大手住宅企業の国産材シフトに対応・ウッディーコイケ
埼玉県を代表する木材企業・(株)ウッディーコイケ(秩父市、小池文喜・代表取締役社長)の業績が好調だ。大手住宅企業の「国産材シフト」に的確に対応し、首都圏では一頭地を抜く存在になっている。常に進化を続ける同社のビジネスの根源にあるものは何か――遠藤日雄・鹿児島大学教授が、秩父の同社を訪れた。
住友林業のオール国産材化に対応、母屋などスギに
約120人の社員が働くウッディーコイケの事業範囲は広い。素材生産などの木材事業部をはじめ、集成材事業部、プレカット事業部、ログハウス事業部を擁し、年間の製材品出荷量は約1万3000㎥、原木消費量は約2万8000㎥、プレカット加工数量は約7万坪に及ぶ。特筆されるのは、大手住宅企業と強固な取引関係を形成していることだ。住友林業(株)などからの大口注文を着実にこなせる企業力は、一朝一夕に築けるものではない。
遠藤教授
大手住宅企業が使用部材の「国産材化」を加速させている。ウッディーコイケの主要取引先である住友林業(株)の状況はどうか。
小池文喜・(株)ウッディーコイケ社長
小池社長
住友林業は、もともと国産材志向で、構造材には四国の社有林から産出されるヒノキを使っていた。その後、ホワイトウッド集成材にシフトした時期もあったが、今はヒノキの集成材をメインに住宅部材全般にわたる「国産材化」を進めている。
遠藤
最近の使用部材の変化は?
小池
今年になってから米ツガの母屋角をやめて、スギの90㎜角や105㎜角を使うようになった。大引、束も米ツガからスギに切り替えている。
間柱にしても、2年ほど前からフィンガージョイントのスギ間柱を採用している。窓材も60㎜など厚いものはスギの集成材が使われるようになった。おかげさまで、弊社の集成材工場も、稼働率が徐々に上がってきている。
遠藤
ハウスメーカーが国産材にシフトしている要因をどうみているか。
小池
環境問題や健康問題に取り組むことがセールスポイントになるという判断があるのだろう。外材が日本に入りにくくなってきたという背景もあるが、競争が激しい住宅業界の中で生き残るには、国産材を積極的に使う必要があるという認識が広がってきている。
大量注文には集成材、ムク柱材を活かす道はあるか
小池社長は、遠藤教授を工場内に案内した。製材ライン、在来・金物・羽柄のプレカットラインのいずれもが休みなく動いている。とくに、大手住宅企業からの注文が多い構造用集成材の生産量が増えているという。そこで遠藤教授は、最近抱えている1つの懸念を口にした。
遠藤
大手住宅企業は、柱などの構造材にムク材ではなく集成材を採用しているようだが。
小池
確かに、ムク材を使う場合もあるが、集成材の方が圧倒的に多い。
工場の稼働状況を説明する小池社長(右)
遠藤
ムクは、KD材(人工乾燥材)でも、強度などを明確に数値化しづらいところがある。住宅部材の品質・性能に対する目が厳しくなっている中で、大手住宅企業にすると、ムク材は使いづらくなっているのではないか。
小池
大量に住宅部材を使うところは、どうしてもそうなる。
遠藤
ただ、ムクの柱材が使われないと、日本林業にとっては悩ましい問題が出てくる。今、九州では間柱への注文が増えている。そこで、製材業者は中目材からどんどん間柱を挽いて大手住宅企業に納めている。従来は、まず柱をとり、残った側板から間柱をとるのが基本的なパターンだったが、主客が転倒してしまった。間柱をとった副産物が柱になり、結果的に柱がだぶついてしまっている。
小池
首都圏でも、柱は集成材がメインだ。
遠藤
スギのムクの芯持ち柱は使えないのか。
小池
いや、乾燥さえきちんとできていれば、全く問題ない。そこで弊社では、ムク材を希望するお客様には、4面スリットの柱をお薦めしている。
遠藤
4面スリット?
4面スリットで含水率15%、内部割れ・曲がりなし
「4面スリット」という耳慣れない言葉に首を傾げる遠藤教授の前に、小池社長は1つのサンプルを差し出した。その柱材には、4面すべてに背割りが入っていた。
4面スリットの柱材
小池
これが4面スリットの柱だ。こうすると、乾燥しても内部割れや曲がりなどがなくなる。木材が持っている余分な力が抜けるからかもしれない。通常、スギを無背割りで人工乾燥すると20%程度は不良品が出るが、4面スリットにすると不良品率が5%程度に低下する。弊社が手がけた250坪のアパートに、4面スリットの4寸角スギ柱を本格的に使用した。とても評判がいい。
遠藤
4面スリット柱の含水率はどのくらいか。
小池
スリットのないものよりは格段に乾きやすく、15%くらいの含水率は十分に担保できる。ただし、JAS(日本農林規格)では、4面スリットは認められていないが。
遠藤
ムク材を活かすためには、梁桁用の平角としての需要拡大も必要だ。九州では径40㎝上の丸太の出材量が増えてきているが、こうした大径材の有効な製材方法がまだ確立していない。
小池
平角は、梁成や寸法など種類がとにかく多い。弊社は素材生産事業もやっているので、特殊な長さの注文が来ても山から伐ってくることができ、スギ平角への注文も徐々に増えてきている。ただ、納期や量が集中すると対応が難しい。
「平成ロマン館」で消費者ニーズを直接キャッチ
ウッディーコイケの創業は明治44年。小池社長の祖父・竹治氏が新潟から秩父に移り住み、小池木材店を設立した。昭和28年に法人化して(株)小池製材所になり、42年には集成材部が発足、63年にはプレカット工場を新設するなど、時代を先取りするかたちで業容を拡大、平成5年に現社名に変更した。まさに「100年企業」といえる同社は一昨年2月、モデルハウス「平成ロマン館」を建て、一般消費者向けの住宅事業にも進出した。
遠藤
日本の住宅は、資産価値が非常に低いことが問題だ。その点、この「平成ロマン館」は、「100年住宅」という表現が決してオーバーではない家になっている。スギをはじめとした国産材をふんだんに、なおかつモダンに使いこなしているところが新鮮だ。
小池
日本の住宅は汎用性がなく、中古になると全く価値が出ない。そういう現状を打開する試みとして、このモデルハウスをつくった。消費者の声を直接聞けるようになったことも大きい。
モデルハウス「平成ロマン館」
遠藤
家づくりのサポートもしていく計画か。
小池
自分達がつくった製品が最終的にどのように使われているのか、そして安全・安心のための責任をどれだけ負えるのかということを常に考えていなければ、厳しい市場競争の中で生き残っていくことはできない。
例えば最近は、アメリカカンザイシロアリによる被害を心配する消費者が増えてきている。このシロアリは土壌性ではなく、空中からやってくるので、屋根裏の小屋梁などが食われるケースが出ている。対策としては、ホウ酸処理が有効なので、弊社で加工する木材についてはホウ酸にドブ漬けするなど、予防策を講じている。
最終需要者から信頼を得るためには何をすべきか、これを追求し続けることで、木材企業は新しいビジネスを生み出すことができる。
(『林政ニュース』第375号(2009(平成21)年10月21日発行)より)
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