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借主の悪意ある法定更新を防げるか!?

「入居者が法定更新をするから、今後は更新料は払わないと言ってきた。」
「借主が更新書類を返送せずに、期間満了となってしまい、法定更新を主張してきた。」

不動産の管理をしていて、最近このような話を耳にすることがあります。

法定更新ってなに?
本当に更新料は貰えないのか?

今回は、法定更新というキーワードを深堀りしつつ、貸主さん目線でこの疑問に言及したいと思います。

■法定更新とは

更新には2パターンあります。
・合意更新
通常こちらの更新になります。
賃貸人と賃借人が合意の上で契約を更新します。
具体的には、借主が更新書類に署名捺印をする流れになります。

・法定更新
更新に関して貸主と借主の合意がないまま契約期間が満了し、
従前の契約と同一の条件で契約を更新したとみなされる更新です。
このとき、更新後の契約期間は定めがないものとされます。

■法定更新されると貸主は困る

法定更新されると困るのは、
「期間の定めがない契約」とみなされてしまうことです。
つまり、更新がないので、更新料を請求することは今後できないということです。

■悪意ある法定更新

・今後更新料を支払いたくないので、更新書類をわざと返送しないでおいて、法定更新を後から主張する
・更新に関する知らせがないことを良いことに、満期後に法定更新の主張をし、更新料の支払い拒む

■対策

最初から契約書に以下の文言を入れておきます。
「借主から契約満期日の1か月以上前までに解約の届出がない場合には、契約は2年間更新されるものとし、以後も同様とする。更新後も、2年毎の更新の際には同様に更新料が発生するものとする。」

■解説

法定更新は、借地借家法の以下の条文が根拠になります。

(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。

ここでのポイントは、貸主側が更新をしない意向を持っている場合の話しか言及されていないということです。

つまり、借主が貸主から更新を拒絶されて、住まいがなくなってしまう事態を防ぐための借主保護の処置、それが法定更新です。

よって、貸主側が借主が更新することを拒否していない場合には、法定更新は本来出る幕はありません。

しかし、条文の解釈次第では、更新を拒否してない場合でも、法定更新と解される可能性があります。
そこで、■対策 で記載した文言を契約書へ記載することで、【借主から解約の意思表示がない場合には、自動更新をする=借主は住み続けられる】という内容を明記することで、法定更新をガードすることができます。

以上、今回は法定更新についてのお話でした。

法律上の視点では色々な対策をするべきですが、いずれにせよ、入居者さんには余裕を持って更新時期をお知らせしたり、必要に応じて小まめに連絡を取ったりするなど、入居者さんがストレスないように日々対応することは大事かなとは思います!


補足
Q:借地借家法では借主に不利になる特約は無効なので、■対策 で記載された文言は、無効なのでは?
A:借地借家法は、借家人に不利な特約のうち、借地借家法26条~29条の規定に反するものと、同法31条、34条および35条の規定に反するものだけを無効とすると定めており、借主に不利な特約が全て無効になるわけではありません。
■対策 で記載した特約は、該当の規定に反していないことに加え、そもそも内容をのものが借主に不利と捉えられるものではありません。よって、有効な特約と考えられます。

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