「G7広島サミットでのゼレンスキー大統領の会見をNHKが打ち切って大河ドラマを放送した」は不正確 【ファクトチェック】
G7広島サミットが閉幕した2023年5月21日夜、NHKがゼレンスキー大統領の会見の放送を打ち切って、大河ドラマを放送したという言説が拡散しましたが、不正確です。NHKはゼレンスキー大統領の演説をほぼ最後まで放送しており、大河ドラマのために打ち切った事実はありません。
検証対象
G7広島サミット最終日の5月21日、ゼレンスキー大統領は広島市の国際会議場で記者会見し、その様子をNHKも放送した。
放送後に「NHKがゼレンスキー会見を打ち切った」という内容のツイートが複数投稿された(例1,例2)。さらに「大河を放映するために打ち切ったのではないか」というツイートも投稿され、複数のまとめサイトが「【悲報】NHKさん、ゼレンスキー大統領会見をぶった切って大河ドラマ・・・」などという内容を拡散した(例1,例2)。
リプライには、「おいおい、何のためのNHKだよ」「これ公共放送と言える?! 高い受信料とって」「こんなぶざまな中継で受信料よこせと?」などの投稿があった。
検証過程
ゼレンスキー会見を放送した21日午後7時からのNHK総合テレビ「ニュース7」は、インターネットサービス「NHKプラス」で視聴できる(28日午後8時まで)。
日本ファクトチェックセンター(JFC)が確認したところ、ゼレンスキー大統領の演説は動画の27分3秒から始まり、35分5秒の「岸田文雄総理大臣、ありがとうございます」という部分の8分2秒にわたって続き、スタジオでの解説に移っている。
ウクライナ大統領府の公式サイトが公表したゼレンスキー大統領の演説全文を見ると、岸田首相への感謝の言葉のあとは、次のように演説を終えている。
「日本の皆さん、多大なる支援をありがとう。戦争の犠牲となったすべての人を記憶にとどめよう!平和でありますように!ウクライナに栄光を!」
つまりNHKは、ほぼすべての演説を放送していた。
この日はG7広島サミット最終日のため、NHKはニュース7の放送時間を通常の30分より長い1時間で組んでいた。
午後7時10分までは、G7のこの日の動きを報じ、続けて、スタジオでゼレンスキー大統領のサミット参加の意義や成果などについて解説した。その後、現地から中継で、松井広島市長の挨拶が流れ、ゼレンスキー大統領の会見の様子が同時通訳と共に放送された。
スタジオに映像が戻ったのは、7時35分ちょうどで、ゼレンスキー大統領の会見は約8分にわたって途切れることなく報じられた。
その後、キャスターが「ゼレンスキー大統領のスピーチは続いていますが、引き続きNHKのニュースサイトやニュース防災アプリで伝えています」とコメントしているが、演説自体はほぼ放送を終えていた。
スタジオでのサミットに関する解説が続いた後、ニュース7では福島第一原発の処理水やスポーツ、天気も報じている。
午後8時直前の59分27秒からは、再びゼレンスキー大統領の会見VTRを流し、キャスターが「ウクライナのゼレンスキー大統領は、広島のようにウクライナの街も再建したいと考えていると述べました」と伝えたが、これは放映済みの映像の一部を繰り返し流したものだ。
判定
NHKはゼレンスキー大統領の演説の最後の挨拶を途中で切ったものの、会見のほぼ全文を放送していた。また、大河ドラマの放送のために打ち切った事実はない。そのため、検証対象の言説は不正確と判定した。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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