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人工地震説「地震は人工的な兵器」は誤り。専門家による解説【ファクトチェック】

大きな地震が発生したり、震災からの節目の日を迎えたりするたびに「地震は人工的な兵器」というような人工地震説が拡散します。専門家は震災級の地震を人工的に起こすのは「非現実的」と否定しています。

検証対象

東日本大震災の発生した3月11日の節目に、1995年のニュース23の映像とともに「地震は地震兵器によるものだ」という情報(例1,例2)が拡散した。

映像ではオウム真理教元幹部で、1995年に刺殺された村井秀夫氏が「高度な製造能力を持った団体が毒ガスを散布した」「阪神大震災は大国による地震兵器で起きた」などと主張している。この映像は「ディープステート(闇の政府)が世界を操っている」などという陰謀論と関連付けて、何度も拡散している。中には70万件以上表示されたものもある。

リツイートやリプライでは「すごい。分かってたんだ・・・。」「これは、本当に有る事です」「コレで殺された?」などと同調する一方で、「人工地震は不可能」などと否定するコメントもある。

「ディープステートの存在をメディアで暴露してこの幹部が殺された」などと陰謀論を支持するコメントもある。

この動画は「組織的な毒ガス攻撃」など様々な言説を含んでいるが、その中でも人工地震説は、この動画に限らず、震災の節目や大きな地震のたびに様々な形で拡散する。最近ではTikTokで、国会で人工地震説が取り上げられた動画が拡散した(例3)。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は今回、人工地震説を検証対象とし、東京大学地震研究所の古村孝志教授に取材をした。

検証過程

専門家「非現実的」

古村教授によると、「人工地震」自体は存在する。

人工地震は、爆発や重りの落下、圧縮空気等を海水中で膨張させるなど、人工的に発生させた地震のことを言います。断層や資源探査など地下構造調査に世界で広く使われる技術です。名称が兵器のようなものを連想させるので、最近は制御震源という呼び名が使われるようになりました。結果、人工地震という用語が隠された陰謀のように聞こえるのかもしれません。1990年代までの新聞を探すと、各地で地下構造調査に実施された人工地震の記事が見つかります。

ただし、震災級の地震を引き起こしたり、兵器として使うのは「非現実的」という。

史上最大の爆発は1971年アメリカネバダ州で5メガトンの核爆弾を使用した核実験で、この規模はM6.9の地震に相当します(参照)。阪神淡路大震災のM7級の地震を人工的に起こすためには、これだけの核爆弾を必要とし、非現実的です。スマトラ島沖地震や東日本大震災のM9級の地震では、この1000倍の核爆弾が必要です。

それだけの核爆弾を準備すること自体が非現実的だが、さらなる技術的な問題もある。

これらの地震の深さは地表や海底下数十キロであり、世界最大級の地球深部探査線『ちきゅう』を使っても海底下7キロしか掘ることはできません。陸上では、サハリン油田の地下12キロが最深です。

また、データの公開によって透明性も確保されている点を指摘する。ポイントは地震の揺れのうち、最初にくるP波(縦波)と次に来るS波(横波)の大きさだ。

地震波データは世界中の地震観測点で記録され公表されています。爆発による揺れは、P波が強くS波が不明瞭であるため、S波が強い自然地震の揺れと区別がつき、CTBTO(包括的核実験禁止条約機関準備委員会)ではこれらの特徴を用いて核実験の監視が行われています。

阪神・淡路大震災の原因は

今回のツイートで話題になった阪神・淡路大震災は、気象庁の調査・研究で、兵庫県淡路島北部付近を震源にした右横ずれの断層運動によるものとみられている(気象庁・「技術報告第119号1997年」7ページ)。

同様の調査報告は、国土地理院も公表し、「淡路島の野島断層が大きな破壊を起こし、神戸側の断層が遅れてやや小さい破壊を起こした運動であったと考えられる」と述べている(国土地理院時報1995・No.83 兵庫県南部地震の概要)。

水田に表出した活断層 気象庁 「阪神・淡路大震災の記録 写真集」より

判定

阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震は活断層のズレによるもので、兵器による人工地震という言説は、誤り。

あとがき

TikTokでは国会で人工地震説に関する議論が取り上げられている様子が拡散し、影響を受けて地震兵器の存在を信じてしまう例もあります。

人工地震説に関する投稿には、地震を兵器によるものだとする発言を切り取った過去の動画が繰り返し使われています。こうした言説は、今後いつ起こるかわからない南海トラフを震源とする地震や首都直下地震への備えにも悪影響を及ぼすことが考えられるので、注意が必要です。

検証:宮本聖二、古田大輔
編集:藤森かもめ


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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