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盛況2万人!ジャパン建材フェアから見えた活路

8月28日から29日にかけて、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで、国内最大級の住宅資材展示即売会「第22回ジャパン建材フェア」が開催された。2日間で延べ2万人が来場し、総売上高は400億円を超えた。住宅・木材業界が需要低迷から抜け出せない中、なぜ同フェアは、これほどに人を惹きつけ、活況を呈するのか。その理由を求めて、遠藤日雄・鹿児島大学教授は東京ビッグサイトに足を運んだ。同フェアを主催するジャパン建材(株)(東京都江東区新木場)の大久保清・代表取締役社長との対話から、住宅・木材業界のとるべき進路が見えてくる。

2日間で400億円を超える売上げ、32年前から継続

ジャパン建材(以下「ジャパ建」と略)は、平成10年に(株)丸𠮷、興国ハウジング(株)、(株)ティーエムシーなどの建材問屋が合併して誕生、18年10月にJKホールディングス(株)(以下「JKHD」と略)の傘下に入った(第7475回参照)。ジャパ建は、JKHDの中核企業として、図のように「商流の開拓と維持」を目的とした活動を続けている。住宅・木材業界のセンタープレーヤーと言える位置づけだ。
ジャパ建の主な取扱商品は、合板、構造材、住宅建材、住宅設備機器など多岐に亘る。顧客層も幅広い。そのジャパ建が年に2回開催している一大イベントが「ジャパン建材フェア」だ。建築資材や住宅関連機器メーカーが集結して、新製品や売れ筋商品をプレゼンテーションする。ユーザーとメーカーをつなぐジャパ建の商社機能がよくわかる催しだ。

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「商流の開拓と維持」を掲げるジャパン建材(株)の位置づけ

遠藤教授
活気がある。毎回、これだけの賑わいになるのか。

大久保社長
このフェアは、旧丸𠮷時代の32年前にスタートした。「ジャパン建材フェア」と銘打つ前も、営業所単位で「丸𠮷市」を実施していたので、通算すると今回が64回目になる。当社の前身である丸𠮷時代は、合板・素材が主力商品だったが、次第に建材や住設機器などの取り扱いが増えてきたため、関連商品を一堂に集めて見ていただく、買っていただくことにし、1回目の「丸𠮷市」を昭和54年に晴海の東京国際貿易センターで行った。

遠藤
ナイス(株)もこのような展示即売会(「林政ニュース」第371号参照)を開催しているが、その走りといっていいか。

大久保
そうなる。これまで32年間、経済情勢のいいときも悪いときもあったが、途切れることなく継続して開催してきた。

出展企業は180社に、省エネ・エコ商品が増える

フェアの会場内は、木質・水廻り・外装・素材・電機・その他のエリアに大別されている。
大久保社長は、遠藤教授を会場内の各ブースに案内するが、顔なじみの顧客に頻繁に声をかけられ、なかなか先に進めない。自らも、「お客様にできるだけ声をかけて親しみをもってもらうように心がけている」と話す。ジャパ建は〝提案型営業〞を企業ポリシーの1つに掲げており、大久保社長だけでなく、JKHDの𠮷田繁・代表取締役会長兼CEOも会場入口で先頭に立って来場者を出迎える。顧客第一の姿勢を徹底していることが、2万人を集客する原動力になっているようだ。

遠藤
何社くらい出展しているのか。

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大久保清・ジャパン建材(株)代表取締役社長

大久保
回を重ねるごとに増えてきて、今回は180社程度になっている。

遠藤
32年間で出展メーカーにはどのような変化があったか。

大久保
当初は合板関係の企業が多かったが、最近はキッチンや家具、電力やガスなどに関係する企業が増えている。とくに、ここ2年くらいは、省エネやエコを前面に打ち出す企業の出展が目立つ。

遠藤
それにしても、2日間で約400億円の総売上高とはすごい。どのような顧客層なのか。

大久保
大工・工務店関係が約5割。次いで、問屋や小売店、販売店などが3割。そして最近は施主などのエンドユーザーが約1割を占めるようになってきている。

遠藤
商談はどのように進めているのか。

大久保
約6割は事前契約を済ませている。以前は、フェアの場で直接売ったり買ったりのやりとりをしていたが、そのウエイトは3割程度に減ってきた。来場者が2万人にもなると、いわゆる「前売り」を進めておかないと、商談をする時間が足りなくなってしまうからだ。

リフォーム需要に期待、国産材利用量はさらに伸びる

会場内を視察した2人は、会場入口脇の事務所に戻った。話題は、今後の景気見通しに移っていった。

遠藤
経済全体の先行きに、まだ明るさはみられない。住宅需要はどうなっていくとみているか。

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さまざまな国産材製品も並ぶ

大久保
住宅の需要自体には底堅いところがある。新設住宅着工戸数は100万戸を切って、90万戸、80万戸になっていくだろうが、長期優良住宅などの新しい流れが出てきている。
住宅を長く使おうとすれば、リフォーム需要が大きくなる。例えば、キッチンの年間需要量は154万台もある。かりに、新設住宅着工戸数が年間100万戸程度とすると、50万台余もキッチンの方が多く売れている。では、どこで売れているのかといえば、リフォーム需要に対応しているからだ。
リフォームをする際には、キッチンだけでなく、トイレやバス(風呂)なども最新のものやハイクラスのものにしようという消費意欲がわく。そこに活路を見い出せる。

遠藤
その中で、国産材へのニーズの変化はどう捉えているか。今回のフェアにも北山の絞り丸太や秋田の天井板が展示されているが、このような銘木への引き合いは減ってきているのではないか。

大久保
確かに、日本間の減少などの影響を受けて、銘木や役物の売れ行きは落ちている。かつては、フェア期間中に多いときで2億円くらいを売り上げていたが、3分の1の7000万円程度に縮小している。出展企業も1、2社になった。

遠藤
では、木材や合板のウエイトはどうか。

大久保
これらは、とくに変わらない。フェア全体の売上げの約27〜28%程度を占め続けている。ちなみに、当社では、木材・合板関係で年商600億円を目標にしており、現在は560〜570億円程度の実績になっている。

遠藤
国産材の主たる需要先である在来軸組工法住宅の担い手は大工・工務店だが、後継者不足などで弱体化が進んでいる。

大久保
最近は建築関係の法制度の改正が相次いでいる。これに迅速に対応していくことが課題だろう。当社は、全国8カ所にJKサポートセンターを配置しているので、ここを拠点にして大工・工務店への支援を強化している。図面や見積もりの作成業務などを同センターが引き受けるほか、販売店が大工・工務店と一緒になってリフォーム需要を掘り起こすような営業活動ができる体制づくりに努めている。

遠藤
大手住宅メーカーが国産材の本格的利用に乗り出すなど、業界再編の兆しが感じられる。

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会場内は人の動きが絶えない

大久保
当社の営業所は、全国110カ所にある。これを活用して、国産材の利用拡大に協力していきたい。グループ内には、合板メーカーもあり、地産地消を基本に国産材の利用量を増大できる。住宅の戸数そのものは増えなくても、建て替えや手直しなどのニーズはなくならない。需要はまだまだあるので、ビジネスチャンスも十分に見つけられる。

『林政ニュース』第373号(2009(平成21)年9月23日発行)より

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