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TS-820V(S改)のレストア (その2)

 これまで、Kenwood (TRIO)の無線機を数台ほどレストアしてきました。試行錯誤と書籍の情報、そしてOM諸氏からのアドバイスをいただくことができて、これまでなんとか動かすところまでは成功しています。この程度の経験で何かを語るというのは少々おこがましいのですが、備忘録替わりに作業の概要を書いていきます。

AF-AVR基板の調整

TS-820のAF-AVR基板

 まずは、回路を動作させるための電圧を規定値に設定する必要があります。AF-AVR基板のVR4を調整して9V端子に9.0Vが出るようにします。次にVR1を調整してRF1端子に3.3Vが出るようにします。今どきのデジタルテスターを使えば入力抵抗が高いので心配ありませんが、普及品のアナログテスターだと性能的に厳しいかもしれません。
 また、この半固定抵抗が接触不良になっていることがあります。今回レストアしたTS-820も動作がときどき不安定になるので調べてみたら、この半固定抵抗に問題がありました。上の画像では、多回転トリムポットに交換してあります。調整のしやすさを考えると、はじめから交換しておいた方がいいかもしれません。

2SC460(B)の交換

交換した部品類(これ以外にもあります)

 この時代の無線機に多用されている2SC460(B)というトランジスタは、どういう理由か劣化が早く(銀のマイグレーションと説明している記事が多い)、ものによってはほとんど増幅機能を失っているものすらあります。なので基本的には全数交換をするつもりで考えなければなりません。
 代替品を探すときのポイントは遮断周波数(fT=230MHz typ.)と直流電流増幅率(hFE=60 to 120)です。書籍などでは2SC1675を使っている方が多いようですが、このトランジスタも入手が面倒です。私は、以前に秋月電子で購入した2SC1740Sが手頃なのでこれを代替品として使っていました。しかし、今回のTS-820の場合にはこのトランジスタだとうまく動作してくれない回路がありました。ひとつはPLL基板の水晶発振回路(Q6-Q10)で、3rdオーバートーンで発振するはずが基本波の周波数で発振してしまうという現象です。ここには2SC1923-Yを使ってみました。もう一つはIF基板のキャリア増幅回路(Q17)で、この回路は固定バイアスに電流帰還をかけたものになっているためにトランジスタのhFEの違いが動作点にそのまま表れてしまいます。いろいろトランジスタを交換して試してみたものの、結局は取り外した2SC460(B)を選別して劣化が比較的ましなものを取り付けました。ここは宿題にして次の機会に適当なトランジスタを探すことにします。

基本調整と試運転(1回目)

 ここまではレストアのときに必ず行わなければならない準備作業です。部品交換のあと、他の不具合を探すために動かしてみることにします。基本的な調整方法は取扱説明書に記載されています。当時の無線機は、ユーザーが定期的に調整することを前提に作られていたことがわかります。さて、手順通りに調整をしていくと、とりあえず出力が出てくるようになりました。しかし、全バンドで出力が出るわけではなく、また、VFOのつまみを回していくと、表示される周波数が突然不安定になり、同じバンド内でも動作したりしなかったりという問題が発生しました。複合的に原因がありそうで、問題の切り分けをしないとこの先には進めないという状況に陥ってしまったのです。(続く)


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