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消防署が女性へのAED使用に配慮を呼びかけ、は誤り【ファクトチェック】

消防署が「女性へのAED使用には配慮が必要」と使用をためらわせる発信をしているかのような言説がまとめサイトを通じて拡散しました。これは誤りです。実際には「女性へのAED使用をためらわないで!」と正反対の呼びかけを行っています。

検証対象

2023年9月5日、まとめサイトTwitter速報が「【画像】消防署『女性へのAED使用は配慮を行ってください』」という記事を公開した。記事には「豊田市消防本部」と記された女性にAEDを使用する画像が掲載されていた。この記事のX(Twitter)上のポストは、9月8日現在130万回以上表示されている。

このポストには「怖くてなんもできんくなる」など、女性へのAED使用をためらう返信がついている。

検証過程

まとめサイトが掲載していた画像をGoogleレンズで画像検索すると、豊田市のウェブサイトに同じ画像が掲載されていた。チラシの見出しは「女性へのAED使用をためらわないで!」だ。「電気ショックが1分遅れると、男女差無く救命率は約10%低下します。プライバシーに配慮しつつも一刻も早い電気ショックが必要です」とも書かれている。

豊田市消防本部のチラシ 「女性への使用ためらわないで!」と書いてある

まとめサイトは、この画像を利用して本来のメッセージとは違う見出しをつけていることがわかる。

豊田市消防本部作成のチラシには、「男性に比べて女性に対してのAEDパッドの装着率が低いとの調査結果が出ており、女性の服を脱がせることへの抵抗感が原因ではないかと分析されている」との注釈がある。

出典は総務省近畿管区行政評価局によるAED使用の調査について結果報告書(2019年5月)で、京都大学の研究グループが高校生を対象にAED使用率の男女比をみた結果を抜粋、要約した内容だ。

つまり背景として、AEDの使用では、女性は男性よりも素肌を出すことに抵抗があるとされているが、命にかかわるため「使用をためらわないで!」と消防が呼びかけているのだ。

また、公益財団法人日本AED財団のHPでは、「胸骨圧迫をするのとしないので救命率は約2倍違います。AEDを用いて電気ショックが行われれば、約7倍の人の命が救えます」と説明している。加えて、「生命を維持するために行う蘇生術は欠かすことができないものですので、ほかの何よりも優先されます。死に瀕しているときの蘇生術という行為は、その結果のいかんを問わず、推奨されるべきものであり、決して非難されるものではありません」とし、AEDを使用した心肺蘇生法は重要だと強調している。

判定

「女性へのAED使用は配慮を行ってください」は誤り。

あとがき

AEDの使用をためらうと救命率は著しく下がります。「女性の服を脱がせることへの抵抗感」に対して、豊田市消防本部はパッドを素肌に貼ることができれば、ブラジャーや上着などを脱がす必要はない、と説明し、ためらわずにAEDを使用することを呼びかけています。

命に関わる問題ですので、正確な理解と情報の拡散に努めましょう。

検証:堀祐理
編集:古田大輔、野上英文、宮本聖二


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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