「ウイルスに対する保護機能がない」という警告表示で、マスクは感染予防効果がないと解釈するのは不正確【ファクトチェック】
マスク製造会社の「マスクはウイルスに対する保護機能がない」という警告表示を、「感染の予防効果がない」と解釈した主張が拡散しています。これは免責事項の解釈として不正確(ミスリード)です。
検証対象
拡散しているのは、マスクのパッケージ画像を添付した以下の投稿だ。パッケージの警告文書は英文で書かれている。
この投稿はネット上で繰り返し拡散しているもので、PolitiFactやAFP通信も過去に検証し、解釈の誤りを指摘している。
日本で拡散したツイートの投稿主は「南雲香織」を名乗るアカウントで、フォロワー数は約6万9000人。リプライ欄には「南雲さんいつもありがとうございます」「確かにマスクしてても感染してる」などのコメントが見られた。
だが、このアカウントは、これまでにも誤った情報を多数投稿していることで知られ、日本ファクトチェックセンター(JFC)でも、このアカウントの発信を対象に、”「WHOが未接種の反ワクを『殺人者』と公式に位置付け」は不正確”、”「厚生労働省の職員のワクチン接種率が10%」は根拠不明”などの検証記事を公開している。
BuzzFeed Japanは、このアカウントの発信する情報が多くの疑義言説や陰謀論を含むこと、ツイート投稿時間の不自然さ、アイコンがAIであることなどを記事にしている。
検証過程
画像に写っている英文を問題となっている箇所の前後を含めて訳すと以下のようになる。
この文言自体は捏造などではない。2020年5月のPolitifactの検証でも同様の画像を取り上げており、「ラベルは正規品」と認定している。問題は文言の解釈だ。
検証対象のツイートは「ウイルスや汚染物質に対する保護機能はありません」の部分を「新型コロナウイルスの感染予防効果はない」と解釈しているようだ。リプライ欄でツイートを支持している人たちは、そう受け取っている。
厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議の資料(2008年11月20日付)には、マスク(不織布製)の効能について次のように書かれている。
また、厚生労働省広報誌「新型コロナウイルス最前線(2022年7月号)」では、国際医療福祉大学教授(当時)の和田耕治氏へのインタビュー記事で、次のようにマスクの効能を説明している。
つまり、マスクによる感染予防には限界があるが、飛沫の飛散を防ぐ効果がある、ということだ。
同じ文言について検証したPolitifactは次のように結論づけている。
つまり、この免責事項は、一般的なマスクと高性能なマスク(レスピレーター)の違いを説明するためのものであり、マスクに新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ効果がないと説明するものではない、という指摘だ。
判定
以上のことから、マスクに関する免責事項の警告表示は本物である一方で、マスクの着用に新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ効果はある。よって、このツイートは不正確(ミスリード)と判定した。
検証:金子祥子
編集:古田大輔
(トップ画像は大きさを調整するためにツイート画像を一部加工しています)
JFCのファクトチェック判定基準などの指針はこちらをご参照ください。
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