コロナ禍の高校生(8)
日常の高校生活へ
おはようございます!
毎週ご高覧いただきありがとうございます!
まず最初に
長時間労働を背景とする公立学校教員のなり手減少を受け、人材確保策を検討してきた中央教育審議会 質の高い教師の確保特別部会(第13回)が、5月13日、具体案を盛り込んだ「審議まとめ」を文科相に手交しました
残業代支給には目を背け、「教職調整額」を現在の「基本給の4%」から「10%以上」に増やすことに論点をすり替え
「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)(案)【概要】」で示された論点整理からなぜこういう方向性にしかならなかったのか意味不明です
教員の働き方改革や給与制度改革をめぐっては、以前から給特法を廃止し、残業代を支給するよう求める声が根強くありました
「令和の日本型学校教育」を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)(案)」 「第4章 学校の指導・運営体制の充実 1.教職員定数の改善と教職員配置の在り方等」の論点整理から導き出されるべきは「教職員定数(学校事務職も疲弊しています)の改善」=定数増となるべきです
校長経験者の立場で更にいうと、教育委員会指導主事を増やす取組みを国費で行うべきです
指導主事の先生方も少人数で多様な教育政策を遂行しながらも、現場の校長・准校長を支えてくれています。また、議会開催中の指導主事の事務負担も改善すべき
高等学校の教員定数は「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律とその施行令」、これを標準とする条例で定められています
令和3年3月31日に公布された学校教育法施行規則等の一部を改正する省令等により、高等学校等の特色化・魅力化に向けて、「普通教育を主とする学科」として「学際領域に関する学科」や「地域社会に関する学科」等の普通科以外の学科を令和4年4月より設置することが可能となりました
少しは前進ですが、あくまでも「加配定数」措置。
「教員給与特措法(給特法)」の改正と同時に、「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律とその施行令」の改正にも踏み出すべきです
「教員の働き方改革」は待ったなし、です
教職員定数が増えれば、授業時数や校務分掌校務が減じられますので、教職員にゆとりができ、生徒と向き合える時間も教材研究の時間も確保され、定時退勤できる教職員も増加することが容易に想像できます
旧特法廃止はもちろんですが、「教員の働き方改革」を本気で取組むのなら「教職員定数増」しかありません
校長も含めて現場の先生方の一番の願いは「生徒と向き合える時間」の確保です
現状、校務多用で生徒と向き合える時間の充分な確保は非常に困難。校務を時間外にまわして生徒と向き合う時間を何とか確保できています
勤務時間内にすべてを完結できる制度構築が、日本の教育環境が崩壊する危険水域にあるという喫緊の課題として国に求められます
私は、今直ぐ実現可能な「教員の働き方改革」として、学校全体(全教科科目、教科外教育活動の総て)で、「グラデーションポリシー」(箕高の取組みでいう「ディプロマポリシー」)の共有と実践を推進し、新学習指導要領・観点別学習状況の評価の理念に基づく適正な学習評価・授業改善の取組みにより、定期考査の作問・採点業務、及び、昔ながらの平常点作業を削減し、先生方の働き方改革に結び付けていくことを提起してきました
ご参照いただき何らかの参考にしていただければ幸甚です
拙稿「教員の働き方改革への提言(1)~(6)」
閑話休題
「コロナ禍の高校生」に話を戻します
大阪府では、令和4年1⽉27⽇以降、まん延防⽌等重点措置期間において府⽴学校における今後の教育活動について1月26日付け「府立学校における今後の教育活動等について」において、
(3) 臨時休業の取扱いについて
(ア) リスト提出後、教育庁との協議において、次の場合に臨時休業を実施する。
直近3日間の陽性者及び濃厚接触者が学級において複数(15%以上)確認された場合は、原則3日間の学級閉鎖とする。
複数の学級を閉鎖するなど、学年内で感染が広がっている可能性が高い場合は、原則3日間の学年閉鎖とする。
複数の学年を閉鎖することに加えて、閉鎖していない学年に感染者が存在するなど、学校内で感染が広がっている可能性が高い場合は、原則3日間の学校全体の臨時休業とする。
(注) 学年閉鎖については、それ以前の学級閉鎖に加えて行う場合がある。学校全体の臨時休業についても同様。
と定められました
通知を受けて箕高での陽性生徒・教職員が確認された場合の対応フロー(1月27日~)は、
〇 陽性者に「最終登校日」「(症状があれば)発症日」「受検日」「結果判明日」「居住地」を確認。
〇 発症日(無症状の場合は受検日)から遡って2日前以降に、大阪府および保健所が示す基準「密室で1時間以上の接触」「ノーマスクで15分以上の会話」があったかを確認。
<基準に該当ありの場合>
〇 濃厚接触の可能性があると判断し、該当者には最終接触の翌日起算で10日間の自宅待機・健康観察を求める。
※ 府の通知では「PCR受検について保健所と調整」とされているが、所轄保健所からは「PCR受検は特に求めない」旨連絡を受けている。
※ 症状があれば医療機関受診を勧める。
<基準に該当なしの場合> …本校における運用
〇 発症日(無症状お場合は受検日)から遡って2日前以降に、食事や部活動など、ノーマスクで短時間の接触があったかを確認。
〇 ノーマスクで短時間の接触を確認した場合、陽性者の許可を得て該当者に連絡のうえ、個人情報保護に抵触しない範囲で(陽性者の名前を出さずに)、以下の内容について伝える。
※ 本校で陽性者が確認され、大阪府と保健所の基準では濃厚接触者等ではないとされたが、陽性者と短時間、ノーマスクで接触があったことを確認した。
※ 濃厚接触者等にはあたらないため登校に制限はないが、何らかの症状があれば、医療機関受診を勧める。
※ 無症状であっても、心配であれば、PCR検査を受けたり、自宅待機を選択したりすることは可能(出席停止扱い)。
※ あくまでも個人の判断によるので、特に問題なければ、通常どおり登校して差し支えない。
※ 症状の有無や、不安を感じる場合など、それぞれの状況によって判断を。
<保健所への連絡>
これまで
〇 学校が陽性者の行動歴・接触者リストを作成し、保健所に提出
〇 保健所が濃厚接触者等を特定のうえ、個別に連絡
これから … 大阪府の基準に基づいた所轄保健所の運用
〇 陽性連絡不要
〇 陽性者の行動歴・接触者リスト提出不要
〇 濃厚接触者等には学校から連絡のうえ、自宅待機・健康観察等を指示
以前の緊急事態宣言期間中と同様に、府立学校において罹患していることが確認された場合、校内の濃厚接触者の候補者リストを保健所等が示す基準をもとに作成するとともに保健所へ提出するよう、大阪府教育庁から通知
また、この度大阪府健康医療部から濃厚接触の判断や対応方法について公表され、濃厚接触者の特定の迅速化が図られることから、教育庁との協議に基づき、次の場合に臨時休業を実施することとなりました
直近3日間の陽性者及び濃厚接触者が学級において複数(15%程度)確認された場合は、原則3日間の学級閉鎖とする。
複数の学級を閉鎖するなど、学年内で感染が広がっている可能性が高い場合は、原則3日間の学年閉鎖とする。
複数の学年を閉鎖することに加えて、閉鎖していない学年に感染者が存在するなど、学校内で感染が広がっている可能性が高い場合は、原則3日間の学校全体の臨時休業とする。
※ 学校休業については、インフルエンザによる 学級閉鎖 ⇒ 学年閉鎖 ⇒ 臨時休業 と同様になりました
これで保健所・学校の業務負担はかなりの部分で解消されました
2⽉11⽇ 新規陽性者数は、15,291 名を記録し、第六波で最多となりました
3⽉4⽇ まん延防⽌等重点措置を3⽉21⽇まで延⻑することが決定されました
3⽉22⽇ まん延防⽌等重点措置が3⽉21⽇をもって終了するのを以て、府⽴学校における今後の教育活動について、3⽉22⽇以降、次のとおりとすることが決定されました
・分散登校や短縮授業は⾏わず、通常形態(1教室 40 ⼈まで)を継続・不安を感じて登校しない児童⽣徒等については、オンライン等を活⽤して⼗分な学習⽀援を実施・修学旅⾏等、宿泊や府県間の移動を伴う⾏事は感染防⽌対策を徹底したうえで実施
・学校⾏事(合格者説明会等)は、来場者(保護者等)も含めて感染防⽌対策を徹底したうえで実施
・部活動は感染防⽌対策を徹底したうえで実施
・部活動前後での⽣徒どうしによる飲⾷を控えるとともに、更⾐時に⾝体的距離を確保するよう指導
・同⼀部内で陽性者や濃厚接触者が複数(15%以上)確認された場合は、当該部活動を⼀時停⽌
7 ⽉26⽇ 新規陽性者数が、25,741 ⼈を記録。第七波で最多となりました
7月27日付け「府立学校における今後の教育活動等について」において
(2) 中学校及び高等学校について
上記校種においては、保健所等による学校における濃厚接触者の特定が実施されないこととなったため、教育活動上の接触による濃厚接触者の候補者の特定は不要
8月3日付け「新型コロナウイルスへの感染が確認された者及び濃厚接触者への対応等について(通知)」では、
濃厚接触者の待機期間の見直しについて
・ 濃厚接触者の待機期間が最終曝露日(感染者との最終接触等)から5日間(6日目解除)とされた。
・ 2日目及び3日目の抗原定性検査キットを用いた検査で陰性を確認した場合は3日目から解除が可能。
※これらのいずれの場合においても、一定の発症リスクが残存することから、7日間が経過するまでは、検温など自身による健康状態の確認や、ハイリスク者との接触やハイリスク施設への不要不急の訪問、感染リスクの高い場所の利用や会食等を避け、マスクを着用すること等の感染対策の徹底をお願いする。
こののち、第八波が猛威を奮いますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染症法の5類感染症に位置付けられる令和5年5⽉8⽇に向けて少しずつ日常を取り戻していきました
令和4年の夏、3⽉22⽇以降継続して「部活動は、十分な感染症対策を講じたうえで実施」でき、まだまだ制限はありますが、生徒たちは高校生活のかけがえのない日々を謳歌できるようになっていきます
コロナ禍、一斉休業・分散登校以降、大阪府教育委員会は、一貫して「分散登校や短縮授業は⾏わず、通常形態(1教室 40 ⼈まで)を継続」としてくれました。現場を預かる校長として、高く評価するとともに感謝します
コロナ禍、私が責任(問題が生起すれば辞職も辞さない)を以て、先生方に呼びかけたことがありました
文科省及び大阪府教育委員会寄りの通知に「長時間、密集又は近距離で対面形式となる活動等は行わない」という規定が長らくありました
先生方から「グループ学習、ペアワーク」をしてもよいのか、授業再開時に質問がよくありました
私は、「ディプロマポリシーの共有」を推進し、実践していくための「箕高授業スタイル」を、先生方に推奨してきました
(「教員の働き方改革と一体にした授業改善をめざすカリキュラムマネジメントについて(3)」参照)
「グループ学習、ペアワーク」は、生徒の活動場面に不可欠な学習活動であり、
先生方には、「1時間の授業単位は長時間ではない」と背中を推し続けました
結果論にはなりますが、授業での「グループ学習、ペアワーク」から生起した罹患はありませんでした
コロナ禍の教育活動で得た知見は、
マスクを着用し、手洗い及び換気を徹底する。常時換気が難しい場合は30分に1回以上窓を開けて換気を行う。
特に更衣時等マスクを外す場面においては会話を厳に慎むよう指導を徹底する
また、下校時等の児童生徒どうしによる飲食については厳に慎むよう指導する
濃厚接触者に特定されたのは、
黙食を守らずに昼食
マスクなしで15分以上の会話
部活動後の飲食、入浴施設の利用
次に襲ってくるかも知れない感染症対策に生かしていかねばなりません
コロナ禍、失われた約3年間の高校生活を再び生徒たちに経験させないためにも
最後になりますが、箕高の数ある部活動のなかでもダンス部は
【高校ダンス部 4大 コンテスト】= 全国優勝 合計14回 獲得
①⽇本⾼校ダンス部選⼿権ダンススタジアム(ダンスタ) 【全国優勝6回:準優勝2回:入賞8回】※大会史上最多優勝
②⾼校ストリートダンス選⼿権 決勝⼤会(ストダン) 【全国優勝3回:準優勝1回:入賞1回】※大会史上最多優勝
③全⽇本⾼等学校チームダンス選⼿権 決勝⼤会(チムダン) 【全国優勝4回:準優勝3回:入賞5回】
④HIGH SCHOOL DANCE COMPETITION(ハイダン) 【全国優勝1回:準優勝1回:入賞2回】
の実績を誇る名門で、「みのだん」の愛称で全国的に親しまれています
2021年HIGH SCHOOL DANCE CHAMPIONSHIP西日本大会・第2回予選、「みのだん」がSMALLクラスにおいて【優勝】、さらに同じくLARGEクラスにおいて【優勝】に輝き、両部門ともに【西日本代表】として4月18日(日)両国国技館にて行われる全国大会へと進出することが決まりました
SMALLクラスのチーム「粉もんファイターズ」は、2020年に行われた「第13回日本高校ダンス部選手権ダンススタジアム全国決勝大会」において優勝、文部科学大臣賞に輝いた実績を引っ提げての「ハイダン」出場
彼ら彼女らにとって「ハイダン」初代優勝を果たした先輩たちが立った両国国技館のステージで再び優勝することが大きな夢でした
しかし、4月18日(日)の「ハイダン」全国大会出場に際して大きな制約になった事項がありました
「府県間の移動を伴う活動については、中止または延期」
東京 両国国技館には原則、規則では行くことができない
また、「ハイダン」の後援団体には文部科学省や大阪府教育委員会はなく(2023年よりスポーツ庁が後援)、そこもネックになりました
私は、教育委員会の所管指導主事及び上席に、コロナ禍、本大会がどれだけ生徒にとって教育価値のある有意義な大会か、全国大会出場に向けた生徒たちの真摯な取組み、等を訴えかけ、
宿泊はせず、東京駅から両国国技館、本番終了後直ちに東京駅から帰阪
新幹線では、一切私語は慎む
全旅程で感染症対策に努める
以上を約束して、了解をえました。大阪府教育委員会に感謝です
厳しい条件のように見えますが、ダンス指導者でもある顧問の先生に日頃よりダンスはもちろんのこと生活規律も厳しく指導されており、何より生徒たちの統率力には目を見張るものがありましたので、校長として当たり前にできるだろう、と信じていました
ところが、首席の先生と京都大学見学会の打合せに、村上 章 京都大学 理事・副学長(当時)をお訪ねした 4月16日(金)
村上先生との打合せが終わり、キャンパス見学のルートを歩いていたときに教頭先生から「陽性者が確認されました」と電話がありました
当時は、保健所の疫学調査で濃厚接触者の特定、学校の消毒等3日間の臨時休業をせねばなりませんでした
4月17日より臨時休業(4月20日 学校再開)
臨時休業中の教育活動は不可なので、4月18日(日)の「ハイダン」全国大会出場は断念せざるを得ませんでした
理不尽なあきらめを強いられたダンス部員たちの憔悴、行き場のない思い、アスリートとして互いを思いやる気持ちは、
読売テレビ「かんさい情報ネットten. 」『みのだん ~夢 コロナ 青春 大阪・強豪ダンス部の1年~』2021年7月6日(火) 17:10〜17:40(この時間帯のうち約20分)放映
で痛いほどよく伝わります
みのだん ~夢 コロナ 青春 大阪・強豪ダンス部の1年~』は、
2022年日本民間放送連盟賞 特別表彰 部門〔青少年向け番組〕 最優秀に選出され、
2022年10月10日(月) 番組スペシャル放送 特別企画枠 15:50〜16:50 拡大再放送
2021年11月7日(日)24:55~25:25<日本テレビ系列 全国ネット放送>されました
コロナ禍、現場では何が起こっていたのか
高校生の かけがえのない高校生活・青春は、どのように奪われていったのか
コロナ禍に、大阪府立高校 校長を務めていた者として、
当時の高校生の置かれた状況を明らかに、し記録を残していくことは責務だと考え、8回に亘り「コロナ禍の高校生」を連載してきました
現場の記録を残すことで、将来、何らかの参考になれば幸甚です
2023年9月24日(日)以来、5つのテーマで、35週分 重複する内容もありますが約13万字を書き綴ってきました
校長職6年・教員37年の経験を踏まえ、残しておくべきテーマはまだありますが、守秘義務・個人情報保護の観点から書き綴れるテーマは今までの5テーマくらいとなります
次回以降は、昭和61年(1986)1月31日に提出した私の教員としての原点『卒業論文』を振り返ることで、その後の37年間の教員生活・うち6年間の校長職を踏まえ、後期中等教育への気付きや提言になることを綴るとともに、今回冒頭で述べたように教育政策の現況について思うところも述べていきたいと思います
何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします