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道産カラマツを有効活用、北の合板王・丸玉産業

日本の合板産業は、昨秋100周年(1世紀)を迎えた(第329号参照)。その原料基盤は、4分の3世紀を広葉樹(南洋材)に、後の4分の1世紀を針葉樹(北洋材、ニュージーランド材、チリ材)に仰いできた。針葉樹合板がその市場を拡大したのは、構造用合板の登場に負うところが大きい。阪神・淡路大震災以降、ユーザーからの認知度も確実に高まっている。しかし、その針葉樹合板の主原料である北洋材も、来年早々のロシア側の輸出課税アップ(25%→80%)によって、供給力が大きくダウンするとみられる。これからどうなるのか。そこで、遠藤日雄・鹿児島大学教授は、北海道の丸玉産業(株)(本社・津別町、大越敏弘・取締役社長)を訪ねた。同社の成田昇・津別工場長と津別単板協同組合(大越敏弘・代表理事)の添田秀作・木材部長との語らいの中から、新しい展望が見えてくる。

津別協組が原木集荷・単板製造し、丸玉へ全量販売

丸玉産業は、創業83年になる老舗の合板メーカーだ。操業当初は、阿寒山系に潤沢に賦存していたシナを原料に、広葉樹合板の製造を行っていた。その後、シナ資源の枯渇化に伴って、一時、原料(丸太、ランバーコア、単板)を中国や東南アジアから調達した時期があったが、平成12年に広葉樹合板から針葉樹合板へと方向転換した。

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カラマツ丸太について説明する成田工場長(左)と添田部長(右)

遠藤教授を出迎えた成田工場長と添田部長は、まず丸玉産業の旧本社を案内した。そこには木の趣を漂わせる品格のある事務所と、歴史の重みを感じさせる工場があったが、いずれも無人と化していた。そこからやや離れた場所に、旧工場とは対照的に近代的な巨大2工場が屹立していた。

遠藤教授
ここは日本国内で最新鋭の合板工場と聞いている。

成田工場長
第1工場と第2工場がある。津別単板協同組合が単板の製造(原木蒸煮→原木切削→単板乾燥→選別・調板)を、丸玉産業が合板製造(接着剤塗布→冷圧→熱圧→裁断→仕上→検査)を行うという分業形式をとっている。両工場合わせて、年間の原木消費量は31万m3に達する。丸太換算で1日約1万本になる。

遠藤
津別単板協組の役割は何か。

添田木材部長
協組のメンバーは、丸玉産業を中心に北海道森林組合連合会など6社。その役割は、合板用丸太の集荷と単板製造だ。道産カラマツ(80%)、トドマツ(20%)を集荷し、それを単板にして、全量を丸玉産業へ販売している。丸太の集荷範囲は、網走地域が半分、十勝地域が半分弱だ。

木屑等を熱と電気に換えるエネルギーセンター

3人は、第2工場の中央に設置されたバイオマスエネルギーセンターへ移動した。経済産業省新エネルギー対策補助事業を利用して建設したものだ。第1・第2工場から発生する樹皮、単板屑、合板屑はコンベアを通じてここに集められ、バイオマス燃料として熱と電気に変換される。

成田
発電量は4700kW、蒸気量は毎時70トン。2工場の電力と熱すべてを供給できる。

遠藤
数字だけでは、その規模がイメージできない(笑)。

成田
原油換算では、網走市の一般家庭が使用する年間暖房用灯油消費量に相当する。

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最新鋭工場とバイオマス燃料(手前)

遠藤
よくわかった。ボイラーで発生させた高圧蒸気で発電させた廃熱はどうしているのか。

成田
合板製造過程で重要な位置を占めるドライヤー等の熱源に利用している。

40年前に針葉樹合板製造、24㎝上で原木調達棲み分け

4、5年前まで、国産材の利用といえば製材に限られていた。それが、合板や集成材メーカーが国産材を原料に取り込んだことで、一挙に需要が増えた。その中で、丸玉産業は、外材に依存したときもあったが、基本的に原料基盤を国産材(道産材)に置いてきた。

遠藤
津別工場は平成12年に広葉樹合板に終止符を打ち、新工場開設とともに針葉樹合板へ転換したわけだが、技術的にスンナリといったのか。

成田
津別工場では、すでに40年前に道産カラマツの合板を製造した経験がある。

遠藤
40年前?林ベニヤ産業(株)の林一雄氏(故人)が針葉樹(北洋カラマツ)合板製造に成功したのが今から20数年前のこと。それよりもっと前に針葉樹合板を手がけていたということか。

添田
当時は、北海道開拓時代に植林されたカラマツが利用できた。

成田
そのカラマツでコンパネ(下地)用合板を製造した。残念ながら商業ベースには乗らなかったが、カラマツ合板製造技術の基礎的ノウハウはそこで得た。

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カラマツ丸太とカラマツ再造林地(後景)

遠藤
そのカラマツだが、現在では戦後造林した道東のカラマツが主伐期を迎えている。しかし、内地の合板や集成材の原料として、4、5年前から道外へ移出されている。その量は年間20万m3程度と聞いている。

成田
道産カラマツは、北海道の製材工場や梱包メーカーも利用している。末口径級20㎝前後の小径木が多い。そこで、津別工場では、これらと棲み分けるために24㎝上の丸太を合板用に使用している。長さはニーズに応じて何種類かあるが、道内では1・9mと4mが多い。丸太価格は確実に上昇しており、内地の合板メーカーは、13〜16㎝以上の丸太(4mあるいは6m)を道内価格より高く買っている。

添田
道産カラマツの需給は、かなり引き締まっている。もう市場ベースだけに任せずに、行政などによる需給調整も必要なのではないか。というのも、すでに道東では、カラマツは過伐ではないかという不安の声が出ているからだ。十勝支庁によれば、18年度の十勝管内のカラマツ林の伐採面積は1350ha、これに対して再造林面積は約880haだ。再造林放棄問題が深刻化している。

遠藤
かつては「カラマツ亡国論」まで出され、つい数年前まで道内の伐採適期のカラマツをどう有効利用するか、関係者は皆一様に悩んだものだった。それが様相一変したというわけだ。北洋材の影響がヒシヒシと押し寄せていることがここにきて実感できる。

オールトドマツの構造用合板に活路あり

添田
カラマツの伐採については持続可能が前提条件だ。と同時に、津別単板協組としてはトドマツの利用も拡大していきたい。北海道森林管理局北見事務所管内の国有林は約43万4000ha。豊富なトドマツ人工林が間伐期を迎えている。むしろカラマツよりも資源量は多い。今後、トドマツ間伐材の利用を増やしていきたい。

遠藤
2、3年前までは使い道のなかったトドマツ低質材の需要が発生したということだ。山側にとっては吉報だ。

成田
現在、津別工場では末口径20㎝上のトドマツを原料に、オールトドマツの構造用合板を製造販売している。これが増えてラワンの代替になれば、用途は大きく広がる。ただ、今後クリアしなければならない課題もある。

遠藤
その課題とは何か。

成田
抜け節や割れの問題。さらに年輪の春材と夏材の伸縮性の問題がある。これらを製造過程で克服すれば新たな用途が広がる。

遠藤
インドネシアの輸入合板に押され気味だった日本の合板が息を吹き返したのは、構造用合板が実用化されたから。とくに、耐震性の強い床下地合板へのニーズが高まっている。その意味では、針葉樹構造用合板も新たなステップ時期を迎えたことになる。

成田
「強い製造力で他の追随を許さない企業へ」というのが弊社の大越敏弘社長の信念だ。シナ合板製造で培った高い技術力を駆使して針葉樹合板のバージョンアップを実現したい。

(『林政ニュース』第351号(2008(平成20)年10月22日発行)より)

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