死んだ兄に
兄に会いたいと想う。
死んでしまった兄がいないことは
さっと眼の前が暗くなるような感覚に近い。
絶望にぐわっと一瞬にして包まれるような感覚。
お酒を飲んで帰る夜になると、必ずこれだ。
兄が生きていた時は、必ずと言っていいほど
帰りの夜道、駅から家までの間に、
兄に電話をかけた。
兄はいつも起きていて、
誰かとお酒を飲んでるからと面倒くさそうに言うか、
家に帰っていて子どもが起きてしまうからと小声で何の用かと言った。
必ず電話に出た。
兄の声を聞けば満足だった。
妹が用がないのに電話して悪いのか、
今日はこんな事があって腹がたった、
こんな嬉しいことがあった、
母さんにこんなことをされた、
兄に、私は、たくさん話があった。
そして特に用もなかった。
いつも電話に出てくれたのに。
いつでも話ができたのに。
亡くなる2日前にもあんなに長いこと話したのに。
兄に電話することはもうできない。
兄と話がしたいのに
中々夢にも出てこない。
兄に会いたい。
私の大切な兄はもうこの世にはいない。
あと50年は一緒にいられたのに。
40年だったかもしれないけれど、
0年よりは余程ましだった。
兄のあの声が
兄のあの優しい声が
兄の盃を持つあの手が
私を心配してるのに必死に隠すような
あの斜めに私を見る目が
私は恋してくて恋してくて悲しい。
電車のホームでボロボロ泣く。
兄に会いたくて、私は泣く。
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