乳房再建〜再建≠豊胸〜 ①人工物/インプラント
大学時代に一番携わった分野になり、話出すと長くなるので、何回かに分けて触れてきたいと思います。
乳房再建≠乳房増大
まず、乳房再建は無くなった乳房を作ることです。主に乳癌ですが、その他、外傷、良性腫瘍、生まれつきなどの理由で変形、一部でも切除されてれば再建です。乳房増大、いわゆる豊胸はあくまで乳腺に問題ないので、自由診療(保険外)になります。
方法
自分の組織を使う
人工物を使う
両方使う
の3つになりますが、これは長くなる気配しかない・・
美容で来てくれる人が多いと思うので、2. 人工物から行きましょう。これだけでも教科書一冊書けますが、知って置いた方が良いところをピックアップしていきます。
人工物
いわゆるインプラントがパッと思い浮かぶと思います。
インプラント、今は、=シリコンバッグと言って差し支えないと思います。昔は中身が生理食塩水だったり、有害な物も使われたりで問題になった事もありました。
シリコンなら100%安全だ!と言うわけではないですが、今のところ一番安全ではないかと思います。理由は後程。
乳房再建でも2013年より保健適応になり使っていますが、乳房再建の場合、乳頭乳輪を含めたり腫瘍近くの皮膚を切除する場合、エキスパンダー(expander 組織拡張器)を一旦入れ、皮膚を伸ばしてからインプラントを入れます。
インプラント以外ではヒアルロン酸も使いますが、こちらは半年程で吸収されます。
種類
作っている会社はいくつかありますが、有名なのは
・Natrelle(Allergan社)
・Motiva(Establishment Labs社)
・Sientra(Sientra社)
・Mentor(Mentor社)
この辺りでしょうか。Allergan社はボトックス、ヒアルロン酸でも有名です。各社、以下のような合併症を防ぐために様々な工夫をしています。表面の加工に特徴があり、後にそれが問題となってきます。
豊胸で使われるのは日本ではMotivaが多いです。アメリカはNatrelleが多いようです。
合併症
感染
被膜拘縮
破損
BIA-ALCL
BIAーSCC
BII(breast implant illness)
人工の物で埋め込んでしまうものをインプラント/プロテーゼと言いますが、つけるやつはエピテーゼと言います。日本では鼻はプロテーぜと言いますが、胸や鼻はインプラントと言いますね。慣習的なものでしょうか。
・感染
人工物なので自分で治っていく力がないため、菌がついてしまうと温床になるので抜去せざるを得ません。
・被膜拘縮
インプラントを体内に置いておくと、隔離する様に被膜と呼ばれる膜で包まれます。その膜が皮膚とか巻き込んで縮む(拘縮)と変形したり、痛かったりします。
・破損
モノなので壊れる可能性があります。一般にですが、胸のインプラントは10年ぐらいから破損率が高くなるとされています。いきなりしぼんだりすることはないのですが、中身のゲル状のシリコンが周りの組織と癒着してると大きく切開して取り出さないといけないことがあります。
またゲル状のシリコンが露出することによる自己免疫性疾患との関連も指摘されています。
以上は人工物の宿命というか、鼻プロテ、人工関節なども共通の話かと思います。
・BIA-ALCL
乳房インプラント関連大細胞リンパ腫と呼ばれますが、インプラントによって悪性リンパ腫(がんの一種)が発生するとされています。特に被膜拘縮の予防に表面に凹凸の加工したテクスチャードと呼ばれる種類で頻度が高いとされています。
人工関節や歯のインプラントでの発生の報告があるので、どのタイプの人工物でも可能性はあるのではないかなと思っています。
・BIAーSCC
最近指摘されているインプラントの皮膜に発生する癌で、頻度はかなり低いと思われますが、死亡率が高い事が気になります。こちらは新たな情報があればまた更新していきたいと思います。
http://jopbs.umin.jp/medical/guideline/docs/bia_ccc.pdf
・BII(breast implant illness)
比較的新しい概念で、症状はインプラント入れた後に筋肉痛、関節痛、不安、倦怠感、脱毛、ドライアイなどを生じた状態です。詳細は不明ですがインプラントによる自己免疫性疾患も疑われています。
まとめ
合併症でかなり脅かした感じになりましたが、圧倒的なメリットは自分の組織を使う事なくボリュームを得られる点です。
いずれにしても入れっぱなしにせず、フォローしていく事が必要かと思います。