ベンチャー経理歴6年。「経理が天職かも」に至るまでのキャリアの歩み
新生活に向けて新しい家具の購入を検討中のかたも多いのではないでしょうか。ところが、ある調査※によると、3人に1人が「家具・家電を買って後悔した経験がある」のだとか。理想的なインテリアと出会うのは、じつはけっこう難しい……?
上記の調査をおこなったのは、家具と家電のレンタル・サブスク「CLAS」を運営し、家具や家電は買うのがあたりまえだった暮らしに「借りる」という新しい道を示した、株式会社クラス。
今回の『デンタツ』は、クラスの経理部で活躍中の、長谷川葵さん。
耐久消費財とよばれる「長期にわたって使用されることを前提とされている家具などの消費財」のサブスクリプションというクラス社のビジネスモデルに興味をもったことが入社理由のひとつだった、と話す長谷川さん。
「経理が天職かもしれない」と語るベンチャー経理歴6年の長谷川さんに、歩んできたキャリアやベンチャー経理の魅力、今後の展望などをうかがいました。
キャリアの先輩をご紹介
株式会社クラス
経理部 マネージャー
長谷川 葵 氏
2016年 ベンチャー企業EC事業部→財務経理部
2022年 ベンチャー企業 管理部
2022年8月~現在 株式会社クラス 経理部
※所属・役職は取材当時のもの
クラスとの出会い。作り話みたいなほんとの話
――長谷川さんは、前職に入ってまだ数カ月のころ、現職のクラス社との出会いがあったとのことですが、いったい何が起こって入社に至ったのかを教えていただけますか?
それがですね、前職に入って2ヵ月たったくらいのころ、同僚に「長谷川くんはどうやってこの会社に入ったの?」って聞かれて、
「Wantedly※を使いました。このサービスに登録すると、企業からスカウトメールが来るんです」と説明をしていたんです。
当時の僕は転職したばかりだったのでスカウトの受け取り設定をオフにしてたんですが、
「ここをオンにしたらスカウトメール来るんです」とオンにしたら、中島(株式会社クラス、取締役兼管理本部長)からスカウトメールが届いたんです。
とはいえ、まだまったく転職する気はなくて。
でも、「おもしろい事業をやってるな。しかも会計士が上場させようとがんばってるんだ。それはちょっと話を聞いてみたいな」と思い、
「転職する気はないから、たぶん時間のムダになっちゃうけど、それでもいいならカジュアル面談したいです」と送ったら、
「全然いいです」と返してくれて。
そうして話してみたら「すごくいいな」と思ったので、転職を決めました。
やりたいと思っていたことが全部叶えられそう
――具体的にはどこを「すごくいい」と感じたのでしょうか。意思決定の決め手はなんですか?
クラスは、耐久消費財である家具・家電のサブスクリプションで売り上げを立てていて、上場を本気で目指して資金調達もしているという話で。
新卒で入社した1社目も、次に入った当時在籍中の会社も、無形商材で売り上げを立てていた会社だったため、有形の固定資産の管理をやってみたかったし、上場準備も資金調達も経験してみたいなと思ったんです。
また、最終面談で久保(株式会社クラス代表取締役社長)と話したときに、「これから規模をどんどん大きくしていって、将来的には海外の工場をつくっていく可能性もある」と聞いて、
段階的にいろんな業務ができそうだな、グループ幹部とか海外展開など、この会社にいればいろんな経験ができて、やりたいと思っていたことが全部叶えられそうだなと思いました。
クラス流の固定資産管理
――そのような経緯でクラスに転職されたんですね。入社後は、どんな業務を担当されたのでしょうか?
入社してすぐは、ひたすら仕訳を切っていました。
当時の経理部は、管理本部長の中島とアルバイトの方の二人だけ。中島にはほかにもやらなきゃいけないことがあるのに、あらゆる問い合わせが集中している状態、かつ固定資産管理でいっぱいいっぱいになっていたので、固定資産管理を引き継ぐところが最初のミッションでした。
それから、前職までの経験から税務寄りの知識があったため、顧問税理士さんとのやりとりは僕がメインでやらせてもらっています。
固定資産と税務まわりからはじまって、今は財務会計全般をちょっとずつ見られるようになってきました。
――「家具のサブスク」とは、どのように資産計上するのでしょうか。気になります……!
当社は「耐久財をきちんと修理して長く使えるようにしよう」という考えをもっており、たとえばテーブルの場合、天板と脚を分けて在庫管理しているんです。
原価を割りふって、資産登録して、消耗の早い天板が先にダメになったとしても脚は残しておいて、新しい天板を仕入れたらセットで貸し出せるように、というような在庫管理をしています。
何万点も資産計上していて、棚卸しもあります。
軽い気持ちで「固定資産管理やりたい」って言ったけど、やってみたらすごく大変でした。
――今後、現職でチャレンジしてみたいことはありますか?
クラスに入ったときに描いていた「固定資産管理やりたい・上場準備したい・資金調達して大企業を経験したい」のうちの固定資産管理はやらせてもらっているので、次はやっぱり会社を上場させたいなっていうのと、資金調達に携わるとか、あとは会社が大きくなるにつれて大きな会社の経理知識をちゃんと身につけていきたいなと思います。
僕は、新卒からずっとベンチャー企業にいて、実務経験しかなく、 そして税務寄りの経理をずっとやっていたので、
「会計の知識がまだ弱いよね」と現在の上司からフィードバックをもらいました。
そのため、監査法人のコラムを読むとか、仕訳を切るときに新しい会計論点が発生したらちゃんと会計基準をあたりにいくことなどを、ここ数カ月くらい意識しています。
経理になれてよかった
――これまでの経験を踏まえて、今後のキャリアの展望や具体的に目指したいポジションなどはありますか?
……キャリア像はちょっと悩んでいて、経理だけをやっていてどこまでいけるのか? と思って、割といま迷子なんです。
会計士資格をもっている方であれば専門性があると思うんですけど、僕はそういうものはもっていないので、どうしても勝てない相手がいるなかで経理だけを極めていってもしょうがないのかなって思っています。
それが、今の会社でジェネラリスト的にいろんなことを経験したいというのにつながっています。
まずはこのまま上場や大企業の管理部を経験したいです。
――もし、長谷川さんが新卒からキャリアをもう1回作り直せるとしたら、どういうキャリアを望みますか?
学生時代まで戻って死ぬ気で会計士の勉強する、とかなら何かが変わると思うんですけど、社会人になってから会計士は無理だろうし、税理士もたぶん受かってないだろうなと。
簿記1級ならまだいけるかも? でも、そもそも自分ってそんながんばれる人なのか? と考えたら、やり直したい気持ちはそんなにないですね。
僕のキャリア、運がよかったなって思っていて。
あんまり「ああしたほうがよかったかも」って、ないです。
世の中にはけっこう「経理やりたい」っていう人いるじゃないですか。新卒で入った会社の2年目で経理になれたのって、すごく運がいいなって思っていて。
そして、やってみたら自分に合ってるな、自分の中で経理が天職かも、と思っています。
2度の転職を経験しているんですけど、自分の能力に対して歩んできたキャリアがすごく恵まれてるなって思っています。
新しいことが勝手にやってくるから、ベンチャーは楽しい
――ベンチャーを長く経験されていますが、ベンチャー経理の特徴はどんなところだと思いますか?
ベンチャーだと、もう本当になんでもできる。
定常業務があんまりなくて、いろんなことができる、いろんなことが起こるっていう、刺激がたくさんあるっていうのが自分的にはすごく楽しいと思っていて。そこですかね。
――なぜそれを「楽しい」と思えるのでしょうかね?
なぜ……けっこう飽き性なのかなと思っていて、変わったことにすごく集中してやるのが好きなんですけど、 あんまりそれが続かなくて。
たとえば僕は学生時代にギターを弾いてたんですけど、今は全然弾いていないんです。限られた期間だけ集中して、ある程度キャッチアップするみたいなことがすごく好きで。
そうなったときに、いいタイミングでいろんな新しいことが勝手にやってくるっていうベンチャー企業が、たぶん性格に合っているという意味で、楽しいんだと思います。
――モチベーションの源泉はありますか? ときには逃げ出したいときもあるんじゃないかなと思うのですが……
純粋に楽しいんですよね、この環境が。次から次へと課題がバンバンふってきて、考えたらなんとかできるレベルのものを1個ずつ潰していって、がんばったら達成したときの「スキルアップできた」が快くて。
「新しい経験を積めた」と実感できる回数がものすごい多く、そこにやりがいを感じます。
これまでに勤めた3社とも、すごく人に恵まれました。まず人がいいっていうのはもちろんあるんですけど、1社目の上司は中小企業診断士で、2社目は社長と同僚が税理士で、いま3社目でも上司が会計士。
まわりにいる方が自分よりもあきらかにすごい人なので頼りがいがあるし、「知識を吸収しよう」という気持ちになるので、なんか子どもみたいな感想なんですがほんとに楽しいというか、それもモチベーションになってますね。
ただ、いろんな業務がくるのがつらいなって思うときもあります。やってもやっても終わらないっていう面は正直あって、 そこのコントロールができないっていうのはつらいかも。
やっと整えたけどまた新しい話が……みたいのがあるので、安定はしないですね。
――とくに大変だったできごとを教えていただけますか?
1社目で、経理に異動して早々に国税調査があり、終わって落ちついたタイミングで人が辞めてしまってさまざまな業務を引き継がなきゃいけなくなり、そのときはつらかったです。
そうなったときでも経理は「期限内に締める」っていうのを絶対にやらなきゃいけないので、会社に泊まって締める経験もしました。
ベンチャーは人の入り繰りが激しいんですよね。
経理の人に限らず、今まで話が通じていた事業部の人がいなくなったときに、そっちに介在してデータを巻き上げるところをやらなきゃいけないような、そういう「人」の話はけっこうあるかな。
人が抜けることそのものじゃなくて、いなくなったことで業務がよりコントロールできなくなること。どうしようもなくてコントロールできないことで苦しいっていうのはありますね。
「経理の仕事がすごく好き」な人は、ちょっと待って。
――ベンチャー企業の経理に興味があるけどちょっとよくわからないなと迷っている方に「こういう思考だったらいいよ」「こういう考えだったらやめときなよ」などのメッセージをお願いします。
「経理の仕事がすごく好きで、経理に集中したくて、裁量を持ちたいからベンチャーに行きたい」という方だと逆にちょっと危ないかもしれない。
ベンチャー企業では経理だけをできるとは限らないので、もしかしたらつらいかもって思います。
それから、経理を好きな理由が「ロジカルで定常業務だから好き」だったら、やっぱりそれもイレギュラーばっかりでつらいよって伝えたいです。
ちゃんと会社を選べばいいんですけど、ベンチャーって経理だけではなく総務とか労務とか事業部側に入ってデータを取りに行くようなことも発生してくるんで、教科書的な簿記的な経理が好きな人はイメージと違うかもしれないなって思っているので、なんていうのかな……。
とにかく経理をやりたい! という方だとちょっと失敗するかもしれないです。
幅広く裁量をもって、イレギュラーが好きでどんどん来い! それらをこなしてスキルアップしたい! という人は、もう絶対ベンチャーに行ったほうがいいかなと思います!
――長谷川さん、ありがとうございました。
株式会社クラス|https://clas.style/company/
「“暮らす”を自由に、軽やかに」をビジョンに、耐久消費財のPaaS(Product as a Service、商品のサービス化)プラットフォームを運営。ライフスタイルや環境の変化に合わせて、必要なときに必要なものが使える自由さを提供し、お客さまのQOL(生活の質)や生産性の向上に寄与するため、サービスを展開しています。
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企画・写真/JAPAN FAS株式会社
文/Yui Osawa
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