるっていう素晴らしい連鎖ですね!!!!!)
『原神』の主人公キャラ(プレイヤー)が「旅人」という肩書きを背負ってることからも、テイワット大陸における第三者として旅をして、その世界をだんだんと知っていく構造になっています。
何回もいうけど、オタク的な想像力をもって世界を細部まで描いてやろうという欲求と、オープンワールドゲームは相性がよすぎる。
例えば、同じく2020年に登場したオープンワールドゲームの『サイバーパンク2077』もまさにオタク的な想像力によって生み出された世界を細部まで描いてやろうという欲求によるものでした。
個人的には、2022年に公開された『サイバーパンク エッジランナーズ』が最高のアニメで、同じく感動した『原神』のスメール編も2022年で、それぞれの製作陣は日本のオタクカルチャーに影響を受けていると語ってくれていたりと、共時性があっておもしろいなーと思っています。
とりあえず、スメール編はほんとによかったです…いま話してきたような「世界を知ること」と、主人公があくまでも外側の観測者(旅人)であること、そして知恵の国というコンセプトがまさにストーリーとして落とし込まれ、それらが上手くかみ合った素敵な物語でした。
④:元素反応というバトルシステム
『原神』のバトルシステムである「元素反応」がおもしろいので、そこも触れたかったけど、力尽きてしまった…のでものすごく簡単に…
「炎」「水」「雷」「氷」「風」「岩」「草」という7つの元素があり、それらの組み合わせ(元素反応)で、火力アップやいろんな追加効果が付与されるというシステム。キャラクター1人に1元素あって、4人編成のチームでキャラチェンして元素反応を起こす感じ。
武器による通常攻撃に加えて、元素スキルと元素爆発でとりあえず別元素を重ねればいい感じになんか高火力と派手なエフェクトが出るのでテキトーに殴っても楽しいし、キャラチェンしても追撃し続ける元素スキルや場に残り続ける元素爆発もあったりして、元素反応を二重三重にも起こしたりとか、自分でどういうキャラクターの組み合わせがいいか考えるのも楽しい。
この「キャラチェンしても追撃し続ける・場に残り続ける」というアイデアがほんと素晴らしいのですよ…
『原神』は、アタッカーよりバッファーが大事と言われるくらいこの元素反応による追加ダメージ・効果が重要なので、推しキャラを生かす編成とかもできて、キャラゲーとしてもむちゃくちゃ楽しいし、システムとしてもよくできてる。
〇元素反応がない場合(炎元素による単一攻撃)
〇元素反応ありの場合(雷元素追撃+草元素追撃+設置型の水元素攻撃+炎元素攻撃)
(楽しいーーー!!!!ってなります)
どんなに物語やオープンワールドゲーム体験がよくてもこのバトルシステムがなかったら、ふつうのアクションバトルゲーで飽きてたかもわからん。
⑤:アップデート頻度とかクオリティがすごい
6週間にいちどやってくるアップデートが定期的なコミュニティのお祭りみたいな感じで楽しいんですよね(原神のゲーム実況者が動画出したり)。あと、PVとかの公式動画がめちゃくちゃクオリティ高い。
以下のキャラクター実戦紹介動画は同時期に公開されましたが、それぞれ違う方向性でクオリティが高くて、毎回毎回すごく楽しみになる。
コミカルなテンポの音楽とダンスモーションの音ハメ具合がすごくいいしヒラヒラとするお洋服の3Dモデルが素晴らしすぎるし、
昔話のような灰色がかった色調から映像のテンションがあがる瞬間に色を取り戻す演出やエフェクトにこだわってカメラワークもガンガン動きのある映像がカッコいいし、
かと思えばスメール男子4人による、いわゆる関係性オタクが狂喜乱舞するような映像を出してきたりとか、ほんと飽きないしクオリティ高いし最高。
(おそらく)年にいちど実装される"国"追加という大型アップデートでがっつりメインストーリーを楽しみつつ、1,2ヶ月ごとのアップデートも瞬間火力的な盛り上がりに乗っかりつつ、ゲーム内の期間イベントはゆるくやったりやらなかったりで軽く触る感じでも全然楽しめるのがよいです。
この楽しいサイクルがあと少なくとも3,4年は続くと思うので人生楽しいですね。
そろそろまとめ的な感じですが、
「原神」は、アニメやゲームが積み重ねてきたオタク的なモノの2020年代における到達点のひとつであり、他にはない唯一無二の作品になっていて、シームレスな3D空間でオタク的な物語・世界を冒険できるという体験も素晴らしく、かつ、それをしっかりとオタクにブッ刺さるクオリティで仕上げているバケモノみたいなコンテンツです。
なんていうか、『原神』は、むちゃくちゃクオリティの高いソシャゲではなく、むちゃくちゃすごい"オタク的な何か"なんですよ。
『原神』を運営するmiHoYoが展開する崩壊シリーズともストーリー・世界観的に繋がりがあるっていう説も含め、オタクが一般化した現代において、miHoYoワールド(むちゃくちゃすごい"オタク的な何か")が今後どのような発展・物語にたどり着くのかむちゃくちゃ楽しみです。