"3D"なクリエイターの時代はくるか? メタバースがもたらす文化的な可能性について
渋谷MODIで開催された「昭和百年展」が素晴らしく、最近色々と考えていたこととリンクすることもあり、今回はその話をします。
参加クリエイターが発表された時点で、「あ、これで1本文章作れるなあ」なんて思ったりもしたんですが、実際に観に行ってみて、展示空間も素敵でほんとによかったです。
ダラダラ話してもなんにもならんので、いきなり本題に入りますが、最近の個人的な関心事として、「ゲームやバーチャルがメジャーになることで、"3D"なクリエイターやその活躍の場が増えるのかどうか(あるいは増えてほしいという願望込み)」ということ。
バーチャル云々が一般化することはもはや大前提として、その上で次にどんな新しい作品や表現、カルチャーやクリエイターが生まれてくるのか?
あるいは、"3D"なクリエイターがメジャーな存在になる時代がくるのかどうか。
特に、バーチャルは突き詰めれば"3D"な文化圏なわけで、そこが主戦場になればなるほど、"3D"な技術やアイデア、表現を得意とするクリエイターが当然出てくるわけで、それはいろんなジャンルに波及しうる。
デジタルアーティスト・3DCGクリエイター、バーチャルクリエイター...etc
名称はなんだっていいような気もしますが、"そういう文脈"のクリエイターたちが大暴れするような世界線。
イメージとしては、現在のイラストレーターコミュニティのように、トップ層は多大な影響力があり、次から次へと新世代の才能も登場し、ゲームや音楽、YouTubeでの活躍などイラストという枠をも越えて新しい可能性を切り拓いているようなそんな文化的に成熟している状態。
そういった世界線に"3D"なクリエイターたちのコミュニティが到達できるのかどうか。
その可能性を提示するという意味において、昭和百年展の参加クリエイターの面々は、いろんな"3D"な文脈の方々が勢揃いし、ディスプレイを前提とした展示方法も含めて、非常に素晴らしかったです。
「作品をリアルで鑑賞できる展示会が開催される」もひとつの試金石で、そういう意味でも、デジタルクリエイターによる展示会がいまこのタイミングで開催された意義は非常に大きい。
以下、参加クリエイターさん(人数多いので一部)の作品に関するツイートを(勝手に)紹介しながら、"3D"という手法の可能性を感じる領域について、だらだらとコメントをする。
・3DCGによるビジュアルアート・映像表現
高橋悠さんの作品を初めて拝見したときに感じたことですが、3DCGによるゲーム体験をこれほどまでに多くの人が経験している現代において、たとえ3DCGによるワンカットのシーンであっても、これまでのゲーム体験に紐づいてより強く物語性を感じる時代になるとおもしろいなと思ってます。
イラストカルチャーがここまで日本において影響力が大きいのは、二次元的なキャラクターによるアニメやゲームがそもそも受け入れられていた土壌があるからだとも思うので。
3DCGによるMusicVideo
3DCGによるMVはカッコいいですね...3DCGによる映像表現は昔からありますが、カルチャーやコミュニティとしてはまだまだ発展する余地がむちゃくちゃあると思ってます。それこそアニメMVの盛り上がりもそうですが、YouTubeがメジャーになることで、MVという媒体がクリエイターたちの新しい遊び場になっている時代性も含めて(以下、「昭和百年展」とは関係ないけど関連作品として好きなやつを)。
Movie:reiya https://twitter.com/_eiya
Art:Rolua https://twitter.com/Rolua_N
Cover Art:Kisuke Ohta https://twitter.com/741ksk
Director: 0b4k3
Motion graphics: yonayona graphics
Graphics Composite,Edit: Shigu
Concept Art: Rintaro
Technical Artist: tanitta
Visual Artist, Engineer: fotfla
Director:人造人間ジンゾウ
feat:市松寿ゞ謡
3DCGによるアニメーション
前述したアニメMVとも関連することではありますが、アニメーション表現としても3DCGがその方法のひとつとして活用され始めています。その中で、個人ベースで活動をはじめ、Blenderでアニメ作品を制作し、TikTokでその作品・スタイルが人気を獲得・100万フォロワーにも達している安田現象さんはまさに2020年代を代表するアニメーターですね。カッコいい。
以下、昭和百年展とは関係ないけど、3DCGによるアニメ制作の事例として。
3DCGとesports
ゲームと3DCGの関係性を考えるときに、個人的にむちゃくちゃ期待しているのがesportsシーンが3DCGクリエイターたちの遊び場になること。いわゆるKILL MONTAGEと呼ばれるような映像形式は、3DCGと相性がむちゃくちゃいいです。
昭和百年展に参加したTakuan Paradiseさんも元々フォートナイトのKILL MONTAGEコミュニティで活躍されていた方で、以下とか代表作です。
(現段階で、日本におけるフォートナイトのKILL MONTAGEは、ragisさんとTakuan Paradiseさんによる上記の作品が最高峰だと思ってる)
フォートナイトはそのゲームの性質上、ゲーム内で撮影ができるため、キャラクターモデリングができなくてもオリジナルでこだわった映像表現ができますが(だからこそ"映像制作ツールとして"革命的でもあった)、KILL MONTAGEという映像形式を追求すると、おのずと3DCGに興味をもつようになるのがむちゃくちゃいいなと思ってます。
例えば、Apex Legendsの公式映像をてがけたNatukiさんは、日本におけるApex LegendsのKILL MONTAGEとしては一番素晴らしい作品を生み出している方ですが、最初は特に3DCG的な表現は使っていなかったけど、勉強してだんだんとそういった表現が増えてきててそれがまたもうむちゃくちゃカッコよくて最高なんですよ。
日本国内のesportsチームで有名どころなCRやZETAも要所要所で3DCGな映像を公開していて、むちゃくちゃカッコいいんすよね...
Takuan ParadiseさんもフォートナイトのKILL MONTAGE界隈での活動をさらに発展させて、いまではゴリゴリの3DCGをつくるクリエイターになっていていいですね...
3DCGとVRChat
そして、最後。いわずもがな、バーチャルカルチャーはまさに“3D”なクリエイターたちの遊び場であり、主戦場のひとつ。バーチャルカルチャーと3DCGはスキルや扱うツールがほぼほぼ似ていて応用可能です。
特に、最近のVRChatカルチャーは、バーチャル空間の創造をもはや大前提として、さらにそこで何かやるか?というステージに突入しつつあるように思うので、そこも楽しみです。
例えば、バーチャルクラブとかバーチャルフォトグラファーとか、バーチャルなアバターやワールドをつくることを土台として、また別の表現方法・コミュニティが生まれていて素晴らしいです。
その中で個人的に好きなクリエイターさんに、RokuMoriさんという方がいて、映像クリエイターながらも、VRChatでE.C.H.Oというバーチャルクラブを作って運営しています(そんなバックボーンがありつつ、昭和百年展にも参加してるのはむちゃくちゃいいですね)
アバターがカッコよくて素晴らしいのですよ...
例えば、個々でそれぞれの領域で活躍しつつも、“3D”なクリエイターたちの新しいコミュニティの場、遊び場としてバーチャル空間があるような世界線になったらめちゃくちゃ楽しそう。
それはバーチャルがもはや大前提となって、その上でどんなクリエイターたちが集まってくるかに等しく、いまのVRCの流れの延長上にあるように思う。
以上です。
ゲームやバーチャルがメジャーになることで、「バーチャル的なモノ、“3D”な作品表現がより発展するのではないか?」「ゲームやバーチャルの周辺カルチャーにもその影響が及ぶのではないか?」という期待。
例えば、(上記では特に触れなかったですが)バーチャル空間におけるアバターという概念のその延長上として、リアル世界でのフィギュア文化ともリンクすると思っている(そういう意味で、NFTもひとつの新しい“3D”なジャンルになりえる可能性を秘めていると思ってます)。
ゲームの楽しみ方の変化やバーチャルな体験のその先にあるモノとして、どんなカルチャー・コミュニティが生まれるのか?
blenderというツールがじわじわと浸透している状況も含めて、そうなったらめちゃくちゃ楽しそうっていう程度の期待感ですが、じわじわとその可能性の萌芽が生まれ始めているような気がしています。