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CD125初期型がやってきた(その2)

 前回、CD125初期型を勢いで手に入れたところまで書きました。このままでは全く実用にならないので、まずはエンジンがかかるところまでを目指すことにします。そのためには、良い混合気、良い圧縮、良い火花があればいいということは単車乗りなら誰でも知っていることでしょう。最初に手掛けるのは電装系にしました。配線をいじられていたあとがありますので、まずは原形に戻すのが常道です。回路図はサービスマニュアルに記載されていますので、配線の色も含めてできるだけもとに戻してみました。次にバッテリーです。まずは6N12A-2Dという型式のものを手に入れました。しかし寸法が大きすぎて所定の場所に収まりません。

6N12A-2Dは大きすぎる

パーツリストは海外のCMSというサイトでも閲覧することができます。これによると、車台番号CD125-1012628から1086252まではB41-6、1086253からB54-6という形式のバッテリーであることがわかります。そして、6N12A-2DはB54-6に相当するものなので、それ以前に製造されたものだと寸法が合わないということになります。B41-6というバッテリーの仕様は調べてもわかりませんでしたし、互換品は見つかりませんでした。B49-6に相当する6N11A-3Aなら手に入りそうですが、おそらく最初の数字(41, 49, 54)で寸法が決まっているので、まだ大きすぎる可能性が残っています。
 そこで発想を変えて、当時の開放型バッテリーから現代的な密閉式バッテリーが使えないか検討することにしました。開放型バッテリーは過充電になったときに発生する気体が外に逃げ出す構造になっています。これは水の電気分解が生じるためで、バッテリーの液面を定期的に点検して蒸留水を補充する必要がありました。この気体を外部に放出せず、もう一度水に戻す機構が備わっているのが密閉型バッテリーです。これを使うためには充電条件を管理して過充電を防ぐ必要があります。当然、この時代の単車のように発電機からセレン整流器で直流にしてバッテリーに接続しているだけの回路では仕様を満たすことができません。
 調べてみると、今のバイクは整流器に加えてレギュレーターという回路が備わっていて、過充電を防ぐようになっています。検索してみると、これを自作した人もいるようで、たとえばこちらの記事がその例です。整流ブリッジ回路の一部をSCRやMOS-FETにして、必要に応じて開放にしてしまうというのが基本的な動作のようです。他にも発電機からの電流を短絡させてしまう方式があるようです。私も前者の方法で試作してはみましたが、制御回路を動作させるために必要な電源が得られないという、まるで原子力発電所のような欠点があることがわかりました。制御回路をバッテリーから電圧で動かすのは気分的にあまり良いものではありません。最悪バッテリーがなくても走ってくれるような設計にしたいものです。
 結果として、整流用ブリッジは常に動作させて、そこからバッテリーへの回路をMOS-FETでON/OFFする回路になりました。

回路図

ON/OFFはQ2のMOS-FETで行います。これを制御するために、U4のTL431Aで作った基準電圧と回路電圧をU3のコンパレーターで比較します。バッテリー端子に接続していないのは、メインスイッチを切ったときにバッテリーから電流が流れないためです。比較した結果はU2の74HC74のリセット端子に入力されます。このICはDフリップフロップで、発電機からの交流信号を整形してクロック端子に入力し、立ち上がりエッジでD端子の状態がQ出力に出てきます。D端子はHに固定されていますので、電圧が低い場合にはQもHになり、これによってMOS-FETがONになります。一方、電圧が高くなるとリセットがかかり、QがLになってMOS-FETがOFFになります。
 オシロの波形で、上記の説明を確認してみます。

電圧が低い場合

上の波形はFETの出力で、下の波形は/Q端子(Qの反転)です。電圧が低くてQがH(/QがL)であることがわかります。このときMOS-FETはONになっていますのでブリッジダイオードで全波整流された電圧が出力されています。

電圧が高い場合

電圧が高くなると比較器の出力によってRESETがかかります。このとき、QはL(/QがH)になり、それに応じてMOS-FETがOFFになります。なお、この実験では、負荷として8Ωの抵抗を使っていますので1A近い電流が流れています。回路の入力電圧はスライダックによって変化させました。
 この結果を見る限り、密閉型バッテリーの充電条件を満たしそうです。ただ、セルモーターを回すのは難しそうなので、仮にうまく使えたとしてもキックで始動するのがよさそうです。とにかくエンジンがかかるとこまで進めないと話にならないので、バッテリー室に入る大きさのものを手に入れて、実際にこの回路が動作するのかをテストしなければなりません。
 
 

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